経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

メンバーの自律性を高めリーダー育成の好循環を実現 奥山哲也 ユニオン・テクノロジー

ユニオン・テクノロジー社長 奥山 哲也

大手企業を顧客に持ち、ユーザビリティを追求したシステムを開発するユニオン・テクノロジー。チャレンジしやすいエンジニアファーストな環境が、離職率の低さに直結している。着実にリーダーが育つチームのあり方を奥山哲也社長に聞いた。(雑誌『経済界』2025年9月号より)

奥山哲也 ユニオン・テクノロジーのプロフィール

ユニオン・テクノロジー社長 奥山 哲也
ユニオン・テクノロジー 社長 奥山哲也 おくやま てつや

エンジニア育成のため自社開発にこだわる

SES(システムエンジニアリングサービス)業界の課題として、エンジニアの給料が上がりづらく残業が多い、やりたいことができないといったことはよく挙げられる。現場に通じない営業マンの声が大きいこともエンジニアのモチベーション低下の原因になっている。

一方、ユニオン・テクノロジーではエンジニアファーストを方針に掲げ、離職率は圧倒的に低い。

「基本的には規定時間で仕事を終え、納期の都合で残業が必要になった時には増員をかけて、残業せずに成り立つ体制を取っています。特定のメンバーに仕事が集中しすぎないようにする配慮もしています」と奥山社長は話す。

また、入社数年で年俸制に切り替える仕組みがあるのも特徴だ。

「年俸制に変えると月給制よりも年収は大幅に上がります。成果を出せるなら、どんな時間の使い方をしても構いません。自律的な働き方ができそうな社員には年俸制を提案しており、断る人はいません」

業界では珍しく、交際費を柔軟に使える点も同社の魅力となっている。

「社員が取引先やパートナーとして働く人との飲み会を奨励しています。ただ社員同士の内輪の飲み会に無尽蔵に使ってもいいわけではないと、くぎを刺しています(笑)」

SESを手掛ける会社は、社員が取引先に常駐する時間が長く、会社への帰属意識がなくなりがちだ。案件ごとの参画では、キャリア形成も断続的になってしまう。そのため同社では基幹システム開発を中心に、受託での自社開発にこだわり続けた。

「最初の15年ぐらいは年に一つか二つ、赤字案件も発生しました。でも他の案件で利益が出ているなら、それも一つの投資として理解し、失敗を恐れずにチャレンジするようにしたのです。おかげでここ数年はマネジメント力がアップし、赤字案件がなくなりました」

グループリーダー制を導入 キャリアパスは適性に合わせて

グループリーダーの関口洋史氏。成長を実感し、新たなリーダーを育てる役割も果たす。
グループリーダーの関口洋史氏。成長を実感し、新たなリーダーを育てる役割も果たす。

2年前からはグループリーダー制を導入。プロジェクト単位のリーダーの上にグループリーダーを置き、クライアントとの交渉やプロジェクトチームの調整を担わせている。

「プロジェクトごとに忙しさに波はありますが、グループリーダーを立てたことで、プロジェクト間の人員調整がしやすくなり、全体としてうまく稼働するようになりました」

奥山社長はリーダーに求められる資質には不変的なものと流行的なものがあるという。

「クライアントに対してもチームメンバーに対しても絶対に変えてはいけない資質が『人望』です。一方で、時代とともに変化する部分については現場の実践知を下から上げてもらった方がいいでしょう」

例えばグループリーダーの関口洋史氏は12年前に入社し、奥山社長からの信頼も厚い。

「今まではエースとして自分がトップの成果を出すぞという目線でリーダーシップを取ってきました。でもグループリーダーとしてマネジメントの立場になると、メンバー、チームの成果の最大化が主となります」(関口氏)

丸投げではなく伴走型のリーダーとして、新たなプロジェクトリーダーを育てる役割も担う。

「プロジェクトの業務と並行して、グループリーダーの業務を行うため、最初は苦労もありました。しかし、部下にプロジェクトリーダーを任せ、成長していく姿を見て、グループリーダーの仕事の醍醐味を感じました」(関口氏)

最近の採用では「10年後にリーダーになりたい」と志望する新卒が増えているという。一方、技術を究めたい人材のキャリアパスも用意している。

「将来的に40、50代のプログラマーがいて、20代のリーダーがいてもいいじゃないかと思います。やりたいことをやるのが一番伸びるので、適性に合わせて働ける会社になるのが理想です」と奥山社長は言う。

変革の10年としてBtoCビジネスにも挑戦

創業から20年が経ち、3人だった社員は85人に増えた。5年後には、パートナーを含め200人程度まで増やす予定だ。

「売り上げのために人数を増やすのではなく、1人当たりの利益を大きくして、給与も上げていく好循環モデルをつくっていきます」

今後は顧客層を拡大するべく、新たな領域にも挑戦していく。

「これまで取引先は民間企業中心でしたが、官公庁の入札にも積極的に参加しています。BtoBだけでなくBtoCビジネスにも参入していくつもりです。Web3、ブロックチェーン、AIなど、内部で蓄積してきた先端技術があるので、今後の10年でこれを開放していきたいと考えています」 

会社概要
設立●2005年5月
資本金●3,287万円
売上高●13億700万円
本社●東京都中央区
従業員数●85人
事業内容●情報システムの設計、開発情報システムの運用、システムコンサルティング事業、その他これらに関する事業
https://www.union-t.jp/