ゲストは、長久手市長の佐藤有美さん。なんと同姓同名です。初当選から12年間にわたり議会議員として活動してきた佐藤さんは2023年に市民の平均年齢が日本一若い長久手市長となりました。市民目線で市政に取り組む佐藤さんに、市長になるまでの経緯とこれからの抱負を伺いました。聞き手&似顔絵=佐藤有美、構成=大澤義幸 photo=上山太陽(雑誌『経済界』2024年11月号「燦々トーク」より)
33歳で議会議員に初当選。子育てが議員活動のプラスに
経済界佐藤 佐藤市長のことは名古屋の老舗クラブ「なつめ」で知人の経営者からお名前を聞いて興味を持っていました。今日はお会いできてうれしいです。
佐藤市長 ありがとうございます。私も大村秀章・愛知県知事からお名前を伺っていて、「会った方がいい人だよ」と勧められていたので、いつかお会いしたいと思っていました。
経済界佐藤 佐藤市長はもともと損害保険ジャパンで働かれていて、2011年に33歳の若さで長久手町議会議員に初当選されました。自治体の政策に関わる道を選ばれたきっかけは。
佐藤市長 私の長男が小学1年生の時に、学校の空き教室を使った児童クラブ「放課後子ども教室」にいて、そこで出会った障害のある子のお母さんが、「改善した方がいいことを一緒に意見しに行きませんか」と誘ってくださったんですね。それで長久手町役場に行ったのですが何も反映されず、そこで知り合った女性議員の方が、「次の議会の一般質問で取り上げるから観覧に来て」と言ってくれたんです。それが最初に興味を持つきっかけになりました。
経済界佐藤 いくつかの出会いが議員の道に導いた感じですね。
佐藤市長 そうですね。その女性議員の方は3期12年ほど務められていて、4期目に入り後進に引き継いで辞めようと思っていた時だったそうです。政党には属さず、長久手に暮らす一市民として議員活動を長年続けていた方でした。
経済界佐藤 佐藤市長が議員になった時の周りの状況は。
佐藤市長 1年目の時は他に子育て中の議員がいませんでした。当時、私の上の子は小学3年生で、下の子は2歳で保育園に入園したばかりでした。そこで小学校の図書館の状況はこう、トイレがこう汚い、土日に預けられる保育園がない、待機児童を減らすために全小学校に児童クラブを作るべき、給食がこうなるといいなど、自分の子どもやママ友が困っている問題を取り上げました。ネタに困らなかったので、子育て中なのは私にとってメリットでしたね。
経済界佐藤 市民目線で声を届けるのは大事ですよね。佐藤市長も政党に属さず活動されているのが潔くて魅力的でもあるのですが、今後県政や国政に行かれる際は支持政党も必要になるかもしれないですね。
佐藤市長 そうですね。県政や国政は政党政治ですし、市長選もバックアップなしで戦うのは難しかったです。市長選では3人の候補者がいましたが、自民・公明推薦の候補者がいなかったので、市民の1票の積み重ねで当選できました。ただ長久手の国会議員も県議会議員も自民党の方なので、良好な関係を維持したいと思っています。
経済界佐藤 市長に就任されたのが23年9月で、ちょうど1年ですね。議員の頃と比較して、市長になって大きく変わった点は。
佐藤市長 議員は街を良くするためにという提案までしかできませんが、市長になると予算編成して執行する権限があります。施策をダイレクトに実現できるので、責任とやりがいが大きくなりましたね。
市民の平均年齢が日本一若い。長久手市で頼られる存在に
経済界佐藤 長久手市は20年の国勢調査で、平均年齢が40・2歳と日本一若い市になったそうですね。
佐藤市長 はい。若いのは子どもや子育て世代の親が多いということです。6校ある小学校のうち2校は児童数が1千人を超えており、長久手市は人口も増えています。
経済界佐藤 少子高齢社会で多くの地域で人口減少に悩む中、すごいですね。東京の小学校は廃校になるか、合併するか、別の使われ方をするかです。私が子どもの頃に住んでいた杉並区は都内でもファミリー層が多い地域ですが、当時は1学年1クラス40人で8クラスだったのが、今は1クラス20人で2クラスです。長久手市は市民と同世代の女性市長が市政をしているので、子育て中のお母さんたちも親近感がありますし、期待しますよね。
佐藤市長 そうなりたいですね。先日も愛知、岐阜、三重、静岡の96市の市長会がありましたが、女性市長は4人だけで、まだ女性は少ないなと思いました。
経済界佐藤 そこはこれからですよ。私が社長になったのは22年前ですが、最近ようやく女性社長であることを珍しがられることもなくなりました。世の中の若い女性たちも、出産後に仕事を辞めないのが当たり前になりました。
佐藤市長 そうですね。将来的には男女分け隔てなく活躍できる世の中にしていきたいですね。
経済界佐藤 佐藤市長であればできますよ。世の中を変えていくのは若くて経験もあり、気力・体力の充実している40代です。これからの目標も伺えますか。
佐藤市長 私は長久手の一市民目線で、子育てをしながらこうなったらいいな、を形にしています。街の皆が暮らしやすくなったとか、街が良くなったと感じてもらえたらうれしい。毎月の応報も、子育て世代や高齢者、障害のある方に対して、知りたいことをダイレクトに伝わる形にしていきます。議員時代はたくさんの人たちが若い自分を応援してくれました。何かを成し遂げられるのは限られた期間だけなので、これからの10年間が人生の勝負だと思っています。