経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

一人一人の思いに合った「最期の時」を大切にする葬儀社を目指して―ティア

ティア社長冨安徳久

創業以来、葬儀業界に革命を起こし続けるティア。コロナ禍の「密」を避けるべく、オンライン葬儀などの新しい形が台頭する中、葬儀の本質とは何かを問い、人の思いの大切さを再度見詰め直し、哀悼と感動のセレモニーを提供し続ける。

ティア社長冨安徳久
ティア社長冨安徳久(とみやす・のりひさ)

 

 新型コロナウイルスの影響は葬儀業界にも影を落としている。

 愛知県名古屋市に本社を置く葬儀会社ティアの冨安社長は「葬儀は、不要不急の外出ではなく、家族との最期の大事なお別れ」と話す。現状、冠婚葬祭という形で一括りにされ、自粛傾向にある葬儀業界に憂いを感じている。

 冠婚葬祭は遠方からも多くの人が集まることから「密」になる可能性が高く、コロナ禍では敬遠されがちだ。しかし、特にお別れに関しては先延ばしできず、「その時」にしか思いを伝えることができない。

 葬儀業界では、オンライン葬儀など新たな形を積極的に売りにしているところもあるが、それが業界の当たり前になることを冨安氏は懸念している。ティアでもオンラインを使った取り組みは以前から行っていたが、あくまでも海外の方向けや体の不自由な人のサポートとして導入していたもの。オンラインを主とする葬儀形態は本質から外れていると考えている。

 ティアでは、感染症防御対策を万全に行ったうえでお別れを伝える場を提供するという指導を行うほか、ほぼ毎日「今日の言葉」として最期のお別れに関するメッセージを配信し、スタッフの意識改革を行っている。

 その結果、業界で売り上げが約2割下がる中、対前年比5%の下落に抑えており、出店ペースも従来の年間7~8店舗を落としていない。とはいえ今まで右肩上がりで推移してきた同社にとっては初の経験である。

 今回のコロナ禍について冨安社長は、「他社との違いを明確にしたブランド力を付け、家族葬や一般葬の希望者から選ばれるようになる良い機会」と前向きに捉えている。

 それとは別に、偲ぶ会やお別れ会などの社葬に関しても、従来さまざまな中間マージンが必要とされていた部分にメスを入れて価格設定を明確にする「プレミアムティア」を本格的に伸ばしていく方針だ。

 現在、独自の会員システム「ティアの会」の会員数も40万人超まで堅調に伸びている。年間1万5千件近くの葬儀に携わり一人一人の思いに合った葬儀を提案し続ける冨安社長の思いは続く。

会社概要
設立 1997年7月
資本金 18億7,300万円(2020年3月現在)
売上高 127億7,977万円(2019年9月期連結)
所在地 愛知県名古屋市北区
従業員数 526人(2020年3月現在)
事業内容 葬儀施行全般や各種法要の請負、葬儀施行後の遺族の相談内容に応じたアフターフォロー、中部、関東、関西に直営、FCで葬儀会館を運営。葬儀ビジネス参入提案とノウハウ提供
https://www.tear.co.jp/