経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

「この4年間は地獄でした。でも起業家魂は尽きません」―花蜜幸伸(出前館ファウンダー)

ゲストは、時代を読む先見力と不屈の起業家魂で世界初のインターネット出前サービス会社(現・出前館)を創業し、現在は岩手県でペットの殺処分ゼロを目指す「ペットの里」運営にかかわる花蜜幸伸さん。金商法違反容疑の有罪判決から3年、事件の真相と激動の半生、現在の姿に迫ります。構成=大澤義幸 photo=川本聖哉(『経済界』2022年1月号より加筆・転載)

花蜜幸伸氏プロフィール

蜜幸伸(出前館ファウンダー)
(はなみつ・こうしん)1969年和歌山県生まれ。91年バイク便会社、99年夢の街創造委員会(現・出前館)を創業。2008年日本元気丸設立。14年犬猫の殺処分の根絶を目指す「ペットの里」設立。16年金融商品取引法違反で起訴、執行猶予付有罪判決。

映画をヒントに世界初のネット出前会社を創業

佐藤 ネット出前サービスが好調です。私も「UberEats」を利用しますが、花蜜さんが「出前館」の前身の夢の街創造委員会を創られたのが、もう22年前! 当時も蕎麦屋や寿司屋の出前の電話注文はありましたが、そんな昔からこのサービスがあったことが驚きです。

花蜜 出前館は時代を先取りしすぎました(笑)。まだネット接続も常時接続が出始めの頃ですし。UberEatsが7年前です。

佐藤 なぜ起業されたのですか?

花蜜 91年にバイク便の会社を始め、時流に乗って従業員100人規模に成長させたのですが、ネットの急速な普及で売り上げが激減し……。

佐藤 出版社もCD―ROMや資料を送るのにバイク便をよく利用していましたが、データ類はメール添付で送れるようになりましたしね。

花蜜 それで僕もネット事業を始めようと、ふと思い出したのが映画「ザ・インターネット」のサンドラ・ブロック演じるヒロインがパソコンでピザを注文するシーンでした。今ネット出前サービスを始めれば世界初になれると、ネット仲間4人で資本金1億円を集めて起業しました。

佐藤 アイデアで終わらず、即行動に移すのは起業家らしいですね。

金商法違反で強力な弁護団結成も有罪に

佐藤 花蜜さんは1度会社を辞め、13年に会社に戻って間もなく金融商品取引法違反容疑で起訴されています。どんな事件だったのですか?

花蜜 僕の後を継いだ中村利江(当時会長)が、社内クーデターで当時の経営陣と対立した時に、彼女を救ったことで会社に特別顧問として戻りました。でも戻ってみると、夢の街創造委員会はただの出前屋になっていた。会社には愛着がありますから、手放してしまった株を買い戻せば外部の立場でも新事業を始めて、会社に貢献できると考えたんです。

佐藤 創業者ですしね。

花蜜 それで株を買い戻していると、売り攻勢を仕掛けてくる勢力があり、防衛買いをしている時に罠にはまりました。結果、全株売却することになり、株価は大暴落。罠を仕掛けてきたのは外資系金融機関の知人と外資系ファンドでした。

佐藤 知人ですか。酷い……。

花蜜 でも本当の悪夢は特別顧問の解任後でした。16年2月7日の朝、金商法違反・相場操縦違反容疑で証券取引等監視委員会の家宅捜索が入ったんです。その後、東京地検特捜部に起訴され、郷原信郎弁護士と弁護団を結成して記者会見も開きました。しかし、18年に懲役3年、罰金2千万円、追徴金1億2928万5500円の4年間の執行猶予付き有罪判決が確定。会社を思って株を買い、儲けるどころか無一文になったのに……。地獄の日々でした。

ピース乾杯プロジェクトとペットの里の活動に全力

佐藤 激動の半生ですね。今後はどういった活動をされるのですか?

花蜜 まず「世界平和」を目指し、「ピース乾杯プロジェクト」を世に広めていきます。今も世界では紛争が起きています。そこで世界平和の機運を高めるために、「乾杯!」の代わりに「ピース!」を共通言語にする運動をしています。さらに、この運動をビジネス化できないかと。

佐藤 さすが起業家魂!!

花蜜 はい。飲料メーカーと交渉し、お酒やお茶、水などにピースマークを付けてもらい、1本当たり2円の協賛金を得る。「世界平和」の商標登録も取り、広島県の酒造と提携して日本酒を製造し発売しています。これも世界平和への資金源です。

佐藤 花蜜さんは岩手県で犬猫の保護施設も運営されていますよね。

花蜜 14年から犬猫の殺処分ゼロに向けた世界最大級の保護施設「ペットの里」を創設し運営しています。代表は、僕が立ち上げた経営者団体「日本元気丸」初代事務局長の田中あゆみ。今は動物病院、キャンプ場、レストランなどもできました。

佐藤 最近は高齢でペットを飼えなくなる家庭が増えています。私の叔母も大人の保護猫を飼っていますが、赤ちゃん猫は元気過ぎて高齢者には手に負えません。

花蜜 そこで保護犬猫が生涯生きていくための保険を作りました。万が一に備えることで高齢者も保護犬猫を飼えるという新しい仕組みです。今、犬猫3万匹の殺処分が行われていますが、ペットを飼っていない高齢者は3千万人いるのですぐにゼロにできます。あとは資金を貯めてスーパー児童養護施設を運営します。

ペットの里
犬猫の殺処分ゼロに向けた世界最大級の保護施設「ペットの里」

佐藤 スーパー児童養護施設?

花蜜 虐待やいじめに遭って学校に行けない、家に帰れない子どもたちを保護し、「ペットの里」に作る養護施設で犬猫の世話をしながら経営を学び、起業家を目指す。起業時の資金は財団から出して取引先も紹介する。上場企業を出すのが夢です。

佐藤 素晴らしい。若い起業家が成功した姿を見せて子どもに夢を与えることは国の活力になります。良いビジネスモデルは後世に残りますし。ぜひ何かご一緒しましょう。

「花蜜さんの不屈の起業家魂は今の若者たちにもきっと届くはずです」(佐藤)