「旅人へのもてなし」がルーツ
日本全国のお菓子が一堂に会するビッグイベント、「全国菓子博覧会」(菓子博)が4月21日から5月14日にかけて三重県にて開催される。
菓子博のスタートは明治44年と長い歴史があり、一時中断した期間はあったものの、現在は4年おきに開催。この「日本版お菓子のオリンピック」とでも呼べるイベントには、全国から約1800点ものお菓子が集結する。 もともとは品評会としての性格が強かったが、今回は「食べる」「買う」の部分にもよりフォーカスし、一般来場者が親しみやすいものとなっている。回を重ねるごとに盛り上がりを見せており、お菓子好きならずとも一見の価値アリと言える。
第27回目を迎えた今回は「お伊勢さん菓子博」と銘打ち、神の国・三重県ならではの特色を打ち出して、開催期間中に60万人の来場を見込む。実行委員会の委員長を務める濱田典保・赤福会長はこう話す。
「歴史と伝統ある菓子博が初めて三重県に来るということで、新しい企画や商品、お菓子以外の商品とのコラボなど、今までになかった試みを行う予定です。お菓子好きでない人にも新しい発見があると思いますので、ぜひご来場いただきたいです」
多くの地域で、お菓子産業は武家のたしなみとして茶の湯と共に城下町で発展し、抹茶に合う錠菓などが主流だった。一方、三重県のお菓子作りは、お伊勢さん参りに訪れた人々をもてなすスタイルで発展してきたため、どちらかと言えば庶民的で、腹持ちが良い餅菓子が中心。伊勢神宮の参宮街道は、伝統ある餅菓子屋が軒を連ねていることから、今でも「餅街道」と呼ばれている。
そんな三重県の特色を打ち出す試みとして、既存の菓子に加え、今回は伊勢茶を代表とする「お茶」、伊勢志摩サミットでも評判になった「あおさ」、そして「柑橘類」という、地元ならではの素材を使った、新たなお菓子づくりに各社はチャレンジしている。これらの製品が新商品や会場限定品として味わえるのも楽しみの1つだ。
さらに、三重県の特設ブースでは、企画から約1年半をかけて制作された巨大な工芸菓子が展示される予定だ。歌川広重の浮世絵『伊勢参宮 宮川の渡し』を、幅10メートル、奥行きが5.5メートルの巨大菓子で表現するという。
濱田氏によれば「100人がかりで制作しているのですが、作りながら職人さんたちの思い入れが出てきて、当初の計画より凝ったものになっています」とのことだ。お菓子を味わうと共に、お菓子作りの技術や文化を学べるのも面白い。
見直される和菓子の価値
以前から和菓子は端午の節句やひな祭りといった催事と深く結びついてきたが、最近では生活の中で和菓子と接する機会が減り、少子化の影響もあって業界全体は縮小傾向にある。
とはいえ、ここにきてその価値を見直す動きも出てきている。例えば、観光で日本を訪れた外国人にとっては、味だけではなく和菓子の見た目の美しさや繊細な造りなどが新鮮に映ることも多いようだ。
また、最近では、老舗の「とらや」が若者向けのカフェをオープンしたり、AGF(味の素ゼネラルフーヅ)が日本の軟水に合うコーヒーを提案したりと、「和」と「洋」の垣根が低くなっている状況もある。和菓子の世界も新たな感性が加わることで、少しずつ変貌を遂げつつある。
「これからはいろいろなお菓子の楽しみ方の提案が出てくると思います。昔のような鉄板の需要は減るかもしれませんが、既成概念にとらわれない新たなお菓子ができるのではないかと期待しています」
と、濱田氏は言う。
ちなみに、会場となる三重県営サンアリーナから伊勢神宮へは、専用バスで約15分。ゴールデンウィークの予定がまだ決まっていなければ、菓子博から餅街道、伊勢神宮と、三重県の観光を堪能するプランを検討してみてはいかがだろうか。
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