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企業間・社員間交流の最適解? 企業eスポーツ部の実態

eスポーツルームでの交流イベントの様子(画像提供:富士通)

文=小林千華  Photo=画像提供:富士通(雑誌『経済界』2025年4月号「『ゲーム』を超えるeスポーツ」特集より)

eスポーツルームでの交流イベントの様子(画像提供:富士通)
eスポーツルームでの交流イベントの様子(画像提供:富士通)

富士通では700人が在籍 他社や学生ともイベント開催

 企業eスポーツ部が増えている。フィジカルスポーツよりも場所を選ばず、遠く離れた企業同士、事業所同士でも一緒に楽しめることから、企業間・社員間のコミュニケーションが気軽にとれると評判だ。各地で大会も行われ、昨年の佐賀国体の文化プログラム「全国都道府県対抗eスポーツ選手権」でも、ソーシャルゲーム「グランブルーファンタジー」の企業対抗戦が、エキシビションとして開催された。

 中でも企業eスポーツ部としては国内最大規模の約700人が在籍しているのが、富士通eSports部だ。富士通のグループ会社全体から有志が集まって活動しており、プレーするタイトルは16種類。タイトルごとに週1回程度、勤務後の夜の時間帯に、オンラインで集まって練習することが多い。

 部の立ち上げをリードしたのは、デザインセンターでデザイナーを務める有馬和宏氏だ。コロナ禍の2020年、社員間の交流が難しくなった際、エンゲージメント向上を目的として部活動を発足させた。富士通はもともと事業所ごとにさまざまな部活動を行っているが、eスポーツならオンラインで事業所問わず一緒に活動できる点も、発足の決め手になった。

 現在は、HIT)クラウドサービス事業部の福田紘子氏が、有馬氏から代表を引き継いでいる。

 「今の部員の属性は本当にさまざま。年齢は比較的20代が多めですが、60代もいます。職種もエンジニアや開発系が特に多いというわけでもなく、営業系や、総務、人事のようなコーポレート部門の社員も在籍しています」(福田氏)。

 部員によって、大会に出場し勝利を狙う、気軽に練習だけを楽しむなど楽しみ方も異なる。福田氏自身も大会出場を目指して練習しながら、「全く違う部署のメンバーと、困った時に相談し合える間柄になれた」と振り返る。

 部としての活動の他に、富士通は社内外のコミュニケーションにもeスポーツを活用している。CIO秘書官兼シニアマネージャーの曽根崎輝太氏は、「ゲームをしている時は、性別も世代も国境も超えて、人の横のつながりが強くなる」と話す。そんな発想から、他社とのイベントや学生との交流会にeスポーツを用いることがあるのだという。

 そうしたイベントの際よく使うのが、22年に事業所内に開設された「eスポーツルーム」。5人までのチーム同士で対戦できる設備が整っており、社内外とのイベントなどで、予約が詰まっている。

 ここで行ったとある企業間交流会では、まずeスポーツを活用したビジネスの可能性についてセミナーを開催。その後は実際にプレーを通じて懇親を深めた。

 「他社の方とも学生さんとも、机越しに向かい合うとどうしても緊張感が生まれてしまう。一緒にゲームをすることで、すぐに距離が縮まります」(曽根崎氏)

eスポーツ関連の活動から今後のビジネスの可能性も

 こうした活動を通して、ITサービス企業としてのeスポーツを使った研究や、ビジネスの可能性も見えてきたと曽根崎氏は語る。

 「過去に開催したeスポーツイベントで、皆さんに心拍数を測りながらプレーしていただき、誰が一番緊張していたか、楽しんでいたかなどを分析したことがあります。このようにプレーヤーの状態を分析し、強さとの相関を調べるなど、富士通の技術とeスポーツを掛け合わせたビジネスの可能性も、今後模索していきたい部分です」(曽根崎氏)