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物件情報の収集力に強み不動産再生事業で成長を続ける 神山重子 日本土地建物

日本土地建物 神山重子

女性経営者が少ない不動産業界において成長企業として注目を集める日本土地建物。不動産仲介で培われた確かな物件選びと収益を向上させるマンションリノベーションは高く評価されており、先行き不透明な業界にあって20年超にわたり安定成長を続けている。(雑誌『経済界』総力特集「注目企業2024」2024年5月号より)

日本土地建物 代表取締役 神山重子氏

日本土地建物 神山重子
日本土地建物 代表取締役 神山重子 かみやま しげこ

マンションリノベを中心に自社物件も常時保有

創業から20年余り、常に右肩上がりの成長を続けてきた日本土地建物。不動産再生事業(マンションリノベーション事業)を中核とし、不動産賃貸事業やハイクラスのオーナー向けに資産価値向上のコンサルティングを行うソリューション事業などを幅広く手掛ける。

創業者の神山代表はニッテイ(現ニッテイホールディングス)や長谷工アーベストで法人仲介ビジネスのキャリアを積んだ後、2003年に独立。六本木ヒルズが華々しくオープンした年に東京・高輪の7坪のオフィスでひっそりと開業した。

「独立した最大の理由は飼っている犬が寂しそうだったからです(笑)。『経験のある法人仲介なら一人でも食べていけるだろう』と気楽に始めました。当時は会社を大きくするつもりはありませんでした」

主力のマンションリノベーション事業では、購入した中古物件をバリューアップさせた後に売却して利益を得る。そんな同社の一番の強みは情報収集力だ。1都3県を中心として仲介会社に広いネットワークを持ち、高い収益を生み出しそうな物件情報をいち早く仕入れる。

「当社は協業パートナーがたくさんいるので、情報量の多さでは他社には負けません。数多くある物件の中から希少価値の高い物件を厳選して購入しています。重視するべきポイントの一つはエリアで、物件が築古でも将来的に地価が下がらない場所であることが最低条件です。ただ、そうしたエリアは競合も多いので『高値づかみ』にならないように気を付けることが重要です。高額な物件を購入してものちのち赤字物件になるかもしれません。売り上げではなく利益重視で、なるべく競合他社がいない物件を探しています」

取り扱う物件の規模は20戸から30戸程度のマンションが中心で、購入価格が高額過ぎると売却も難しくなるため、「10億円以内」を目安としている。取引する金融機関も多く、常時20~30棟の物件を自社で保有しているという信用力を最大限に発揮して融資を得ている。

「銀行にも物件によって好き嫌いがあるので、取引銀行の中から物件に合わせて融資してくれそうな金融機関を選んでいます。地元であることも重視しており、例えば千葉で物件を購入するなら千葉銀行など地銀をまず選ぶようにしています」

購入後のリノベーション案は設計士に依頼するだけなく、社員からもアイデアを募っている。

「エリアごとに物件のニーズが高い内装を意識して、地元の不動産業者とも相談の上でリノベーションしています。内装は個性的なものも多く、有名ユーチューバーが入居して話題となった物件もあります」

コロナ禍を物件購入の好機に 社員増で銀座に新オフィス

創立20周年を迎えた2023年8月、東京・帝国ホテルで記念祝賀会を開催
創立20周年を迎えた2023年8月、東京・帝国ホテルで記念祝賀会を開催

コロナ禍では一時的に地価が下落。これを機に海外進出も果たし、ハワイにあるザ・リッツ・カールトン・レジデンス・ワイキキビーチと、オーストラリアのカジノ付きレジデンスの1室を取得した。

「ハワイの物件はロックダウン中にオンラインで内見して購入しました。ずっと注目していた物件で、分譲時の価格程度まで下がったので。今では高稼働率で高い賃料収入を得ています。コロナ禍はリーマン・ショック並みに地価が下がると言われていましたが、実際に下がったのはほんの一瞬だけ。東京五輪後も地価が下がると言われましたが、値上がりする一方で、物件を購入するのは難しくなっていると感じています」

国内の注力エリアの一つは銀座。これまでに最大で4棟を保有しており、このうち銀座8丁目にある1棟は長期保有している。自社のオフィスも今春からGINZA SIXに移転する予定だ。

「銀座は相性が良いので、常に新規物件の開拓を検討しているエリアです。実績もあり、相場感も分かります。銀座に移転するのは現在入居しているビルの解体が理由ですが、今年は新人・中途も新たに7人採用して社員数が大幅に増えるので、移転先は延床面積も現在の約1・6倍に増床しました。営業グループも2グループから3グループに増やす予定です」

同社では毎月のように社内イベントを開催しており、花見やバーベキュー、ボウリング大会、社員旅行と交流の機会には事欠かない。女性社員比率も4割と高く、産休・育休制度も充実している。

「女性活躍における課題の一つは出産と子育てです。不動産業界も女性経営者は増えてはいるもののまだ数は少なく、社会全体で支えていく必要があります」

現在の年間売上高は約45億円に拡大。中長期経営計画「ビジョン2030」では30年に100億円まで引き上げたい考えだ。競合他社が居並ぶ不動産業界で成長を遂げた日本土地建物。女性経営者ならではの視点と手腕が光る。 

会社概要
設立 2003年8月  
資本金 3,000万円  
売上高 30億円(2023年4月期)  
本社 東京都中央区  
従業員数 35人  
事業内容 不動産の売買・賃貸・仲介・管理等  
https://www.j-tochi.co.jp/