「日本のデジタル投資は守り一辺倒。諸外国と比べて遅れている」とアーカス・ジャパン社長の松原晋啓氏は警鐘を鳴らす。顧客理解を深めるCRMを企業に導入し、コンサルティング支援を行ってきた同氏は、守りから攻めへと転じる投資を提唱する。(雑誌『経済界』2025年3月号「関西経済、新時代!」特集より)
世界と比べて後れを取る日本の「攻め」のDX
「日本のデジタル投資は諸外国と比べて大きく遅れています。米国では年々デジタル投資額が増え、GDPも連動して増加していますが、日本の投資額は横ばいで名目GDPの伸びは見られません」と松原社長は語気を強める。
そこで松原社長が注目するのが攻めの投資だ。日本と米国をはじめとする諸外国とでは、そもそもDXの考え方が大きく異なる。
「日本のDXはこれまで業務効率化やアナログデータのデジタル化、セキュリティリスクの軽減といった、守りの投資にとどまっていました。それに対して、米国は新規製品やサービス開発、顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的な変革といった、攻めのDXに積極的に取り組んでいます」
DXは本来、製品やサービスそのものをトランスフォームさせるもの。しかし、日本では守りの部分がとりわけ重視され、デジタイゼーションもしくはデジタライゼーションの範疇にとどまっているのが現状だ。
またDX導入企業でも、特に情報通信業、製造業、サービス業などで日米差が大きい。企業・行政などでも度々目にするようになったDXという言葉だが、日本ではDXに対する投資も施策も、人々のリテラシーも追いついていない。
日本が後れを取った原因について松原社長は、「経営者をはじめとするトップ層のデジタルリテラシーが低いことが一番の問題」と断言する。
「DXはあくまでCX(コーポレートトランスフォーメーション)の上に成り立ちます。企業の根幹からの変革なしにDXは実現できません。枝葉の部分をデジタルに置き換えるだけでなく、デジタルありきで経営全体を考える根本的な意識改革、企業変革が必要です」
投資すべきところを見極める嗅覚を磨く
トップ層のリテラシー向上のために、各地で啓発・啓蒙を進めてきた松原社長。DXにおける顧客インサイトの重要性を次のように説明する。
「DXのデジタルシステムは大きく3つに分けられ、業務に関するさまざまなデータを記録するためのSoR(Search of Record)、データを分析してビジネスに有益な知見を導出するためのSoI(Search of Insight)、企業と顧客の結び付きを改善して関係性を強化するために設計されたSoE(System of Engagement)から成り立っています。従来の日本企業のIT部門ではSoIは注目されておらず、顧客インサイトの分析や理解が進んでいませんでした」
攻めのデジタル投資の核となり、DXにおいて重要なSoI。同社はこの領域で最先端を走る。
「弊社の強みとするCRMは、顧客インサイトの理解・分析ツールを通じて顧客理解を深める仕組みです。近年は顕在化しているニーズだけでなく、『顧客自身は自覚していないが、深層心理で求めているもの』を創出し、新たなニーズや市場の開拓の必要性が増加しています。そのため、顧客インサイトの導出がより重要になることは間違いありません」
データを蓄積しているだけで活用できなければ機会損失になりかねない。施策立案、実行、蓄積したデータの分析・評価、改善策の検討といったPDCAサイクルを回すためにも、CRMを導入してSoIを強化する必要性は明らかだ。加えて、施策立案で指針となる目的意識についても、見直しは急務と話す。
「目的意識を持たないままCXやDXに取り組んでも、成果は望めません。どんな戦略を立てるか、投資すべきかを判断するには、高い視座と市場をサバイブしていく経営者の嗅覚を磨き続ける必要があります」
CRMの第一人者が起こす、攻めの波風は関西から
しかし、攻めのDXを実現するのは簡単ではない。そんな時は専門家を頼ってほしいと松原社長は言う。
「手法やツールを導入しても、望む成果が得られるとは限りません。弊社では戦略から実行に必要となるツールの提供まで一気通貫のご支援が可能です」
松原氏は外資系コンサル会社出身者らしく、CXについて専門的な知見から的確な支援ができる。CRMだけではなく、AI開発や事業会社も経営し、CRMノウハウを深化させてきた実績も心強い。さらには、新たな取り組みを起こす際に発生する社内のハレーションに対し、第三者の専門家として介入し、トランスフォーメーションを円滑に進めるためのサポートもできる。
「コンサルタントは『悪役』。経営者と社員が話すと摩擦が起こる時に、社外の専門家の立場から客観的なロジックを用いて話せます。コンサルタントとは痛みを伴ってでも企業を変革させる専門家です。弊社にはそのDNAがあり、CRMの第一人者としての自負と誇りを持って取り組んでいます」
業界でも国内のDXの課題点をいち早く見抜き、日本でのCRM導入を進めてきた松原社長。次に熱視線を送るのが関西、特に大阪、神戸、京都の三都市だ。
「開発され尽くした東京に比べ、関西には土地、国際的に評価の高い歴史・文化など、未活用の地域資源が多数あります。CRMを用いれば、より磨きをかけられる。可能性は無限にあります」
会社概要 設 立 2020年7月(創業2012年7月) 資 本 金 1,980万円 売 上 高 6億5,000万円(2024年4月時点) 本 社 大阪市淀川区 従業員数 50人(常勤パートナー含む) 事業内容 自社プロダクトやサービスの提供、CRMのコンサルティング支援など https://www.arcuss-japan.com/ |