経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

ユニフォーム額縁で知名度アップ。「誠心製品」で300年企業を目指す アルナ 雪山 大

アルナ 社長 雪山 大 ゆきやま・たけし

額縁専門メーカーとして、技術に裏打ちされた高い品質の額縁を提供してきたアルナ。ユニフォーム額縁でスポーツ界から注目されるようになり、デザイナーを起用したアルミの額縁ではグッドデザイン賞を受賞している。(雑誌『経済界』2023年5月号「注目企業2023」特集より)

アルナ 社長 雪山 大氏

アルナ 社長 雪山 大 ゆきやま・たけし
アルナ 社長 雪山 大 ゆきやま・たけし

日韓ワールドカップを機にユニフォーム額縁が受注増

雪山渥美会長がアルミ製額縁メーカーとして、高度経済成長期の1968年に創業したアルナ。額縁専門メーカーが数少ない中、アルミ製額縁を制作する会社は、全国でも数社しかない。

本社は埼玉だが、会長の地元が鹿児島県だったことから、自治体から工場誘致の話を受け、工場を鹿児島に移転。2代目の雪山大社長が会社を継いだのは14年前のことだ。

「私は次男ですが、兄が家業を継がないと小さい頃から宣言しており、私が継ぐのだろうなという気持ちがありました。大学卒業後はハンドバッグの商社で百貨店の営業を経験し、家業に入りました」

大きな転機となったのが、サッカーの日韓ワールドカップが開催された2002年だ。同社の看板商品である「ユニフォーム額縁」のオーダーが急増したという。

野球やサッカー、バスケなどのユニフォームを額縁に飾るのは海外では一般的だったが、日本にはユニフォームを飾る文化がなく、専用の額縁もなかった。雪山社長はそこに目をつけ、ユニフォームを販売する会社に飛び込み営業を行い、ユニフォーム額縁を提案したという。

その後、ユニフォームを飾る文化が日本にも浸透し、ワールドカップなどのスポーツの大会で需要が伸びていった。現在はプロ野球球団、サッカーJリーグをはじめ、スポーツ競技団体の取引先も多い。

「前開き式で掛け替えがしやすく、人工芝が背面にあしらってあるものや、背面の布が10種類から選べるものなど、いろいろなタイプをご用意しています。弊社の製品は世界で一番使いやすいユニフォーム額縁であると自負しています」

さらに、ユニフォーム額縁をきっかけに、バットやボールを飾るケースも依頼されるようになり、スポーツ文化で付加価値のある商品を増やしてきた。

洗練された額縁でグッドデザイン賞を受賞

「2019年グッドデザイン賞」「DFA Design for ASIA Awards 2020」を受賞した「CUT」
「2019年グッドデザイン賞」「DFA Design for ASIA Awards 2020」を受賞した「CUT」

同社のもう一つの看板商品が、デザイナーと共に企画・制作した「ALUMIUM(アルミアム)シリーズ」だ。19年から発表している新しいブランドで、グッドデザイン賞をはじめ国内外のデザイン賞を毎年受賞している。

「デザインが洗練されていて素晴らしいのはもちろんのこと、コーナーのつなぎ目の技術、高精度の切断技術があって初めて完成に至ります。価格は安くありませんが、デザイン、使い勝手、機能を追求し、インテリアデザイナー、建築家、写真家といった方から支持されています」

額縁は壁に掛けると斜めに傾いてしまうが、まっすぐに飾ることができる部品を社内で開発し、無償で提供するなど、細やかなサービスで顧客満足度を高めている。

現在、日本で流通している額縁には外国製も多く、安価なものは裏面の造りが雑であることも多い。同社の額縁は金具や留め具など細部にこだわり、高級感があるため、大切な作品を飾りたい人から選ばれる商品となっている。

オンラインストアでは一部個人向けにも販売しているが、小売店や問屋を対象としたBtoBのビジネスが基本だ。年間約20万枚の出荷数だが、売り上げや規模の拡大を目指すよりは、顧客と末永く取引を続けることをモットーとしている。

「弊社の額縁の制作は人の手による細やかな作業が欠かせません。多品種、小ロットで、1枚から大量生産まで多用なニーズに応えられる生産体制を構築しています」

将来的には、ルームインテリアメーカーとして、製品を入れる手段としての額縁だけではなく、額縁を飾ることによる空間演出、室内装飾のアイテムとして提案していくことが目標だ。手始めに、ALUMIUMシリーズで卓上ミラーの販売をスタートしている。

「創業から55年経ちましたが、300年企業を目標として定めています。会社の土台をつくる工場はリニューアルを予定しています。地域により密着して、工場見学なども行い、多くの方に額縁に興味を持っていただきたいと考えています」

海外への輸出も検討中で、「メードインジャパンのアルミ製額縁の素晴らしさを伝えていきたい」と話す雪山社長。

経営理念は、「誠心(まごころ)製品を提供することにより、お客さま・従業員・お取引先からありがとうを頂き続ける」ことだ。

「額縁に入れる作品はお客さまにとって思い入れのあるものが多いので、『誠心』という誠の精神をしっかりと持って仕事に取り組んでまいります」 

会社概要
創業 1967年7月
資本金 4,000万円
本社 埼玉県川口市
従業員数 29人
事業内容 アルミ製額縁、木製額縁、樹脂製額縁の製造・全国販売・プレミアム製品の企画・製造(ギフト・プレゼント用額縁・販促用グッズ)
https://aluna.co.jp/