高品質・低コストの収益不動産で三方よしの経営を目指す　菅谷太一　ハウスリンクマネジメント

ローコスト、高品質な新築木造アパートを不動産投資物件として販売するハウスリンクマネジメント。利回り20％を実現しており、リピーターとなる顧客も多い。昨年、東京・吉祥寺から丸の内へと本社を移転し、投資を希望する顧客が増えている状況だ。（雑誌『経済界』総力特集「注目企業２０２４」2024年5月号より）

ハウスリンクマネジメント　代表取締役　菅谷太一氏

「カインドネスシリーズ」で高収入サラリーマンも顧客に

皇居を見渡す東京・丸の内の重厚なオフィスに本社を構え、業績の好調さがうかがえる同社。丸の内を選んだ理由は、「46都道府県の銀行が全てあるエリアで、取引銀行を増やすことができるから」と菅谷太一代表は話す。

東京駅からは千葉、埼玉、神奈川のどのエリアにも行きやすく、横浜支社からは新幹線で15分の距離だ。さらに都心勤務や在住の顧客がほとんどであることから、丸の内にオフィスを移転したことで商談がしやすくなった。

「新規のお客さまが増え、ひと月の投資相談数が50件ほどと、以前の５倍近くになりました。これまで年収３千万円以上のアッパー富裕層が顧客の中心でしたが、最近は年収１千万円以上の高収入サラリーマンにもご購入いただいています」

同社は２０１８年のスルガ銀行による不正融資をきっかけに、サラリーマン向けの不動産投資物件の販売を中止していた。しかし、地方銀行、信販系、オリックス銀行などで、高収入のサラリーマンに融資が可能となり、収益物件の紹介を再開した。

現在、同社の中心事業はローコスト新築木造アパートの収益物件「カインドネスシリーズ」の販売だ。

設計から施工まで自社で行っているため、高品質かつローコストな物件を顧客に安く提供できる。また満室保証付き物件もあり、顧客の満足度は高い。プロパンガスや管理会社も有しており、施工後のサービスもワンストップで任せられる。

ここ数年、不動産市場は価格が高騰し、金利の上昇も注視されているが、その影響は少ないという。

「東京、神奈川、千葉、埼玉エリアで、資産価値が下がらない土地を徹底して選び、努力して安く仕入れてきました。これ以上高騰すると買えない人が増えてしまうので、都心を除いて不動産価格はそろそろピークアウトするでしょう。投資ローンは、住宅ローンのようにもともと低い金利では設定されていないので、急激な金利上昇は考えにくく、心配いりません」

カインドネスシリーズは、年間60棟の建築を予定しているが、安定した利益が得られるためリピーターの顧客も多い。

同社の収益物件は他にも「ポルシェシリーズ」がある。老朽化した中古物件をリノベーションし、入居者で満室にして販売するスタイルで、顧客は富裕層が中心だ。こちらは家賃収入を得られ、所得税を節税できるのがメリットとなっている。

中部エリア、広島、博多へ 事業を拡大していく

菅谷代表は昨年、Ｍ＆Ａにより三重・鈴鹿の不動産会社である「賃貸や」をグループ企業にした。三重で一番人口が多い四日市に支店を出し、中部エリアで収益性の高い物件を提供していく予定だ。

さらに今後は、広島、博多での同事業の展開も考えている。

「自社で仕入れたものを自社で設計し、外注の工務店に建築を依頼し、賃貸管理、プロパンガス供給まで行っています。そのためきちんと仕入れができると、全てのチームの売り上げが立ち、垂直統合ビジネスが可能になります。人が集まるエリアであれば、全国にビジネスモデルをどんどん広げていきたいと考えています」

規模の拡大に伴い、人材採用も積極的に行っている。

「お客さまに良いものを安く提供するためには、商品力のある土地の仕入れがポイントになります。足しげく不動産会社に通って情報を頂く部隊と、ネットから情報を仕入れる部隊が弊社の戦力となっています。20代、30代の若手を増やすことができれば、会社の事業永続性につながり、活性化が期待できるでしょう」

高齢社会を見据え福祉事業への参入を検討

近い将来展開していきたいと考えているのが高齢者向けの訪問介護付きのアパートだ。65歳以上のアパートを積極的に供給しているところはまだ少ない。しかし、高齢社会に突入し、高齢者向けの住宅が不足することは間違いない状況だ。高齢者が入居することで孤独死などのリスクが考えられるが、訪問介護付きなどサービスを付随することでリスクを軽減できる。

「まだ模索中で、いろいろな方と面談し、知見を頂戴している最中です。社会的ニーズが増えているので、この先２～３年以内には福祉事業に参入したいと考えています」

まずは高齢者向けのアパートを販売し、ゆくゆくはサービスの自社運用も検討しているという同社。丸の内という新たな場所で、顧客にも入居者にも喜ばれる物件づくりを実現していく。