顧客に寄り添う人材開発を推進営業の価値と地位向上を目指す　高橋 研　アルヴァスデザイン

「さまざまな成長の機会を会社側が意図的に設けていくことが重要になる」と人材開発の重要性を説くアルヴァスデザインの高橋代表。営業を軸に顧客の成長を後押しする事業展開のビジョンを聞いた。（雑誌『経済界』2023年9月号 総力特集「人材育成企業2023」より）

講師を務めるのは現役世代の営業パーソン

営業とマネジメントに特化した人材開発事業を手掛けるアルヴァスデザイン。同社の人材開発事業の特長は大きく３つある。まず１つ目は研修を手掛ける講師陣で、30代後半から40代の現役世代が中心を担っていること。講師は、講師経験よりも営業経験を重視。業種を問わず、営業パーソンとして突出した成果や頑張りなど、誇れるストーリーを持つ人を迎えている。

「当社の講師は全員営業出身者で、長年人事の教育担当としてキャリアを積んできた方は１人もいません。そのため、研修やプロジェクトの参加者に対して、現場感覚で語ることができます。参加者の立場を深く理解した上で、学びを進められるのが特長です」と高橋代表は強調する。

２つ目は、効果測定だ。「やりっぱなし」の研修が多く、成果の測り方に頭を悩ませている企業の教育担当は少なくない。そこで同社では、顧客と共に効果や成果をきちんと定義しながら、学びの場を設計することにこだわっている。

3つ目は、営業の現場に入り込むことで、顧客が許せば同行営業や営業戦略会議への参加を実施している。人材育成の枠を超え、コンサルタント的な役割や営業支援としての役割を併せ持つ人材開発会社は珍しく、同社が唯一無二の存在と言われるゆえんだ。

顧客に寄り添うスタイル故に、プロジェクトには十分な時間をかける。顧客との企画立案から実際に稼働するまでに短くても３～４カ月、平均で半年ほど。最近は１日や２日といった短期間の研修はほぼなくなり、３カ月以上の長期間にわたるプロジェクトで伴走する機会が増えている。

アルヴァスデザインが大手の名だたる企業から選ばれる理由がもう一つ存在する。顧客から厚い信頼を寄せられる、その営業スタイルだ。

「ツールを売り込む従来の『プロダクトセールス』では価格競争に巻き込まれてしまいます。私たちが提唱しているのは、顧客との信頼につながる『インサイトセールス』です」と高橋代表は説明する。

インサイトセールスとは、顧客企業の経営層にビジョンや目的を深く聞き、理解した上で提案をする営業スタイルのこと。提案に対する共感が高くなることで信頼につながり、結果的に中長期的な関係が築きやすくなるという。同社はインサイトセールスを用いて営業活動を展開しており、目覚ましい成果を上げている。

「人を育てられない会社は淘汰されていく」と高橋代表は警鐘を鳴らす。人は誰もが成長実感や貢献実感を持ちたいもので、企業に身を置くビジネスパーソンならなおさらだ。それらを感じてもらう場を企業側が演出するのが重要と言える。

新人教育と人材紹介にも貢献領域を拡大

アルヴァスデザインは今年３月に設立10周年を迎え、社内でフィロソフィーを共有するなど、さらなる飛躍に向けた体制づくりに余念がない。同社では、目的（ミッション）、ビジョン、価値（バリュー）、あり方（ビーイング）の４つの理念を定めている。核となるのがミッションの「営業の価値を極限まで高める」で、これに伴い、ビジョンを「『営業する／される』が楽しい世の中を実現する」とした。

「数あるバリューを象徴する言葉を『協創』、ビーイングを象徴する言葉を『真摯』と定めて共有し、心に留めて仕事ができるように日々取り組んでいます」

学びを演出する企業故に自らも学び続けることは必須。同社では、その一環として、１人当たり30万円の教育予算を取り、学びを推奨している。条件は「目的を持って学ぶ」「学び切る」「会社に還元する」の３つ。これらを満たせば、基本的には何を学んでもいい。この制度を利用して、「中国のシリコンバレー」と呼ばれる深センで最先端のテクノロジーを学んできた社員もいるという。

現在、営業人材とマネジメント人材の育成を事業の柱としている同社だが、これらに加え、新人教育にも貢献領域を広げていく。職種を問わず、人から選ばれる存在になることはビジネスパーソンとして大切だ。競争相手が社外はもちろん社内にも存在する中、選ばれ続ける人物であることがキャリアを伸ばしていく上で重要なポイントとなる。選ばれることは広い意味で「営業」であり、そのための営業思考は早い時期から学んでおいた方がいいからだ。

加えて、同社が注力しているのが人材紹介事業だ。

「『営業人材にまつわる支援であれば、私たちにお任せください』と言えるようになりたい」と抱負を語る。また「『営業することが楽しい』と言ってくれる人が１人でも増える取り組みを増やしていきたい。営業のステータスを上げて人気職種の一つにしていきたい」と力を込める。

研究職から営業の世界に飛び込んだ自身の体験から得た営業の醍醐味を伝える取り組みに注目だ。