バーコードや2次元コード、RFIDなどの自動認識技術とラベルを駆使し、モノやヒトを情報化する「タギング」。この高い技術で社会課題を解決してきたサトーホールディングス。今期からは再資源化や海外シェアの拡大に力を入れ、成長フェーズへと加速していく。(雑誌『経済界』2025年5月号「注目企業」特集より)

世界トップクラスのシェアで2024年は最高益を達成
バーコードやICタグなど、誰もが当たり前のように使っている「タギング」技術のノウハウを持ち、ラベルプリンターで世界トップクラスのシェアを誇る同社。マニュファクチャリング、リテール、ロジスティクス、ヘルスケア、フード、公共といった市場で、タギングはインフラとして欠かせないものになった。
「創業から84年、竹材加工機から始まり、ハンドラベラーの開発、世界初の熱転写方式バーコードプリンターを発明と、人の生活を便利にする、省力化するという当社のルーツは変わっていません」と小沼宏行社長は語る。
同社は2030年ビジョンとして「パーフェクトアンドユニークタギング(PUT)」を掲げている。
「全ての商品に個別のIDを付与することで、自動で管理・追跡ができるようになり、サプライチェーンから消費者まで全体の情報のトレースも可能になります」
昨年は過去最高益の104億円を達成し、今年はさらに10億円増益の見込みだ。30年には売上高2千億円、営業利益210億円(10・5%)、ROIC10%以上を目標に掲げている。
「より成長が期待できる分野に資源を集中投下していき、利益を伴う売上高の成長を目指していきます」
今年4月には子会社のサトーを吸収合併し、持株会社から事業会社に移行する。
「ホールディングスという形式はやめますが、M&A戦略やベンチャー投資は変わらずに行っていきます」
再資源化や海外市場に力を入れエンタメやアニメ分野にも注力
特に今期、注力していくのは再資源化の分野だ。回収した廃棄物にタギングによるIDを付与し、リサイクル工場への入荷から中間処理、再生材生産までの各工程と紐づけ記録することで、トレーサビリティに必要な情報を収集。安定した再生材の活用を促進し、循環型社会の実現に向けた取り組みとなる。
「ほぼブルーオーシャンの分野であり、実証実験を行ってチャレンジしている最中です」
もう一つ注力しているのは海外市場だ。現在、26の国・地域に121拠点を持ち、90以上の国・地域でビジネスを展開している。今年は創業来初めて海外の売り上げが日本を超える予想だ。
「米国市場は大きい割に当社のシェアが低いので、まだ大きく拡大できる余地があり、執行役員を現地に送り込んで力を入れています。流通は強いが、ヘルスケアは弱いなど、国によって偏りがあるため、世界全体で見てもまだ伸びしろがあると考えています」
新規市場へのチャレンジにより、新たなタギングのニーズを探ることも欠かせない。例えばエンターテインメントやアミューズメント分野などで進化の余地がある。
「これまで業務を安全に進めるため、正確に進めるためにタギングを導入することが多かったのですが、例えばコンサートなど、感動や楽しさの領域で使えるようになれば、新たな提案につなげられるのではないかと期待しています」
チャレンジできる風土で唯一無二の価値がある会社へ
小沼社長はサトーヘルスケアカンパニー時代、母親と新生児のリストバンドを、プリンターで同時発行するシステム「koDakara(こだから)」を開発した。自動認識技術により、医療従事者の心理的負担を軽減し、人的ミスの防止になり、特許も取っている。
「ちょうど新生児の取り違えが社会問題になっている時期で、病院で看護師から話を聞いて、開発を思い付きました。リストバンドは今では世界中で使われていて、世の中の困り事を解決できることに喜びを感じられた仕事でした」
同社では会社を良くする創意・工夫やアイデアを募っている。「三行提報」と呼ばれ、全社員が社長宛てに毎日、127文字程度で提案や報告を行うというものだ。
「私も社員時代は書いており、今は読んで評価する立場です。面白いアイデアがあればすぐにやろうとスピード感のある意思決定ができます。三行提報は50年近く続いていますが、誰もが会社を良くするために提案できるいい文化だと思います」
15年後に100周年を迎えるにあたって、チャレンジできる風土づくりも進めている。
「私自身、若い時から上司にチャンスを与えてもらい、失敗しながら成長してきたので、社員にはチャレンジを恐れず、失敗を許容する環境で、イノベーションを起こしてほしいですね」
ビジョンに掲げている「パーフェクトアンドユニークタギング」は、技術に限らず、会社としても完全唯一無二でありたいという思いがあるという。
「売り上げと利益だけで企業価値を高めるのではなく、『イネーブラー企業』となることが、社員のモチベーションアップにつながると考えています。三行提報の文化もユニークだと思いますし、サトーだから任せたいと思っていただけるよう、企業価値を高め、ステークホルダーを増やします。社員にも還元しながら、会社を大きくしていくことに力を入れていきます」とし、さらなる高みを目指す小沼社長だ。
会社概要 創業 1940年 資本金 84億円 売上高 1,434億円(2024年3月期) 本社 東京都港区 従業員数 5,744人 事業内容 グループ経営戦略の策定・経営管理(純粋持株会社) https://www.sato.co.jp/ |