「まるごと人事」という月額制の採用代行サービスで成長企業を支援し、拡大を続けるマルゴト。社員全員がフルリモートワークというユニークな組織運営で話題を集めている。本拠地を北海道に移した現在、地方の可能性を感じながらさらなる飛躍を目指している。（雑誌『経済界』「攻勢に転じる北海道特集」2024年4月号より）

ユニークなビジネスモデルが話題で応募者は年１万人超

　人手不足が全国的な社会問題となった近年、採用の成否は企業活動を大きく左右する。マルゴトは、ベンチャーやスタートアップ企業をはじめ、組織を大きくしたい企業を対象に、要件設定から応募者対応までトータルで採用業務を代行するサービス「まるごと人事」を提供する。

　「現代の採用活動は、企業が直接求職者に連絡する攻めの採用も必要で、採用業務に専任の人員を置かないと、成果を出せるものではありません。当社はスタートアップ企業にも利用しやすいよう、採用に力を入れたい期間のみ月単位で採用チームを外注できるようにしました」と、今啓亮社長は説明する。

　顧客１社に対し専属スタッフとリーダーの２人体制で業務を実施。専属スタッフはベテラン社員であっても同時の担当は２社までで、入社歴の浅い社員は１社に集中できる体制とした。

　「お客さまにとっては、採用成功以外の成果はありません。全力で向き合い、満足されたお客さまの評判が最大の宣伝。目先の売り上げ向上にとらわれず経営しているのは特徴だと思います」と今社長は話す。

　組織のコンセプトは「最強の採用チーム」。すべての社員が全業界・全業種の採用業務に精通するよう、業界の偏りをつくらないようにしている。そのために重要なのが、社内でのノウハウ共有だ。社員は５人程度のチームに分けて各チームにリーダーを置き、相談しやすい体制をつくった。また、事例や情報を投稿する社内ナレッジサイトや質問スレッドを設け、全社に貢献する投稿にはインセンティブを付けた。こうしてチームを超えて経験や注意点が共有されるようにしている。

　蓄積されたノウハウの強みは、マルゴト自身への求職応募者が２年連続で年間１万人超という驚異的な数字にも表れている。

　「応募者の中には採用業務経験者だけでなく、経理や労務、総務、営業事務などの経験者も多くいます。彼らを生かす仕事を考えていた時に、お客さまからの要望があったバックオフィス代行業務を行う『まるごと管理部』というサービスを始めました」。取引先やユーザーの要望を聞き、真剣に向き合うことで、新しいビジネスチャンスが広がったと今社長は話す。

ライフイベントや場所に捉われない働き方で地域貢献を

　同社の大きな特徴が、フルリモートワークを２０１５年の創業時から続けていることだ。

　「自分の経験から、子育てや親の介護といったライフイベントにとらわれず、継続的に働きたい方が増えています。そのような働き方を実現したいと思ったことがきっかけでした。この取り組みが求人市場で話題となり注目を集めるようになって、全国から優秀な人材を採用できるようになり、当社の強みになっています」と今社長は話す。

　「求職者は今、給与だけでは職を選ばず、どういう働き方、暮らし方ができるかという視点を大事にしています。採用成功のため、取引先企業のトップの方には、特長として際立つような働き方を実現させることも大切と伝えています」

　22年からは今社長の出身地である札幌に本社を移した。これにより、東京本社時代にはない新たな気付きを得たという。

　「以前のビジネスは東京だけで完結していたのですが、札幌に来たことで、日本全国に目を向けなければならなくなりました。すると今まで見えてなかった業種など数多くの企業があり、採用ニーズもあると気付けたのは大きかったです。また、地方の人材が東京に吸い取られていることも実感し、採用に困っている全国の企業に採用ノウハウをきちんと伝えたいと思い、中途採用の本も出版しました」

　事業の発展に欠かせない資金調達の面でも良い感触を得ている。

　「地銀の方とは、よくお話しします。当社の事業を北海道のためにも親身に応援してくれる印象を受けました。そんな感覚はビジネスをしていて初めてです。私たちの事業は、頑張れば頑張った分。地元北海道への貢献になります、仕事を通して地元の社会貢献になっているというのが新たなモチベーションになっています」

　好きな場所に住みながら、さまざまな場所の仕事ができる時代が到来している。

　「私自身が北海道に住みながら、全国の仕事ができることをアピールしていきたいですね。そういう人々が増えれば、さまざまな地域の潜在ニーズが掘り起こされ、北海道が面白い場所だという発信にもつながると思います」と今社長は北海道の持つ可能性に確かな手応えを感じている。