経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

M&A業界への逆風が追い風に誠実さと分業制という強み 橋場 涼 M&Aロイヤルアドバイザリー

M&Aロイヤルアドバイザリー 社長 橋場 涼

M&A仲介業者による不祥事が相次いでいる昨今。業界全体のイメージが悪化する中でも、M&Aロイヤルアドバイザリーは想像を超える成長を続けている。「誠実」を貫き、揺るがない組織を作ってきた取り組みの数々を橋場涼社長に聞いた。(雑誌『経済界』2025年12月号より)

橋場 涼 M&Aロイヤルアドバイザリーのプロフィール

土・日は「橋場塾」を開講 ノウハウを惜しみなく伝える

M&Aの各フェーズにおける専門チームを有し、業界では珍しい徹底した分業システムにより高品質なサービスを提供してきたM&Aロイヤルアドバイザリー。

コンサルタントを増やすよりも、バックオフィスの採用を進めることで、より一層コンサルタントがオーナーに寄り添える、効率的な分業体制を可能とした。

「人材にかかる固定費など賛否両論はありましたが、リスクのある大きな決断をできたことがターニングポイントだったと感じています」と橋場社長は語る。

さまざまなバックグラウンドを持つ社員が集まっているからこそ、トップダウンではなく、各領域の専門人材を信じて任せる方針を橋場社長は大事にしており、それが結果につながった。

一方、昨今は業界の不祥事によるイメージダウンで、オーナーがM&A仲介に対して警戒心を抱く場面も増えたという。

「それでも『弊社は誠実を貫いているから何も心配することはない』と社員には伝えています。実際、売り上げや人材面で大きな影響を受けることはありませんでした」

採用も活発で社員数はここ半年で70人近く増えた。だからこそ教育に力を入れ、トップコンサルタントとして活躍した経験を持つ部長陣の下でOJTを行っている。

社員には「伝書鳩のような仕事はするな」と伝える橋場社長。売り手オーナーの話を買い手企業に伝え、買い手企業の話を売り手オーナーに伝えるだけの仕事では、M&Aコンサルタントとしての存在意義はない。社員に求めるのは、税務・財務・労務・法務・経営といった多岐に渡る知識を身に付け、プロフェッショナルな仕事、価値を提供することだ。

「そこに企業文化である〝誠実〟が合わさることで、業界で不祥事が起きようが動揺することのない強固な組織ができていると感じています」

毎週土・日には、社員が社長と直接話せる勉強会「橋場塾」を開催しているのも社員教育に厚みを増している。自由参加だが、毎回30〜40人が集まるという。1週間の業務で生じた疑問を社内チャットツールに投稿すると、社長が直々に回答してくれる仕組みだ。

「休日も会社に出たり、家族には申し訳ないと思っていますが、仲間も人生をかけて弊社に来てくれています。それに真摯に応えたいのです」

社長室を設けず、社長のデスクが社員と同じ執務室にあるのは、何か質問があればすぐに聞きに来てもらうためだ。社員一人一人が安心して意見を出し合い、挑戦できる環境を重視している同社。四半期ごとに匿名・記名両方のアンケートを実施し、仕事から福利厚生まで幅広く意見を募る機会も設けている。

「良い意見があれば、詳細をヒアリングすることもあります。まだベンチャーフェーズですので、社員の意見一つ一つが財産なのです」

新たな挑戦へ体制構築 高度な案件にも対応可能に

誠実な対応によりたとえ短期的な利益を逃す場面があっても、中期・長期では間違いなくプラスになるというのが橋場社長の考えだ。

「オーナーさまのご意向ではなく、コンサルタントの利益や仲介会社の利益を追うのは、オーナーさまの一生に一度のご決断に寄り添う私たちの仕事、責任として絶対にあってはなりません」

日本ではまだまだ黒字廃業リスクを抱えているオーナーが多い。誠実なアドバイザリー業務に専念していれば、必ずオーナーに選んでもらえる会社になるという考えだ。

こういった〝誠実さ〟は、対社外だけではなく対社内にも求めている。一生懸命働いていても結果が出なかったり、上司に報告しづらいミスもでてくるが、どんな報告もしっかりと行うことが文化として浸透している。

「上司も部下を信じ、部下も上司を信頼しているからこそ、組織として力が発揮できると考えています」

最近ではTOBやMBOなど高度な案件に対応する体制を整えるなど、挑戦も続けてきた。新たな領域の人材の参加により、M&Aの総合プラットフォームとしての立ち位置を見据えている。

現在は首都圏の案件が中心だが、今後は自治体や金融機関との提携により地方の事業承継にも本格的に注力する予定だ。

「日本では70歳以上の経営者がいる会社が100万社以上あります。少子高齢化が加速する中、事業承継問題は国家的な課題です」

業界の健全化を進め M&A業界を若者の憧れに

中小企業庁は「M&Aを実施した会社の方が成長している」というデータを発表しており、M&Aは決して悪いものではない。オーナーの不安をなくし、トラブルを少なくするため、最近では資格制度の導入も予定されている。業界の健全化を橋場社長は望み、自社を業界の模範的存在とする覚悟がある。

「将来、若い人たちがM&A業界で働きたいと憧れるような業界にしていきたいですね」

創業から4期目、業界の困難に直面しても影響を受けなかったことで、「誠実」という会社の方針の正しさを証明できた。事業の承継、発展、成長のいずれにもM&Aという手法は切り離せない。

「他社仲介でうまくいかず、M&Aを諦めたオーナーさまも多いと思います。是非一度、私にご相談いただけたらうれしいですね」

設立2021年11月
資本金3,340万円
本社東京都千代田区
従業員数229人
事業内容M&A仲介事業
https://ma-la.co.jp/