今回のゲストのイゲット千恵子さんがハワイに移住したのは14年前のことだそうです。幼い子どもを連れての「癒しの旅」が、その後の人生を大きく変えることになりました。なぜハワイに渡ったのか。そしてどんな経緯で起業したのか。じっくりとお聞きしました。
イゲット千恵子氏プロフィール
イゲット千恵子氏がハワイで婚活した理由
佐藤 イゲットさんはハワイを拠点にエステサロンの経営やオーガニック化粧品の通販を行っていますが、なぜ、ハワイに渡ったのですか。
イゲット ハワイで暮らすようになってから14年がたちます。大学時代、ハワイに留学し、長男もハワイで出産していますが、その後離婚、ストレスもあり膠原病を患ってしまいました。医者に行っても治療法はないと言う。それなら温暖なハワイで、療養がてら人生を立て直そうと、3カ月の予定で訪れました。いわゆる癒しの旅です。
私は膠原病からくる関節痛に苦しんでいましたが、ハワイは暖かいうえにストレスからも解放され、とても体調がよくなりました。そこで始めたのが婚活です(笑)。別れた夫は日本人でしたが、私がはっきりものを言う性格で、再婚するにしても日本にはマーケットがない、次は外国人がいい、と思っていました。そこで、現地の友人に紹介を頼んだところ、出会ったのが今の主人です。
佐藤 ご主人は何をされている方ですか?
イゲット ワイキキにある200社を束ねるビジネスアソシエーションの代表を務めています。行政と企業の橋渡し役で、ワイキキの開発やイベント、法整備などに関わっています。言ってみればワイキキ村の村長です。
私は専業主婦として子育てをし、主人を支えていましたが、夫婦でイベントに出席することも多く、いろんなところについていきました。とても勉強になりましたが、そのうちに自分でも何かやりたくなってきました。
佐藤 それで起業したのですか。専業主婦にとっては大きな冒険ですね。
イゲット 実は日本にいる時にはネイルサロンを経営していました。大学卒業後、外資系企業で役員秘書をしていたのですが、手に職をつけようと、カリフォルニアでネイルアートの技術を学び、25歳でマンションの一室でサロンを開業したのです。今から20年前のことです。
日本でオンコロジーを伝道
佐藤 もともとビジネスセンスがあったんですね。
イゲット 昔から社長になりたいなと思っていました。
ハワイで起業したのは5年前ですが、その時思ったのは、どうせなら人の役に立ちたいということでした。私自身、成人性アトピーに長年、苦しんだことがあります。ハワイでのライフスタイルの変化で、ステロイドを使用せずに、オーガニックコスメで肌がきれいになっていきました。そうなると気分もまるで違ってくる。その経験から、美しくなることで人は元気になれる。そういったライフスタイルを提供できないかと考え、敏感肌専門のエステサロンを開きました。
佐藤 経営されているサロンはどんな特徴があるんですか。
イゲット お客さまのアレルギーの原因を探り出し、食事や生活習慣などのライフスタイルを提案し、トラブル肌が改善できると話題になり、世界からお客さまが健康的な美を求めていらしていただいています。同時にオンコロジーエステにも取り組んでいます。
佐藤 オンコロジーですか。あまり聞きなれない言葉ですね。
イゲット 化学療法や放射線治療の副作用による肌の不調に苦しむがん患者はたくさんいらっしゃいます。オンコロジーエステは、アメリカの腫瘍学に基づいた緩和療法のひとつで、患者さんたちのリンパの流れをよくし、スキンケアで肌の不快感を緩和します。タッチセラピー効果の高い、このエステを受けると、みなさん顔が明るくなり、すごく元気になります。今は日本でも普及させようと、帰国すると全国で講演活動を行っています。
イゲット千恵子氏が日本よりハワイでの起業を勧める理由
佐藤 イゲットさんは5年前にハワイで起業し、エステサロンやオーガニックオンラインショッピングなど、いくつもの事業を展開されています。かつては日本でもネイルサロンを開いていたそうですが、日本とハワイのビジネス環境は随分違うのではないですか。
イゲット ハワイというかアメリカのいいところは、社会にいいものなら応援してもらえる、ということです。しかも女性やマイノリティーが優遇されているため、日本よりも女性が起業しやすいと思います。
20年前の日本でネイルサロンを開業した時は、私ではマンションの一室が借りられず、父親の名前を借りて契約しました。でもアメリカでは、事業内容さえ良ければ女性だからといって断られることなんかありません。
ただし、アメリカではいろんな問題が起きます。人種もさまざまですから、自分にとっての常識が相手にとっては常識ではないということもよく起こります。そんな問題をゲームをクリアするように解決していく。これが楽しい。型にとらわれることなく、自分のやり方で仕事ができる。これがアメリカのビジネスの魅力です。
佐藤 外から見ると、日本の物足りないところがよく分かるのではないですか。
イゲット 決断に時間がかかりすぎますね。これは主人もよく言っていることですが、日本企業とビジネスをしてもなかなか決まらないため、結局、よその企業と契約してしまう。スピード感がまるで違います。
もうひとつ残念なのは、日本や日本人にはいいところがたくさんあるのに、アピールが下手なために相手にそれが伝わらないことです。本当にもったいないと思います。
ハワイでの子育てのメリットとは?
佐藤 イゲットさんのような生き方に憧れる女性は多いのではないですか。日本でも起業し、ハワイに渡って素敵な人と結婚。さらには現地でも起業し、幅広くビジネスを展開しながら活躍するなんて格好いい!
イゲット 私自身も若い人たちのお手本になれればいいと思っていますし、アメリカで女性リーダーの育成プログラムを受講するなど、いろんなことを勉強しています。
佐藤 ハワイで国際結婚する日本人も多いそうですが、けっこう離婚率が高いとか(笑)。
イゲット 確かに。夫婦というのはパートナーです。一緒に暮らしていてもお互いの成長スピードが変わってしまうと、相手の変化についていけなくなってしまう。それが理由で離婚する人も多いようです。でも離婚という言葉を使いたくないので、私はメンバーチェンジと呼んでいます(笑)。
佐藤 息子さんはおいくつになりました?
イゲット 16歳です。
佐藤 ハワイでの子育ては大変ではなかったですか。
イゲット ハワイでの子育てをいろんな人に勧めています。ハワイにはいろんな人種が暮らしていますが、全米唯一、人種が仲良く混じり合って暮らしている州です。小さい頃から、この環境で暮らすことが、子どもにとっても大きな財産になります。もちろん英語も身につきます。授業料は高いですが、ここで暮らすことで国際的な人脈を、子どもだけでなく親もつくることができます。素晴らしい環境です。
〜対談を終えて〜
対談を読んでいただければ分かるように、イゲットさんはとてもハキハキした方で、お話しを聞いているだけで気持ちいい。こういう魅力的な女性が国際的に活躍することをうれしく思います。
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