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小形風力発電で世界トップシェア 独立電源や自家消費で再エネ普及 久保昌也 ゼファー

ゼファー 久保昌也

小形風力発電機で世界トップシェアのゼファー。近年は新たに中形機も手掛け、工場やデータセンター向けに再生可能エネルギーの自家消費比率向上に貢献している。そこには小形風力発電機の老舗事業者として培ってきたスキルだけに頼らない「人間力」があった。(雑誌『経済界』2024年9月号「総力特集 人材育成企業2024」より)

ゼファー 久保昌也
ゼファー 久保昌也

風力発電は黎明期の発展途上。太陽光との違いとは

久保氏がゼファー社の社長に就いたのは2020年。もともと金融工学の専門家として金融機関に勤めていたが、東日本大震災を機に異業種の風力発電の世界に足を踏み入れた。

「再エネ(再生可能エネルギー)は誰かがやらないといけませんが、その中でも風力発電事業の経営は最も難しいものです。産業は未発達で、黎明期と言えます。一方でエンドユーザーである需要家の期待値は高く、太陽光発電のように設置や契約をすればすぐに電力を買えると思われていますが、そう簡単ではありません」

太陽光発電との違いは「動くもの」と「動かないもの」だ。太陽光発電は発電パネルを設置すれば工事は終わるが、風力発電は風車のブレードが回り続ける。「太陽光であれば電気系技術者だけでほぼ施工は完了するでしょうが、風車の設置には土木工事や構造計算も必要です。落雷や鳥を巻き込むバードストライクなど、あらゆる危険を想定して安全を担保した上で、定期的にメンテナンスしないといけません」。

ゼファーの強みは定格出力1kWの小形風力発電機。これまでの累計生産台数は約5千基に及び、海外・国内ともにトップシェアを誇る。小形風力発電機は電力会社からの系統電力が利用できない場所には必須の電力で、「独立電源」としてさまざまな場所で使用されている。

「風車利用の用途は発電した電力を系統電力に送る『逆潮流あり』、系統電力と共に自家消費する『逆潮流なし』、完全な『独立電源』、電力として利用しない『モニュメント』の4つ。再エネは固定価格買取制度による『逆潮流あり』が多いのですが、需要家が求めるのは『再エネか』『系統電力よりも安価か』の2つです。このベストミックス、すなわち『安価な再エネ』が最も必要とされます。

当社の強みは小形風力発電機による完全独立電源ですが、近年は定格出力50kWの中形風力発電機を市場投入しました。50kWあれば、小形機に比べてデータセンターや工場などでも使いやすく自家消費用にも適しています。世の中の消費電力を全部再エネにすることは不可能ですし、長年にわたり維持されてきた送配電設備の容量にも限界があり、『タダ乗り』はできません。この中形機を拡大して、既存の送配電設備への国家としての新たな投資を抑制しつつ、再エネによる自家消費比率を向上させていくことが今後の目標です」

再エネを目指す哲学を従業員と共有

「ゼファーのアセットは人」と語る久保社長。風力発電事業では技術力だけでなく、風車を設置する自治体や地域住民との折衝など幅広い知見とノウハウが求められる。「風力発電事業は風車メーカーのわれわれと需要家だけが満足すればいいわけではありません。自治体や地域住民もステークホルダーであり、全ての関係者に満足・納得してもらえなければならず、電力以外も含めた事業計画を練り込むのに時間がかかります。当社はこれまで全国で小形風力発電機を設置してきたノウハウとコネクションがあります。既存の風車があれば、規模拡大のお願いもしやすくなります。知らない人たちが突然訪れて『風車を設置させてください』とお願いするのとは違います」

また技術力も「人のアセット」が光る。重要なのは風車の「設計値」だ。「風の力がどのように風車全体および各部品へ伝わっているのかを把握することも難しいが、その中で、どれくらいの強度や剛性や弾性を持たせるのかなどの設計値をそれぞれの荷重ケースごとに適切に予測しているかが大切。『設置して終わり』ではなく、風力発電機として最適な設計や生産ができたとしても、風力発電事業(運用および保守)においては、いろいろなリスクに対する備えが必要です。例えばバードストライクを防止するには、設置場所近くに鳥の生息地があるか事前に調査するなど配慮が必要です。スキル以前に現場に行けば地元の人にきちんと挨拶できる人間でなければいけません」

中形風力発電用途イメージ
ゼファーの中形風力発電用途イメージ

現在の従業員数は25人。少ない人員でゼロベースから風車を設計・開発し、事業立案、営業、運営、保守まで全域をカバーする。「小さい組織だからこそ企業文化も醸成しやすい環境があります。われわれが目指す再エネの世界をどう実現するか、この哲学の共有が大切で人間性を重視しています。電力供給は社会的責任のある仕事ですから従業員にはスキルはもちろん、人間力をさらに磨いてほしいと思っています」。

海外と比べて成長の遅い国内風力発電事業。久保社長は風力を活用した再エネの普及に力を尽くす。「ようやく洋上風力発電などが注目されはじめましたが産業としてはまだまだ。今後、規模を拡大するには設備も技術者も足りません。持続可能な社会を目指すために風力発電は欠くことのできない産業です。これからも社会的使命として力を尽くします」。 

会社概要
設立 1997年6月
資本金 3,964万円
売上高 3億2,500万円
本社 東京都港区
従業員数 25人
事業内容 風力発電システム事業
https://www.zephyreco.co.jp/