社員の自律的成長を徹底支援　全ての人が真価を発揮する社会へ　WHI Holdings　安斎富太郎

大手企業向けの統合人事システムのリーディングカンパニーであるＷＨＩ Ｈｏｌｄｉｎｇｓ。安斎富太郎ＣＥＯに、自社の先進的な人材施策とコーポレートブランド「人に真価を。」を推進する今後の事業戦略を聞いた。（雑誌『経済界』2022年9月号より）

大企業の３社に１社が利用。誕生以来、根強い人気を誇る

ＷＨＩ Ｈｏｌｄｉｎｇｓ（ＷＨＩ）傘下の事業会社Works Human Intelligenceは、前身企業のＨＲ領域事業を吸収分割する形で２０１９年８月に事業を開始。21年４月より持株会社へ移行した。主力製品は人事・給与業務分野のＥＲＰ市場で国内シェアナンバーワン（※注）の「ＣＯＭＰＡＮＹ」だ。

「約１２００企業グループ、法人数約１万社で利用されていて、社員数３千人以上の国内大企業の３社に１社が利用している計算になります。年間契約継続率も98％を超え、１９９６年に製品提供を開始した時の最初の顧客６社には現在もご利用いただいています」

製品は約25年前、「ノーカスタマイズ・無償バージョンアップ」のコンセプトで、当時日本に存在していなかった大企業向けのパッケージ製品として誕生。大企業のニーズに応えるＨＣＭ（人的資本管理）フルスイートとして評価されてきた。分厚いコミュニティ基盤も支持を集める理由の一つだ。　 

「ユーザーコミッティの会員は約１１００法人・団体、４９００人以上で、全ユーザーの93％に達します。全ユーザーが同一の機能を持つ製品を利用しているからこそ、会員になるメリットも大きいですね。また当社は『日本で最も多く大企業の人事部門と直接パイプを持つ存在』とよく言われます。法制度に関する顧客の声を行政側に伝え、改善を働きかけるなど、行政と大企業をつなぐ存在としても期待されています」

先進的な人材施策を通じて社員の自律的な成長を促す

ＷＨＩは自社の人材施策でも先進的な取り組みを見せる。前提となる環境変化の認識として「はたらく人の価値観の変化」「はたらき方の多様化」「企業の社会的価値創出を重視する傾向」の３つを挙げる。

「かつてに比べ就社意識は薄れ、転職や副業が当たり前になっています。また、平成の30年間で日本の非正規雇用者はほぼ倍増し、在宅ワークも広がりました。企業はより一層、存在意義や社会的価値が問われるようになったと感じています」

これらの変化を踏まえ、社員に対する育成ビジョンとして「社員が成長する環境をつくり、その成長にコミットし、われわれが最も『はたらく』を楽しんでいる」を掲げる。

「社員の成長を促すために『Fair Treatment & Equal Opportunity』という考えを実践しています。成長と成果を公正に還元する仕組みと公平な機会の提供によって、社員一人一人に持ち味を発揮してもらいたいと考えています」

人材育成の具体的な施策としては、社員が自律的にキャリアを考えられるよう、年に２回「Career Discovery Sheet」を作成し、自身の将来像について上長と議論する制度を設けている。

「キャリアを実現してもらうための仕組みとして、社員が手を挙げ、希望の配属先が賛同すれば異動が成立する社内公募制度を既に実施していますが、22年７月からは手挙げ制の昇格プロセスを追加しました。専門職のキャリア制度の刷新だけでなく、自発的に専門能力を高められるように研修・教育機会も拡充しています。社員の自律的キャリア形成を実現するために、会社は徹底的にサポートを行います」

人事データを生かして顧客に最適な提案を実現

ＷＨＩが描く将来像は、コーポレートブランド「人に真価を。」─はたらく人それぞれが真価を発揮できる社会の実現だ。そのための経営方針が「お客様の成長」「社員の成長」「会社の成長」という３つの成長である。

「『お客様の成長』は、企業と社員の双方の視点に立った、新しい付加価値を持った製品・サービスの提供を通じて顧客の成長を支えるというものです。ＣＯＭＰＡＮＹは４５０万人、２３１７件の管理項目を掛け合わせると約１０４億件の人事データを管理しており、このデータを有効活用すると顧客に最適な提案が可能になります。企業や経営者目線だけでなく、経営者と社員双方の視点を踏まえた製品づくりに取り組めば、唯一無二の価値を提供できます」

「社員の成長」では、自律的なキャリア形成に向けた施策を通じて、社員一人一人が持ち味を発揮できるような環境整備に取り組む。そして、「お客様の成長」「社員の成長」の結果として「会社の成長」を実現しようというのである。

「企業の成長も、社員の成長も、はたらく全ての人が真価を発揮できる環境をつくることが重要だと考え、昨年コーポレートブランドを策定しました。はたらく人それぞれが真価を発揮できる社会を目指して、事業戦略を進めていきます」