経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

社会課題の解決に挑む気候テックカンパニー 丹治保積 レジル

レジル 丹治保積 社長

「脱炭素を、難問にしない」をミッションにエネルギー分野から社会課題の解決に挑戦する「気候テックカンパニー」のレジル。2024年の創設30年を前に、第二の創業と位置付ける大きな変革とチャレンジに乗り出した丹治社長にビジョンを聞いた。(雑誌『経済界』2024年2月号「テック企業特集」より)

レジル 丹治保積 社長
レジル 社長 丹治保積 たんじ・ほづみ

初期費用ゼロでマンションの防災と脱炭素化を実現

 2023年9月に中央電力からレジルへと社名を変更した同社は、創業以来一貫して「一括受電サービス」を推進してきた。これは、マンション全体で包括的に電気を購入することで電気料金を下げ、余剰の原資を修繕積立に回すという仕組みとなっている。そして、昨今の電力事情を鑑みて顧客にさらなる付加価値を提供するため、次の一手として着目したのが蓄電池だ。政府の後押しなどもあり、日本の太陽光発電の平地面積当たりの設置数が世界一となる一方で、太陽光発電で生み出された電気は余っているのが現状だ。

 「現在当社が電力を供給している約2200棟のマンションに太陽光発電と蓄電池を設置し、それらをネットワーク化すれば仮想の発電所ができます。そこに余った電気を取り込み、『一括受電サービス』で20年間蓄積してきたビルやマンションの電力使用量のデータベースと最新のAI技術を活用して需給コントロールすることで、無駄のない活用が可能になります」と丹治社長は語る。

 同社には3つの事業の柱がある。

1つ目の分散型エネルギー事業は、ビルやマンションに受変電設備や太陽光発電、蓄電池といった分散型電源設備を初期費用ゼロで設置し、災害による停電時に水道ポンプやエレベーターなどに電気を供給する。

 「設置した設備を有効活用して実質再生可能エネルギー100%の電気を供給することで、居住者の負担や手間なくマンション全体で脱炭素を実現できます」

 2つ目のエネルギーDX事業は、地域電力会社や大手新電力会社などのエネルギー企業のDXを強力にバックアップする。「REZIL BPaaS(Business Process as a Service:ビーパース)」は、自社の事業で培ってきた電力供給に関する内製システムや業務プロセスをパッケージ化し、顧客の負担なく業務を改善する。21年4月の提供開始からの累計導入実績は10社超、受託件数は22倍に上るなど成果を積み重ねている。

 3つ目のグリーンエネルギー事業は、自社で保有する100カ所以上の太陽光発電所の活用や他電力との連携により、脱炭素コンサルティングとして現状分析から再生可能エネルギーの供給までを行う。

 「3つの事業がシナジーを生む事業展開をしています。再生可能エネルギーを発電し、マンションやビルの使用電力を最適化した上で、その運用に必要なノウハウを仕組み化してシステムと組み合わせて他の電力会社に提供する。これをワンストップで手掛ける、特徴的なビジネスモデルを構築したと自負しています」

 時間帯や天候によってリアルタイムに価格が変動する電気の卸売市場からもフレキシブルに電力を調達しながら需給を最適化しているという。このように電力の調達から分散型電源設備の設置、AIによるコントロールまで手掛ける企業は少ない。マンションの修繕積立金の支援から始まった同社の社会課題の解決に向けた取り組みは、脱炭素社会の実現を目指す次のステージに踏み出した。

 「脱炭素は、個別の企業で取り組むにはやることが多すぎて困難です。私たちが提供するサービスによってその部分をサポートし、社会課題の解決を進めたい。脱炭素のBPOといったイメージです。こうした決意を込め、社名を変更し、『気候テックカンパニー』を打ち出したわけです」と丹治社長は強調する。

創設30周年を前に環境を刷新。さらなる成長を目指す

電源や専用ネット回線、フォーン・ブースなども完備する副業専用エリア
電源や専用ネット回線、フォーン・ブースなども完備する副業専用エリア

 24年の創設30周年を第二の創業と捉え、次の成長につなげていきたいと考えるレジル。その一環として、23年11月に東京本社オフィスを拡張移転した。キーワードは「成長できる場をどう体現するか」。コミュニケーションの活性化を図るため、床面積400坪のうち3分の2をオープンなスペースとするなど、オフィス環境を抜本的に整備した。

 特徴的なのが「副業専用エリア」だ。20年に導入したスーパーフレックス制と併せて、好きな時に気兼ねなく副業の業務や会議に専念できる環境を整えた。「社員のさまざまな経験が会社全体の成長につながると期待しています」。副業を推奨する企業は多くとも、専用の作業用スペースまで用意しているのは珍しい。

 「新しく変えようという意思を見せないと、社員のマインドセットは変わりません。こうした施策に社員は順応してくれています。社風もガラッと変わりました」と話す丹治社長の視線は海外に向いている。

 「日本と同様に資源のない国では、私たちのサービスは相当な需要があるはずです。創設30年の中小企業が世界に出て行くと考えるとワクワクします」と目を輝かせる。

 30年には3千棟の電力供給を目指し、意欲を新たにしている。 

会社概要
設  立 1994年11月
資 本 金 1億円
本  社 東京都千代田区
従業員数 209人
事業内容 分散型エネルギー事業、エネルギーDX事業、グリーンエネルギー事業
https://rezil.co.jp/