リユースショップの草分けであるトレジャー・ファクトリーは1995年に創業、現在では国内外で約300店舗を展開している。2007年に上場を果たし、ECや新規事業、海外進出も積極的に行い業界を牽引する存在となった。業績も堅調で既存店売上高は38カ月間連続(24年10月時点)で対前年同月比を更新し続けている。(雑誌『経済界』2025年2月号「新風のリユース業界」特集より)
家電商品の保証制度など地道な営業努力が奏功
リユースの概念が変わりつつある。かつては節約や資金づくりの手段としてのみ親しまれた中古品売買だったが、SDGsの浸透や物価高の上昇を契機に、多くの人の購買の選択肢の一つとなった。3兆円に迫る市場規模に成長したリユース業界は、新興企業の参入も後を絶たず、現在では新旧企業がしのぎを削り合っている。野坂英吾社長が起業したのは大学卒業後、23歳の時だった。
「学生時代にショッピングモール内のカラオケ店でアルバイトをしていた時、閉店時にごみを捨てに行くと、インテリアや家具、備品などがまだきれいな状態で捨てられていたのです。それはお店の営業上仕方のないことですが、もったいないなと思うと同時に、これらを再活用する時代が近くやってくるはずだと考えていました。当時は粗大ごみが社会問題化していて、リサイクルや再活用が商売になると思いました」
学生時代から起業を志し、事業を模索していた野坂氏は、捨てられている中古品の再活用をビジネスにするためにリサーチを開始。国内をはじめ米国のリサイクルショップなど、計48件の同業他社の視察を行った。
そして1995年、リユースショップの第1号店を東京・足立区にオープンするもいきなり業界の課題と直面する。当時リユース品への風当たりは強く、新品を買えない低所得者層が手にするものだという意識が根強くあった。この考えを払拭しない限り、マーケットは広がらないと確信し、新しい施策を導入。買取製品のクリーニングや家電製品の保証は最たる例で、新品同様の商品を安心して購入できる環境づくりに努めた。
このような経営戦略と営業努力が消費者に評価され、今日では業界のスタンダードとなり、リユース業界の隆盛に大きな役割を果たした。
289店舗の成功事例を背景に新規事業を展開へ
同社はECサイトの開設など販売チャネルを増やす一方で、業績を伸ばしてきた背景には実店舗の存在が欠かせない。2024年10月末時点で、店舗数は海外・グループ会社を含め289店舗に上る。
景気変動に左右されずに成長できたのは各店舗の施策が功を奏したからだと野坂氏は話す。ある店舗では、インバウンド需要を見越した高価格帯商品の強化や、楽器やアウトドア用品など、ニッチな商材の取り扱いを増やし、新たな顧客層の獲得に成功。さらに、コロナ禍をきっかけにECチャネルの強化も行い、店舗で買い取ったアイテムをECへも積極的に出品することで、同社の認知はさらに広がっていった。
成功事例は定期的な会議の場で共有され、他店舗や他事業でも横展開されている。会社の資産として積み上がった数々の成功事例が、同社の経営基盤を支えているのだ。
加えて人材の育成も組織の成長には欠かせない。1千人を超える従業員は、エリアや事業部ごとに細分化されたマネージャーが育成を担当している。
「マネージャークラスの人材がキーマンとなっており、権限の委譲も積極的に行っています。教育研修課も立ち上げ、そうした人材を増やすとともに、さらに活躍するための環境も整えています」
その他の要因として、外部環境も追い風となると話す。
「昨今の物価高は、リユース品を検討する上ではアドバンテージとなっています。弊社の商品も値段は上がっていますが、それでもお得感はかなりのものです。数年前と比べて、業界のすそ野は広がってきています」
事業のポートフォリオも広がり、不動産や引っ越し業も手掛け、業績は好調だ。これら新規事業のヒントは現場から得ている。
「例えば不動産業では、生前整理や遺品整理に伺った担当から、不動産について相談があると報告が上がります。この場合、以前は他社を紹介していたのですが、一定以上のボリュームとなったため自社の新規事業として立ち上げました」
組織が大きくなる中でも、活発なコミュニケーションができる風通しの良い社風が右肩上がりの成長を支えてきた。今後は顧客のさらなるニーズに応えるため、国内外での出店を加速させる見通しだ。人口減少に伴い日本の経済は縮小の一途をたどっているが、逆境にこそチャンスはあると考える。
「働き手の確保など問題は多くあります。しかし、リユースへのニーズはまだあり、応えていかなければならない分野です。出店できていない地域も国内外にたくさんあるため、業態を伸ばしつつ、機会があれば別の事業も展開させていきます。スタートbyジャパンのリユースビジネスを、トレジャー・ファクトリーが世界中に広げていきたいですね」
会社概要 設 立 1995年5月 資 本 金 9億600万円 売 上 高 344億5,400万円(2024年2月末時点) 本 社 東京都千代田区 従業員数 1,021人(正社員・2024年8月末時点) 事業内容 リユース、ライフサポート、レンタル、オークション、システム開発事業 https://www.treasurefactory.co.jp/ |