(雑誌『経済界』2025年9月号より)

サントリーグループが「サントリー大学」を開校したのは今から10年前、2015年のことだ。初代学長は、その前年にサントリーホールディングス社長に就任した新浪剛史氏(現在は会長)が務めた。
入学対象者は全世界の従業員。創業精神を胸に刻み、自らの志に基づいて学び続け、自分を進化させ、一人一人の成長を通じて、サントリーグループのビジネスの成長に貢献することを目指している。座学だけでなく、「水と生きる」を学ぶため、天然水涵養の現場など、創業精神を体感する講義もある。そうして学んだ従業員が各国の職場に戻り、他の従業員に広げていく。
サントリー大学もその一つだが、サントリーグループは、人材育成を「中長期的な視点」で捉え、国籍や年齢などにかかわらず、全ての従業員に成長の機会を提供することに努めている。
その根底にあるのは、「人」を経営の重要な基盤とする「人本主義」だ。1899年に鳥井商店として誕生して以来、126年間にわたり一貫して人材育成に力を入れており、新入社員から経営幹部まで、あらゆる社員に対して数多くのプログラムが用意されているのもサントリーグループならではだ。
サントリーグループは、日本、スコットランド、アメリカ、カナダ、アイルランドの世界五大ウイスキーの産地の全てに蒸留所を持つ世界で唯一の会社だ。ウイスキー以外の飲料も展開し、全世界に265社、社員数4万人を数える国際的企業だ。この巨大企業は、人本主義に基づく人材教育で成長した社員およびリーダーたちに支えられている。

