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画像鮮明化技術にオファーが殺到 シニアベンチャーが世界を変える 佐藤公明 ロジック・アンド・デザイン

佐藤公明・社長(左) 北野健・取締役会長(右) ロジック・アンド・デザイン

画像鮮明化、復元高解像度化の独自技術を持ち、医療、防犯、防災、車両、生産現場などあらゆるシーンで「より視みえる化」を実現するロジック・アンド・デザイン。既に眼科領域では積極的な活用が始まっているという。佐藤公明社長と北野健会長に話を伺った。(雑誌『経済界』2024年12月号「総力特集 強い組織の流儀」より)

佐藤公明・社長(左) 北野健・取締役会長(右) ロジック・アンド・デザイン
佐藤公明(さとう きみあき)・社長(左) 北野健・取締役会長(右) ロジック・アンド・デザイン

眼科のリアルタイム手術や皇宮警察のカメラにも採用

明暗、逆光、霧、雨、雪、水中など、見えない部分がある画像を「より視える化」するのが、同社の画像鮮明化技術「LISr®」だ。

カメラで識別できる明るさの範囲をダイナミックレンジと呼ぶが、不鮮明な画像の多くはダイナミックレンジの狭さに起因している。この狭くなった領域を独自のアルゴリズムで広げることにより、画像を加工することなく、記録されているデータから鮮明化ができる。

4Kや高感度カメラを使った撮影でも限界があるため、この技術は画期的だ。類似の技術と比べても大幅にノイズを低減しており、リアルタイムでの高速処理を実現している点も評価されている。

「医療では既に大学病院をはじめとする眼科領域でその有用性が認められており、今後は脳神経外科等、他の診療科での普及促進に力を入れていきます」と北野会長は話す。

防犯面では皇宮警察本部の監視カメラに同社の技術が採用されており、警察からの問い合わせも多い。

国土交通省新技術提供システムにも登録されており、建設現場でのドローン検査、赤外線河川監視カメラなど、さまざまな場所での活用が見込まれている。

今年1月2日に羽田空港で起きた日本航空機と海上保安庁の航空機の衝突事故では、日本テレビからの依頼で映像を鮮明化した。

佐藤社長は「AIで予測をして奇麗に見せる、レタッチやエッジを効かせてくっきりと見せるための加工技術ではないので、裁判で証拠画像としても使うことができます」と太鼓判を押す。

見えない部分がある画像を「より視える化」するLISrテクノロジー
見えない部分がある画像を「より視える化」するLISrテクノロジー

社員の平均年齢は56歳。技術に惚れ込み人が集まる

佐藤社長はもともと医療機器メーカーに勤めていたが、この画像鮮明化技術に出合ったことで、還暦を過ぎてから会社を設立した。

「知人から技術開発者である小林正浩氏を紹介され、サンプル画像を見た瞬間に『これは医療に展開できる!』と運命的なものを感じました」

後に小林氏を開発部長に、元同僚の北野氏を会長として迎え、技術と医療分野へのネットワークを持つ集団をつくり上げた。

「大手企業に勤めていた人が『世界を変える技術に感動したので一緒に働きたい』と入社してきます。平均年齢56歳のシニアベンチャーですが、人生の後半にワクワクした仕事を楽しむ社員のコミット力はものすごいものがあります」

技術と製品の力に加え、社員の情熱が強い組織づくりのベースになっている。

今後はチップ化の実現と量産化に力を入れる
今後はチップ化の実現と量産化に力を入れる

チップ化して量産し数年後の上場を目指す

同社の基幹事業となっているもう一つの技術が、復元高解像度化技術「Re:Na®」だ。ピンボケや手振れ、低解像度といった元画像を算術的に計算して解像度を改善することが可能となり不明瞭画像の復元高解像度化が実現できます。

また画像鮮明化技術「LISr®」は進化を続け、特許も取得している。ハードウエア、ソフトウエア、SaaSという形で提供ができ、OEMとしての開発も可能だ。この3年で医療機器を8品目開発し、市場に出るスピードも速い。

今後はチップ化の実現にも力を入れていくという。

「小型化すれば場所も取らず、ローコストで導入しやすくなります。小型カメラに組み込めば、カメラモジュールとしても販売できます。現在は評価用サンプル製造の段階まで来ており、来年度末の量産化を目指しています」

開発には資金が必要だが、唯一無二の技術が期待され、多くの会社から出資を集めている。

「今年は三菱UFJ信託銀行からの出資が決まりました。数年後のExitを目標にしており、日本の技術を世界に広めていくため、グローバル展開を考えた人員補強もしていきます」

今後は海中調査や宇宙の衛星画像など、はるか遠いエリアでの画像鮮明化にもチャレンジしたいという佐藤社長。

「無限大の可能性がありテクノロジーによって夢を持ち続けられる組織だと思います。これからは若い人に入社していただき、世代交代をしていくことが課題です。『より視える化』の技術を、命を守る、財産を守る、国を守ることに役立て、社会貢献をしていきたいですね」 

会社概要
設立●2018年3月 資本金●2億2,631万円
本社●東京都新宿区 従業員数●24人
事業内容●画像鮮明化アルゴリズム、復元高解像度化アルゴリズム開発、関連機器&ソフト、システム開発販売
https://www.lad.co.jp/