2025年4月13日の大阪・関西万博開催まであと1年余りとなった。コロナ禍の状況を乗り越え、大阪・関西万博を成功させ、関西を新たな発展軌道に乗せようとする関西経済連合会が、24年に重点的に取り組む事項について、松本正義会長に伺った。(雑誌『経済界』2024年3月号「関西経済の底力特集」より)
2023年は、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行し社会経済活動が正常化に向かう中、円安による輸入資材価格の上昇等を背景に物価高が継続するなどの動きが見られました。またプロ野球では、日本シリーズでの「関西ダービー」が59年ぶりに実現するなど、関西にとって明るいニュースもありました。
一方、国際的には、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化やイスラエルとイスラム組織ハマスの対立激化など、緊張が高まった1年でした。
関経連では「第1期中期計画」の2年目を迎え、「関西ビジョン2030」の実現に向けたさまざまな具体策を打ち出しました。24年は引き続きこれをさらに推し進め、成果を創出すべく尽力いたします。
「2025年大阪・関西万博」開幕まで残すところ1年余りとなりました。万博の成功に向かって、引き続き政府・博覧会協会等と一体となり、全国的な機運醸成をはじめ、さまざまな取り組みを推進していきます。
中期計画の「当会の活動の底流をなす事業」の2事業の一つ、「地方分権・広域行政」については、関西広域連合と協力して広域連携の取り組みを強化します。「三方よし・民の力」に関しては、23年11月の金融商品取引法改正案の成立により進捗を見せた四半期開示の見直し、そして9月に公表した「コーポレートガバナンスに関する提言」の具現化に向けた働きかけなど、マルチステークホルダー資本主義の理念を浸透させる活動を継続します。
一方、新規に重点事業とした3事業の一つ、「イノベーションエコシステム」については、夏頃に予定されている、うめきた2期区域「グラングリーン大阪」の先行まちびらきに向け、「起業街道・関西プロジェクト」による仕掛けづくりを加速していきます。
「DX」に関しては、関西デジタル・マンスをはじめ「関西DX戦略2025」に盛り込んだ事業の強化を図りながら継続します。
「雇用労働・D&I」では、物価動向も考慮した賃上げの機運を後押しするとともに、女性および高度外国人材の活躍推進をテーマとした活動の深化に注力していきます。
その他、5つの重点事業については、「グローバル・アジア」は、アジア・ビジネス創出プラットフォーム(ABCプラットフォーム)を核に各国と連携した取り組みを加速していきます。「産業プラットフォーム」では、関西広域連合と共に推進している「関西広域産業共創プラットフォーム」による、企業ニーズに応える活動を引き続き支援し、「環境エネルギー・GX」では、持続的な経済成長と環境の両立を旗印に活動を推進します。
さらに「都市・観光・文化」に関しては、関西観光本部はもとより京都に本格移転した文化庁等とも連携した取り組みを、「スポーツ」は、関西広域での医科学支援体制など関西のスポーツ振興に資する枠組みの整備を進めます。
またベースとなる事業のうち、「経済財政」については、財政健全化に向け、税や社会保障を一体的に捉えた提言を行い、「国土・インフラ」としては、関西3空港や北陸新幹線・リニア中央新幹線、高速道路など広域ネットワークの整備・強化に向けた取り組みを継続いたします。
いまだ先行きの不透明感が拭い切れない状況ですが、関経連では「ONE関西」としての結束を一層固め、困難を乗り越えて、万博の成功、その先にある関西のさらなる発展に向けて歩んでまいります。