新規事業への若手の積極登用でスキルアップとキャリアを支援　深尾大地　アッサアブロイグローバルソリューションズジャパン

世界最大級のエントランスセキュリティメーカーであるアッサアブロイグループの日本法人として、国内の主要ホテルチェーンや米軍基地関連施設に最新のセキュリティソリューションを提供するアッサアブロイグローバルソリューションズジャパン。拡大する事業に対応する今後の人材戦略を聞いた。

深尾大地　アッサアブロイグローバルソリューションズジャパンのプロフィール

ホテルキーをデジタル化ウォレットへの配信が可能に

コロナ禍を経てインバウンド需要が急速に回復する中、国内主要ホテルの客室稼働率も高い水準で推移している。諸外国に比べてセキュリティ水準が低いと言われる国内宿泊施設にとっては、この分野の強化と業務効率化の同時実現が喫緊の課題でもある。

同社のホスピタリティ向けソリューション「Ｖｉｎｇｃａｒｄ」（ヴィングカード）は、宿泊施設専用カード錠を開発したブランドとして世界中で認知されており、国内でも数多くの宿泊施設に導入されている。

「最新技術により高いセキュリティ力を担保しつつ国内鍵メーカーにも遜色ないコストで提供しているため、国内大手ホテルチェーンの９割で弊社サービスを導入いただいています」と深尾大地社長は語る。

ヴィングカードの強みであるクラウド版キー発行システム「ＶＯＳＴＩＯ」（ヴォスティオ）は、従来のオンプレミス版（施設設置型サーバー）とは異なり、キー管理サーバーの運用・保守・バージョンアップを全てクラウド上で遠隔・自動で行うため、設備の軽装化や維持管理費の削減に加えて、施設は常に最新のセキュリティ技術を享受できる。

近年、国内外のホテルで導入が進むデジタルキーの分野では、ヴォスティオの利用により新たにアップル社やグーグル社のウォレット機能へのキー配信が可能となった。従来のようなアプリのダウンロードも不要となり、深尾社長は「ウォレットキーの登場は、宿泊業界の鍵事情を一変させるゲームチェンジャー」と意気込む。

また同社のソリューションは、全国の在日米軍基地関連施設や大使館、データセンター等でも数多く導入されており、ハイセキュリティ製品として幅広く認知されていることがうかがえる。特に今年１月の第二次トランプ政権発足以降、米国防費増額に伴い国内米軍基地各所からの引き合いが急速に増えているという。

「沖縄の米海兵隊基地の兵舎だけで約１万４千室に弊社ソリューションを納入しています。今年は、北は空軍三沢基地、南は海兵隊沖縄基地まで、全国の米軍基地関連施設の新築・改修工事を手掛けていきます」

新事業分野を若手に託しステップアップの機会を提供

スウェーデンに本社を置くアッサアブロイグループは近年、大手コーヒーチェーンやスポーツスタジアム、百貨店などにインターネットゲートウェイサービスを提供するノマディクス社（ＮＯＭＡＤＩＸ）や、アップルストア、大手家電量販店でも導入されているリテール業界向けセキュリティディスプレイソリューションの大手、インビュー社（ＩｎＶｕｅ）など複数のＩｏＴ関連企業を買収している。これに伴い、日本法人でも急速に業務の幅が広がっている。

「ノマディクス社のソリューションでは、業界最高水準のセキュリティを備えた高速インターネット接続に必要なネットワーク設備、ゲートウェイ関連機器、コアキャストなどＩｏＴソリューションを包括的に提供します。ネットワークインフラと専用ソフトウエアの販売なども手掛けるようになることから、技術員の養成、マーケティング、販路開拓など必要な準備が多方面に及びます」

拡大する業務に対応するには人材の育成が急務だが、深尾社長は独自の人材起用法で社員の成長を促している。例えば米国で育ち漢字の読み書きが十分でない若手社員に対しては、全くの未経験であるにもかかわらず新たなビジネス領域の独り立ちまでを任せ、リーダーシップ力を育成させる機会を与えている。

また別の若手社員のケースでは、大阪支店入社わずか２年目で花形ともいえるホテル向けソリューションの営業マネージャーに抜擢し東京本社へ異動。入社２年目にして同グループアジアパシフィック全体でナンバーワンという目覚ましい営業成績を上げた。いずれも業界未経験で成果を出せる環境を整えていることがうかがえるが、外資系にありがちな短期的な成果至上主義とは一線を画すのが同社の人事戦略の特徴だ。

「例えば建築業界ではリードタイムが長いため、入社初年度は目立った成果が上がりにくい傾向があります。そのため初年度は実績ベースではなく２～３カ月程度の賞与をあらかじめ組み込み、確実な成長を実感できるまで新入社員でもモチベーション維持ができるよう配慮しています」

直近５年間で売上高が２・５倍と急成長している同社。人材不足にはＤＸ化やクラウド化で何とか対応してきたが、今後はよりアグレッシブに採用活動を展開していく。

「われわれが求めているのは、事業に対する絶対的な当事者意識を持つ人材です。与えられた仕事をこなすだけでなく、ビジネスオーナーとしての思考をもって、顧客に確固たるバリューを提供できる人材を積極的に採用していきます」