官公庁向けシステムをはじめ、あらゆる業種のシステム開発や運用、保守に加え、導入コンサルティングまで幅広く事業を行うスリーエス。6年連続で急速な成長を遂げてきた同社は、さらに大きな飛躍を目指すため、組織の土台を固めにかかる。(雑誌『経済界』「攻勢に転じる北海道特集」2024年4月号より)
成長を続けていくためにも地に足の着いた組織力強化へ
「北海道ナンバーワン」を合い言葉に、増収増益を続け、2023年は売り上げ25億円を達成したスリーエス。諏訪原大作社長は「次は見直しの3年」と位置づけ、2024年からの新たな3カ年中期経営計画を立てたという。
「私が社長となってここまでの2期6年間は、急速な拡大成長を続けてきました。しかし、ここからさらに大きくなっていくためには、管理体制の見直しや、賃上げなどの待遇改善や職場環境向上など、組織自体の強化が必要だと感じています。利益が減っても、組織に必要な投資をするべき時。3年間毎年5~6%程度の成長を緩やかに続けて売り上げ30億円を目指し、次の50億円という大きな目標に向かっていくための土台をつくるつもりです」
各業界でDXが加速し、同社が主力分野とする官公庁向けシステムでは自治体情報システムの標準化業務が進む。24年度の下半期から現場での本格的な作業が始まることから、同社では人員確保に余念がない。「当社でも現時点で30人ほど人員を確保していますが、業界の人手不足はますます深刻になると思われるので、所属するアイ・エス・ビーグループの中で連携するべく話を進めています」と諏訪原社長は先手を打つ。
こうした需要の高い分野にはしっかり人員を確保しつつ、新事業に注力して業務の幅を広げ、次なる成長に備えようというのが次の3年の戦略だ。近年はAIなど先端技術を使い、さまざまな社会課題に貢献する研究開発に参加するケースも増えた。例えば大手エンジニアリング企業とは、港湾のコンテナで鮮度保持管理が必要とされる貨物に対する目視管理を、AIで効率化する技術の実証実験を進めている。このプロジェクトは、国土交通省の港湾技術開発制度の採択を受けた。
農業分野では北海道大学大学院やベンチャーとの協働で、超小型衛星の遠隔操作によるリモートセンシング技術も開発中だ。「北海道では半導体関連産業など、注目のプロジェクトが多く動いています。その動きを注視しつつ、人と同じことをしているだけでは競争が激化してみんなが疲弊するだけ。一次産業の研究開発など、北海道ならではの個性的な仕事も各地・各業界で生まれているので、当社は人のやらないことにもチャレンジして、新事業を生み出していきたいです」と諏訪原社長は意気込みを語った。
品質管理の体制を整え内外の連携を生かした事業を
コロナ禍の3年でIT業界は大きく変化を遂げ、リモートワークが普及したことで地方にいても国内はもちろん、世界中の仕事ができる可能性が生まれた。「私たちが札幌で東京や福岡など全国各地の仕事をすることはもちろん、北海道の仕事を違う地域で行うことも増えてきました。これまではアイ・エス・ビーグループ内の連携が中心でしたが、近年は各地の技術あるリモート人材に業務委託することも増えています」と諏訪原社長はビジネスパートナーの広がりに触れた。
現在、ビジネスパートナーは北海道内でも80社ほどに達した。業務と並行してパートナー管理を行うのは管理職の負担が大きくなってきたため、専門部署としてビジネスパートナー室を置くことにした。また、QMS推進室、ISMS推進室も同時に立ち上げ、品質管理体制を強化した。「数年前から組織の若返りを図り、現在は部長クラスがほぼ40代と活気ある組織ができました。全体に数字目標を設けてはいますが、黒字化への意識や、部署間の競争が過度になるのはよくない。彼らには『無理はするな、一度の失敗で評価を下げることはない』と伝え、品質管理の部分は組織としてしっかりフォローできるよう考えています」と諏訪原社長は意図を説明した。
リクルーティングについても、これまでの大卒、専門学校卒に加え、24年からは高専卒の人材採用を進めていく予定だ。ただし、どれだけ新しい人材を獲得しようとも、定着しなければ意味はない。「コンサルティングから開発・導入、その後の保守まで、一貫したサービスができるのが当社の事業の強みであり、職場としての魅力でもあります。さらに、人を大切にする会社であることを伝える組織改革を進めていきたい」と諏訪原社長は思いを語った。
会社概要 設立 1979年4月 資本金 2,000万円 売上高 25億5,500万円(2023年) 本社 北海道札幌市東区 従業員数 140人 事業内容 ITシステム、ソフトウエア開発 https://www.sss-i.co.jp/ |