経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

リーダーが持つ不変的美意識。それがタイムレスエレガンスです 麦野 豪 オフィス麦野

麦野豪

ゲストは、企業のブランドマーケティング事業を手掛けるオフィス麦野会長の麦野豪さん。海外高級時計ブランドの日本進出なども支援しています。時代の顔となるエレガント・オフィサー(リーダー)が持つべき「タイムレスエレガンス」(不変的美意識)のお話を中心に伺いました。聞き手・似顔絵=佐藤有美 構成=大澤義幸 photo=市川文雄(雑誌『経済界』2023年5月号より)

オフィス麦野 麦野 豪氏のプロフィール

麦野豪
麦野 豪 オフィス麦野会長
むぎの・ごう 台湾生まれ。成蹊大学法学部卒業後MBA取得。総合商社勤務を経て、外資系にてブランド事業立ち上げに従事。以後、複数のラグジュアリー・ブランドの経営に携わり、リポジショニングを成功に導く。2019年にオフィス麦野を設立。

「戦わずして勝つ」ブランドマーケ事業を展開

時計

佐藤 麦野さんは、モンブラン、オーデマ・ピゲ、リヤドロなど世界的なラグジュアリー・ブランドの経営者を経て、2019年にオフィス麦野を設立されました。「戦わずして勝つ」をコンセプトにブランドマーケティング事業を展開されています。

麦野 マーケティングの中でも特にリポジショニングを得意としています。「戦わずして勝つ」ことを目的に、当社の専門チームがクライアント企業と一緒に事業領域や対象顧客を見直し、「ナンバーワンまたはオンリーワンになれるポジション」を見つけます。また時代に合ったブランド戦略の再構築や商品・流通・コミュニケーション戦略を実行し、再成長へと導きます。これをグローバルに展開しており、台湾、スイス、シアトル、マレーシアに現地法人を置き、海外ブランドの日本やアジア進出の拠点としています。

佐藤 エベラールなどの高級時計の輸入卸・販売事業も、ブランドのリポジショニングの一環ですか。

麦野 おっしゃるとおりです。スイス製時計老舗のエベラールは創業以来、家族経営を連綿として続け、唯一無二の価値を紡いできました。以前、私が経営に携わっていたオーデマ・ピゲの元営業担当がエベラールの創業135周年を機にグローバル戦略の担当となり、海外ブランド時計の日本やアジア進出に実績のある当社と提携したという経緯です。

佐藤 洗練された素敵な時計ですよね。今年の経済界大賞・特別賞の副賞としてエベラールのトラベルセトロを協賛いただきました。時計を授与された森保一・サッカー日本代表監督も大変喜んでいました。

麦野 エベラールは、戦時中はイタリア海軍で公式時計として採用され、私が尊敬するジャンニ・アニェッリも晩年愛用していました。彼は20世紀のイタリアが生んだ最も偉大な人物とされ、フェラーリの親会社フィアット元会長で、アルファロメオ、マセラッティを傘下に収め一大帝国を築き上げました。またイタリアサッカーチームのオーナーで、ファッション誌『ヴォーグ』にも掲載される存在でした。お金持ち、容姿端麗、おしゃれと三拍子揃ったまさにエレガント・オフィサーです。日本でも彼のような一流のリーダーに付けてもらうために認知を広げています。

佐藤 ストーリーがありますね。

麦野 当社の役割は単に商品を売るだけでなく、ブランドごとにストーリーを組み立ててマーケットでポジショニングを確立することです。今後もさまざまなブランドビジネスで足跡を残していきます。

エレガント・オフィサーをアワードで発掘し世界へ

佐藤有美と麦野豪
佐藤有美と麦野豪氏

佐藤 昨年6月に創設を発表されたエレガント・オフィサーズ・アワードでは、「タイムレスエレガンス」という概念を提唱されています。

麦野 有美社長もアワードの評議員になっていただき、ありがとうございます。タイムレスエレガンスは、働き方が多様化し、服装やマナーなどのビジネスカジュアル化が進む中、時代が変わっても一流のリーダーが持つべき不変的美意識を意味します。アワードはこの概念の次世代への継承と、世界で活躍できる未来のリーダーの発掘を目的に創設しました。

佐藤 武士の時代から独自の文化を育んできた日本人にはもともと高い美意識や精神性があり、現在も脈々と受け継いでいますよね。

麦野 そうですね。「花は桜木、人は武士」と言われるように、庶民が尊敬する武士の「美」を根底に持つ武士道の精神は、現代の日本人の倫理に通じます。特にリーダーは職業的プロフェッショナリズムに加え、ウェルビーイングで、生き方、装い、趣味、所作など全ての「美」が憧憬の対象であるべきです。

佐藤 オフィス麦野の公式YouTubeチャンネルでも、エレガント・オフィサーとの対談動画の配信をスタートされるそうですね。

麦野 多くの方にご視聴いただきたいですね。有美社長が尊敬する日本のリーダーはいますか。

佐藤 私は近代日本の資本主義の基盤を築いた渋沢栄一さんを尊敬しています。現役ではGMOインターネットグループ代表の熊谷正寿さんは一流の経営者で、タイムレスエレガンスを体現する方だと思います。先ほどエレガント・オフィサーの条件の一つにウェルビーイングという言葉が出ましたが、少子高齢社会の日本で毎日を楽しく生き、満足な仕事をするためには心身共に健康で幸せであることも重要ですよね。

麦野 その観点からは、当社はクリニックのリポジショニングも手掛けています。また、「病気ではない人を、いかに病院に通わせることができるか」というプロジェクトを達成するために、医師と一緒に日本ウェルビーイング医学協会も立ち上げました。社会的・精神的・肉体的にウェルビーイングであるためのソリューションや商品を見つけ、医師のエビデンスを元に認証して世の中に提供しています。

佐藤 素晴らしい取り組みですね。今後の展開に期待しています。

麦野豪イラスト
麦野豪氏イラスト