経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

進化する百貨店 100年培った「真面目さ」で変革を目指す  古屋毅彦 松屋

松屋 社長 古屋毅彦

(雑誌『経済界』2025年12月号より)

古屋毅彦 松屋のプロフィール

銀座と浅草で老舗百貨店を運営する松屋は、2020年のコロナ禍では1カ月を超える全館休業を余儀なくされた。一時的にキャッシュフローが途絶える未曾有の危機に直面したが、これを好機と捉えた古屋毅彦社長は、人員を削減することなく営業組織のスリム化や外部委託業務の内製化など効率化を推進。銀座店が今年開店100周年を迎える中、昨年度の売上高は33年ぶりに過去最高を更新した。海外顧客へ向けた情報発信に注力し、存在感を高めつつ2050年に向けて「世界トップレベルのプレミアムリテーラー」となる長期目標を掲げている。

「松屋は関東大震災や戦後のGHQによる7年にわたる接収、コロナ禍など多くの危機を乗り越えてきました。今また世界情勢は悪化し、将来の不透明性は高まっています。富裕層向けの外商は好調で、インバウンドも増加していますが、永続するかは分かりません。長期的観点から年に数回程度来店するライト層にも松屋のファンになってもらうための施策が必要です」

リアルの百貨店を基盤としつつ、デジタルを活用し購買動向を分析、さらに顧客との接点を増やすオムニチャネルを強化する。

「日本の百貨店業界は顧客から求められる『サービスへの厳しい要求』に真正面から応えてきました。『真面目さ』は外国の百貨店にはない高い水準という自負があります。軸は守りつつ、変革を進めます。目標さえ明確で、互いにリスペクトがあれば、社員は同質的になる必要はありません。それぞれの個の尖った強みで補完しあう百貨店を実現します」