経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

タイムレスエレガンス 〜リーダーの不変的美意識〜 世界に通じるプロトコル デヴィ・スカルノ×麦野 豪

デヴィ夫人

時代が変わっても変わらない、変わってほしくないリーダーのダンディズムとは? オフィス麦野会長の麦野豪が各界の賢者をゲストに迎え、世代を超えて世界で活躍する「エレガントオフィサー」(リーダー)が持つべきタイムレスエレガンスの真髄に迫ります。今回のゲストはデヴィ・スカルノ夫人です。聞き手=麦野 豪、構成=萩原梨湖、Photo=佐藤元樹(雑誌『経済界』2023年7月号より)

デヴィ・スカルノ デヴィーナ・ソサエティ代表取締役のプロフィール

デヴィ夫人
ゲスト
デヴィ・スカルノ デヴィーナ・ソサエティ代表取締役
1940年生まれ、東京都出身。62年、インドネシアのスカルノ初代大統領と結婚。日本人で海外の国家元首の妻となった唯一のファーストレディー。株式会社デヴィーナ・ソサエティ代表取締役を務める。日本では、タレントとしても活躍。

麦野 豪 オフィス麦野会長のプロフィール

Mugino Prof
麦野 豪
むぎの・ごう 1965年生まれ。青山学院大学大学院でMBAを取得、米国トーメン社の駐在を経て、外資系で主にブランド事業立ち上げ及びラグジュアリー・ブランドの経営に携わる。モンブラン、オーデマ ピゲ、リヤドロなどのリポジショニングで功績をあげたのち、オフィス麦野を立ち上げ、国内・海外の企業やブランドの戦略策定や市場拡大をサポート。本連載はオフィス麦野が手掛けるスイス老舗時計ブランド エベラールの協賛によって行われる。

慈善活動を通し世界に目を向ける

―― デヴィ夫人というとバラエティ番組に出演しているタレントという認識をお持ちの方が多いかと思いますが、実は人生のほとんどを世界の社交家、慈善家として生きてこられました。慈善活動の一環として、1月23日にウクライナへ支援物資を直接届けに行かれていましたね。
デヴィ ロシアのウクライナ侵攻が始まった昨年2月から新聞やテレビでその様子を見るたび怒りに震えていました。私がウクライナに行った時期はロシアのミサイルによる電力施設破壊で停電。気温が零下20度を下回っている中、暖房の供給も停止していました。

 個人の力で支援することはできませんが、日本のウクライナ大使館には善意ある日本人からの支援物資が山ほど届いていました。しかし送料が払えず届けることが出来ない状況だったため、私が送料を負担し、コンテナ4つ分の暖房器具や衣料を送ることができました。しかし到着するのは45日後。彼らにとって物資は今すぐに必要なのに、そんなの待てるわけがないと、手荷物で持ち込める最大の量、一人46キロ分をトランクに詰め5人のボランティアの方たちとウクライナへ飛び立ちました。

―― 夫人は2005年にNPO法人アースエイドソサエティというボランティア団体を設立されています。夫人の慈善活動に賛同する一般の方も賛助会員として入ることができるそうです。

デヴィ ウクライナへ物資を送った時の送料も、この団体で集めたお金が一部負担しています。

 もともとこの活動は、才能があるのに恵まれない人を支援するため始めたものです。チャリティにとどまらず、難民、天災による被災者、自然環境破壊、才能ある芸術家の支援、動物虐待防止など幅広く活動しています。スローガンは「戦いを止め赦しあうことで地球に平和を、全ての命あるものに慈しみを、青い海と緑の大地を永遠に」。これに賛同してくださる方の参加を募っています。

―― 日本でもさらにチャリティの文化が根付くといいですね。

デヴィ 常に世界に目を向けてきた私から見ると、日本人はチャリティに対しての認識と意識が、海外に比べて非常に低いです。日本は四面が海に囲まれていて、他国に侵入された経験がないからでしょうか。他国で起きた戦争を対岸の火事くらいにしか思っていない印象があり、それは地球上にいる同じ人間として恥ずかしいことです。

 例えばブルガリは200億円相当の寄付を国連にしており、企業が一つのチャリティ団体になっているんです。これには税金控除の仕組みが働いており、寄付をすると何かしらの方法で還元されます。それも日本とは違いますね。

世界で活躍する人は自分の意見を持ち発信できる

モルドバで物資の配布
モルドバで物資の配布

―― 夫人はまさにノブレス・オブリージュを体現していて、貴族の気品が感じられます。夫人にとってのタイムレスエレガンスとは何ですか。

デヴィ 余裕の裕で「裕雅」、遊ぶの遊で「遊雅」、優しいの優で「優雅」、この3つの“ゆうが”を私の人生のモットーに掲げています。

 心に余裕がなければ他の人を思いやる気持ちは生まれません。でもそれだけではなく、遊び心がちょっとあってもいい。さらに美しいものを見ると人の心は優しくなる。美しいものに憧れる気持ちを持つことも大切です。

 こういった意味を込めた3つの“ゆうが”の究極を「秀雅」と名付けました。これはどんな時代であろうと人間に不可欠な素養であることに変わりありません。

―― どうしたら夫人のように志が高い世界のリーダーになれますか。

デヴィ はっきりと自分の意見を持つこと、それから発信力、行動力を持つことです。自分に自信がないと人と話すのがおっくうになってしまいます。どのような状況でも怖気づくことがないように、まずはいろいろなことに対してのマナーや儀礼、儀典という意味のプロトコルを身に付けていくことが必要です。私が主催するサロン ドゥ ラトナというマナースクールがありますので、自信をつけて世界で活躍したい方はぜひいらしてください。

 対人関係の究極形である外交に関して、夫のスカルノ元大統領はこう言っていました。「本当の民族主義というのは他民族を尊敬することにある」。その気持ちがないと相手に対して無礼や、意思疎通で障害が生じることがあります。

 一流の人間を目指すのであれば、まずはマナーを意識することから始めてみてはいかがでしょうか。