熱中症対策のデバイス「カナリア」を手掛けるBiodata Bank(バイオデータバンク)。深部体温の変化を予測するウェアラブルデバイスは累計販売台数100万台を突破。記録的な暑さが続く夏に欠かせないアイテムとして注目を集めている。(雑誌『経済界』2025年12月号より)
安才武志 Biodata Bank(バイオデータバンク)のプロフィール

安才武志代表がバイオデータバンクを創業したのは2018年。20年の東京五輪を前に、少しでも困っている人の役に立ちたいという思いから熱中症対策を考え始めたのがきっかけだった。
「熱中症対策は水分補給や塩飴、ミストなどが一般的で、最新技術で根本的な対策ができないか考えました」
カナリアの操作自体はいたって簡単だ。腕時計型デバイスを装着するだけで、着用者の深部体温が危険域に達すると光と音とバイブレーションで発報する。創業当時、深部体温を正確に測る技術は確立されていなかった。体温には個人差があり、センサーは汗や日射の影響など多様な条件を考慮する必要がある。数々の難題を克服し、国内外で実証を重ねて検証し、販売を開始した。
「企業や大学など多くのパートナーから協力を得て、現場で実証を行いました。社会インフラを支える現場は労働環境が過酷な場合が多く、私たちの生活はそうした人たちの努力によって支えられています。熱中症の発症を毎年少しずつでも減らすことを目指し、社会課題の解決に取り組んでいます」
一度電源を入れれば充電せずに5カ月間連続で稼働するのもカナリアの特徴だ。電源の入れ忘れによる人為的エラーを防ぐとともに、数百人、数千人単位の作業現場でも充電環境を整えずに使える。利用者は建設、電力、製鉄、消防、自衛隊など幅広く、東京都の協力も得ながら都職員や学校、高齢者にも届いている。
さらに使用後に回収したカナリアからデータを抽出し分析するサービスもあり、熱中症リスクの状態を可視化し、翌年の対策につなげられる。毎年収集するデータやフィードバックをもとにアップグレードを行い、継続的に進化している。事業展開とともに導入先の熱中症は減少しているが、創業期は販売でも試行錯誤を重ねたという。
「在庫を抱えないよう、技術者であっても電話営業が業務の中心となる時期もありました。結果的には技術者にも1件の受注の重みを共有することができ、チームの結束が強まりました。今後は熱波が続き導入が伸びているEUをはじめ海外展開に注力していきます」
| 設立 | 2018年4月 |
|---|---|
| 資本金 | 1億円 |
| 本社 | 東京都渋谷区 |
| 事業内容 | 体温に関連する製品の開発製造、各種センサーを利用したソリューションの提供 https://biodatabank.co.jp/ |
