失敗の解決策を見える化　プロパー社員が成長し後輩を育む好循環　メディアクロス　式 啓

２０２３年に創業15年を迎え、東京進出を果たした、福岡に本社を置くホームページ制作会社メディアクロス。式啓代表は、従業員の失敗を分析し、解決策を「見える化」することで、高水準の技術力を堅持、業績を伸ばし続けている。（雑誌『経済界』2023年12月号「企業改革の実践者たち」特集より）

　今年７月、東京・浜松町に新オフィスを開設した。福岡市に本社を置く従業員20人の企業としては英断だった。「もともと関東圏からの問い合わせはよく来ていたが、拠点を構えるだけで東京を中心に問い合わせが格段に増えた。弊社の価格設定は、東京の高品質がウリのウェブ制作会社の相場（４００万円前後～）のほぼ半額。質、アフターフォローともに劣ることはありません」と胸を張る。

　スマホやパソコンで検索した場合に上位に位置するＳＥＯに定評がある同社だが、「自社のＨＰこそが最大の営業力。請け負う場合は私やディレクターが出向いて打ち合わせをしますが、営業担当は必要ありません」という方針が他社とのコストパフォーマンスの差となっている。

　27歳のとき福岡市の隣町のマンションの１室で、仲間２人と個人事業として起業。「当初は従業員教育、技術面のフォローも分からず定着も悪かった。２００８年に法人化して以来、社会保険や給与、職場環境の充実に一貫して取り組んでいます」

　人材育成は永遠の課題。仕事にミスは付きものだが、叱責するだけでなく、なぜミスが生まれたのか。どうすれば防げたかを考え、フォローアップに力を注ぐ。「本人の怠惰は論外ですが、解決方法を『見える化』することが大切。自社開発のオリジナルＥＲＰシステムを駆使し、ディレクターやデザイナー、プログラマー、経営管理など各部門の作業をチャート化して少人数でも対応できるよう工夫しています」と語る。

　「同時に、従業員への愛情は大切ですね」と険しい表情が一変。「毎年１～２人の新入社員を採用していますが、親御さんから預かって大切に育てるという責任を感じています。若手が育ち、プロパーの先輩となった彼らが後輩を指導する好循環が生まれ始めた」と頬を緩ませる。会社負担のランチ会等を通じて従業員との意思疎通も大切にする。

　「日進月歩のウェブ業界。私の指示が朝令暮改と感じることも多々あるでしょうが、15年間、着実に成長を続け企業を維持できたことが従業員への貢献の一つだと思っています」と振り返る。東京進出を機に３００万円から１千万円への増資も果たす。財務基盤強化も怠らない。