ゲストは、バレーボール男子日本代表の西田有志選手(パナソニックパンサーズ所属)。代表チームではエースとして活躍し、パリ五輪出場の切符を手にしました。「物心ついた時にはバレーボールが生活の一部となっていた」と話す西田さん。勝つことにどん欲にこだわる期待のホープと語り合いました。聞き手&似顔絵=佐藤有美 構成=大澤義幸 photo=市川文雄(雑誌『経済界』2024年3月号より)
西田有志 バレーボール男子日本代表のプロフィール
手に入れたパリ五輪の切符。私生活では女子選手と結婚
佐藤 パリ五輪出場おめでとうございます。男子日本代表が5連勝して予選を勝ち抜き、本選出場を決めた瞬間は私も興奮しました。今23歳の西田さんは日本代表では最年少エースとして大活躍でしたね。
西田 ありがとうございます。予選では良いパフォーマンスを持続できました。その前は原因不明の体調不良が続き、監督に外してくれと申し出たり、バレーボールをやめようかと悩んだ時期もありました。それでも起用し続けてくれた監督やチームの期待に応えて、目に見える結果が残せたのは良かったです。
佐藤 男子は世界の強豪国と肩を並べる存在になりましたね。
西田 僕もそう思います。近年は世界の強豪と対戦しても、苦しい状況からでも勝ち切れるので、もっと自信を持つべきだと思います。あとは勝ってうれしいで終わるのではなく、勝つことが当たり前になるよう、もっと練習しなければなりません。
佐藤 努力家ですね。私生活では2022年大晦日に女子日本代表主将の古賀紗理奈さんとのご結婚を発表され、バレーボール界のビッグカップルとして話題になりました。あのタイミングで発表に至ったのは。
西田 結婚して家庭を持つ相手は彼女と決めていましたし、僕が現役中に自分の姿を子どもに見せて、夢を持って生きて欲しい、記憶に残したいと考えたのも理由の一つです。
佐藤 テレビなどでお二人の姿を拝見すると、古賀さんは4歳年上のしっかり者で仲良し夫婦という印象があります。女子のパリ五輪出場は24年に持ち越しとなりましたが、お互いの試合の話もされましたか。
西田 普段は自宅ではバレーボールの話はほとんどしませんが、この時は少しだけしました。僕も女子チームを応援していたので、負けた時は自分のことのように悔しかったですね。ただ女子の試合も盛り上がりましたし、そのプレーを見て勇気をもらった人はたくさんいたはずです。
佐藤 そうですね。西田さんはお兄さんとお姉さんの影響で5歳からバレーボールを始めたそうですね。物心ついた時にはバレーボールが身近にあったという感じでしょうか。
西田 はい。僕は幼い頃から、兄たちの練習の送り迎えの車に同乗したり、いつもバレーボールで遊んでいたので、気づいた時には生活の一部になっていました。
佐藤 小中高と競技を続けてきて、嫌になってやめようと思ったことは。
西田 中学生の頃に部活をサボったこともありますが、これも「生活の一部」になっていたので、バレーボール以外の遊び方を知らなくて結局戻りました。西田家は皆、根っからの負けず嫌いなので、部活では勝つために常にマックスの練習を続けてきました。これはバレーボール以外でも言えることですが、頑張ったら頑張っただけの成果が出ればうれしいですよね。僕は中学の部活では指導する側に回ったり、自ら課題を設定して練習していました。この経験は社会に出て人生設計をする上で役立つだろうとも感じていました。
佐藤 考え方が大人ですね。
西田 実家の教育方針が「18歳になったら社会人。家を出て行け」なので、自分はどう生きるべきかを子どもの頃から考えていましたね。
世界大会を機にプロの道へ勝つことが存在意義になる
佐藤 プロになろうと決意したのは。
西田 高校卒業後に社会人としてジェイテクトSTINGSに入団して世界選手権に出場した時に、僕自身の課題やこれからやるべきことが見えて、もっと強くなりたいと思いました。それで覚悟を決めて新卒入社した会社を半年で辞め、プロ契約を交わしました。ただプロ1年目は結果が出なくて苦しかったですね。
佐藤 それでも2年目以降はⅤリーグ制覇や天皇杯優勝を経験され、新人賞含め各賞を総なめにしました。
西田 失敗も経験しましたが、結果が出たのは良かったですね。プロは自分を追い込む環境を自らマネジメントできます。ただ練習量を増やすだけではなく、課題への取り組みをケガのリスクなども含めて考えます。例えば僕は寒くなると筋肉が硬くなり動かしづらくなるので、試合前はお風呂に浸かって全身を温めています。また疲労をためないためにストレッチも長年続けています。
佐藤 Vリーグでは昨年からパナソニックパンサーズに所属しています。チームが変わって、求められる役割は変わりましたか。
西田 同じです。自分のプレースタイルをチームが認めてくれて今があるので、今シーズンの一番の目標はパナソニックパンサーズでVリーグを優勝すること。僕たちの存在意義は勝つことでしか証明できません。さらにパリ五輪は日本の多くのバレーボール選手が夢見る舞台なので、そこで最高のプレーをしたいですね。そして僕たちの姿を見て、バレーボールが好き、会場に来てくれて試合が面白いと感じてくれる人を増やしたい。応援して良かったと思ってもらえるよう、勝利を届けられるチームにしたいですね。