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再生可能エネルギーの中核的グローバル企業へ 龍 潤生 Abalance

Abalance 龍潤生

再生可能エネルギーの分野で今、最も勢いがあるAbalance(エーバランス)。成長戦略の要となる太陽光パネル製造事業では、ベトナムで6つ目の工場を増設中。そして最大の輸出先である米国でも新工場の建設を計画しておりグローバル化を加速させている。(雑誌『経済界』総力特集「注目企業2024」2024年5月号より)

Abalance 取締役CEO 龍 潤生氏

Abalance 龍潤生
Abalance 取締役CEO 龍 潤生 りゅう じゅんせい

欧米で需要を伸ばす太陽光パネル製造事業が牽引

Abalanceは純粋持ち株会社として、グループ会社を通じて主力の太陽光パネル製造事業をはじめグリーンエネルギー、IT、建機などの事業を手掛けているグローバル企業だ。

太陽光パネル製造事業を担っているのはベトナムに本拠を構える子会社のVSUN。製品は主に米国、欧州に輸出される。またグリーンエネルギー事業は、子会社のWWBをメインに太陽光発電所を保有して売電するほか、企業や需要家に発電所開発や部材の販売などで収益を上げている。売上高はこの数年で急拡大しており、連結売上高は2021年6月期269億円、22年6月期924億円、23年6月期2174億円と、2年で8倍の規模に増加した。

経営環境は世界的な脱炭素化、SDGsの潮流を受けてフォローの風が吹いており、欧米では太陽光発電の需要が高い。そこで昨年9月に発表した3カ年の「Abalanceグループ中期経営計画(24‐26)」では大幅な増収増益の数値目標を掲げた。中計3年目の26年6月期に連結売上高3558億円、連結営業利益308億円がゴールとなる。23年6月期と比べると、売上高は1・6倍、営業利益は2・3倍の規模に上る。

世界の主要国が35年の温室効果ガス排出量を19年比で60%削減する目標を打ち出しており、日本も50年の温室効果ガスをゼロにするカーボンニュートラルを目指している。

同社にとってはこの3カ年計画は2030年グループビジョン「再生可能エネルギーの中核的グローバル企業」の実現に向けた加速期間と言える。3カ年計画の実現を前提として、グループビジョンにあるグローバル化とグループの持続的成長と企業価値の最大化を図るものだ。

取締役CEOの龍潤生氏は中期経営計画について次のように話す。

「中期経営計画には二つの狙いがあります。一つは投資家およびその関係者にわれわれの考え方、経営方針を明らかにすること。もう一つは決意表明です。投資家をはじめ各ステークホルダーの皆さまに数値目標を公表した以上、もう逃げられない、われわれ自身の退路を断つという意味合いがあります」

主要輸出先の米国に工場建設 NASDAQ上場を計画中

ベトナムで建設したVSUN グループのセル工場。太陽光パネルの主要部品であるセルの生産能力では中国本土を除き世界最大級
ベトナムで建設したVSUN グループのセル工場。太陽光パネルの主要部品であるセルの生産能力では中国本土を除き世界最大級

同社の業績拡大の原動力となるのが、連結売上高の9割超を占める15年設立のVSUNによる太陽光パネル製造事業だ。VSUNの成長戦略は太陽光パネル製造工場の新設と上流工程への進出だ。

太陽光パネル製造工程は、まず原料のシリコンを高温で溶かし、必要な形状にして固めたインゴットにする。インゴットを薄くスライスしてウエハにし、太陽光パネルの最小単位のセルを作る。セルを複数枚組み合わせたものが太陽光パネルだ。

VSUNは従来、原材料や部品を欧米やアジアから購入し、太陽光パネルに組み立てていたが、上流のインゴット、ウエハ、セルの製造にも乗り出し、自社製造への切り替えを推し進めている。これは製造のサプライチェーンの上流から製造、出荷までをトータルに担うということ。ベトナムでは従来、4工場が稼働していたが輸出が伸びていることを背景に昨年、セル工場を新たに建設して5工場となっている。

そして今年1月、太陽光パネルの主要部品となるインゴット、ウエハ製造を目的とした上流工程の新工場の建設を開始。今年前半までに稼働開始を予定している。コスト削減による利益率の改善とサプライチェーンの強化で安定稼働が期待できる。

「VSUNの川上への進出は、主要部品の安定調達を推し進め、米国の輸入規制にも柔軟に対応できるようにすることが目的でもあります。また、グローバル・サプライチェーンを強化し、中長期的な競争力の向上を図るのが狙いです」

さらに、VSUNは初めて米国に太陽光パネル工場を建設、NASDAQへの上場も計画している。新工場は建設予定地が決まり年内には着工し、25年早々にも稼働できる見通しだ。現在、VSUNの太陽光パネル生産能力は5GW(1GWは原発1基分の発電量に相当)だが、26年には10GWに引き上げる計画だ。

これに加えて、もう一つの成長エンジンと位置付けているのがグリーンエネルギー事業だ。ストックビジネスとフロービジネスがあり、ストックビジネスでは太陽光発電所の開発やM&Aで取得した発電所を継続保有して電力会社に売電する。一方、フロービジネスは太陽光発電所の売買や太陽光発電事業に進出する企業向けに設計、保守、管理までを一気通貫に行う。現状事業割合は5割ずつとなっている。

「ストックビジネスは保有資産が利益を生んで積み上がっていく安定収益源。もっと拡大していきたい」

また蓄電池事業にも本格参入の予定で今年中にもプロトタイプを作る計画がある。同社のビジネスは一段と成長が加速していきそうだ。 

会社概要
設立 2000年4月  
資本金 20億5,900万円  
売上高 2,174億円(連結・2023年6月期)  
本社 東京都品川区  
従業員数 1,430人(連結)  
事業内容 太陽光パネル製造事業、グリーンエネルギー事業、IT事業、建機事業  
https://www.abalance.jp