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乳がん定期検診の大切さを歌とライブ配信で伝える LiLu

LiLu

ピンクリボンフェスティバル2024(日本対がん協会、朝日新聞社など主催)が乳がん啓発期間の10月を中心に開かれている。今年で22回目だ。乳がんをきっかけに歌手になったLiLuさんは、ライブ活動のほか、ライブ配信、2024年7月には初めて作詞作曲した曲をリリース。ピンクリボンイベントなどで定期検診の大切さを広めている。聞き手=榎本正義(雑誌『経済界』2024年12月号より

LiLu 歌手、配信ライバーのプロフィール

LiLu
LiLu(リル) 歌手、配信ライバー
神奈川県出身。青山学院大学文学部卒業。アナウンサーを志望していたが、進路を変更し、企業に就職。体調を崩し退職後、長年事務職を務めるも、乳がん治療後の復職が難航し退職。現在、歌手・配信ライバーとして活躍しながら、ピンクリボンアドバイザーとして定期検診の大切さを発信している。

乳がんをきっかけにシンガーに転身

―― 10月は乳がん啓発ピンクリボン月間で、今年はリアルイベントもいろいろ行われています。ピンクリボンフェスティバルでは、乳がんで命を落とす方を一人でも減らせるよう、乳がん検診受診率の向上を目指し、患者さんを支える活動が展開されています。ご自分も乳がんをきっかけにシンガーになったLiLuさんは、いつどのようにして発見したのですか。

LiLu 姉が炎症性の病気になった時から乳がん検診を受けるようになっていたので、私も10年ほど前から乳がん検診を受けるようになりました。2014年にマンモグラフィ(乳腺X線検査)を受けたところ、石灰化が見つかり、経過観察で定期的な検診を勧められました。はじめは真面目に検診を受けていましたが、ほとんどのしこりは良性の場合が多いと聞いていた通り、しこりが気になる時も毎回良性だったので、だんだんと検診をさぼりがちになっていました。その後に起こったコロナ禍で病院に行くのもちょっと怖いので、検診を半年先延ばしにしてしまいました。ところが21年6月にセルフチェックをしたところ乳房に違和感があり、7月に病院を受診した際に乳がんと分かりました。

―― どのような治療法を行ったのですか。

LiLu 私の場合はがんの範囲が広かったので、左乳房全摘手術、抗がん剤治療を行い、現在はホルモン療法を継続中です。療養休職後に復職するつもりでしたが、退職を余儀なくされました。

―― 現在はどのような活動をしていますか。

LiLu 22年に友人から歌の配信を勧められ、スマートフォンアプリPocochaでライブ配信をスタートし、ライバー(ライブ配信者)として活動しています。

―― Pocochaはライバーとリスナーによる双方向コミュニケーションで、一緒に配信を盛り上げるライブコミュニケーションですね。

LiLu ライブ配信の中では、勇気を出して乳がんを告白しました。自らの体験を通じて定期検診の大切さを広めています。また、東京・銀座のライブバー「バーブラ」で月2回ライブ出演させていただいています。歌の分野は、邦楽洋楽ポップス、ジャズ、昭和歌謡などです。この他、ピンクリボンアドバイザー初級・中級の資格を取得していますので、がんや病気のシンポジウム、トークセッションに経験者として参加させていただいています。イベントのお手伝いの例としては、講演会の前座として歌い場内のムードを明るくする。表彰セレモニーの最後に歌唱し来場者に楽しい印象でお帰りいただく。社内研修後のレクリエーションや懇親会・パーティーの余興に歌のショーを行う、といったものです。

日本人女性は9人に1人が生涯で乳がんに罹患する

LiLu ソラの約束
LiLu ソラの約束

―― 国立がん研究センター「がん情報サービス」によると、日本では毎年9万人以上が新たに乳がんに罹患しており、日本人女性が罹るがんの中でもトップです。さらに年々増加傾向にあり、現在の累積がん罹患リスクは11・2%。9人に1人が生涯で乳がんに罹患する計算になります。40歳以上になると乳がんのリスクが上がるということから、2年に一度はマンモグラフィ検診を受けることが推奨されていますね。

LiLu 日本人女性の場合、30歳代から増え始め、40~60歳代が罹患のピークですが、その他のがんと比べて比較的若い世代で多いのが特徴で、稀に男性でもかかることがあります。

―― 乳がんは、早期に発見すれば90%以上の方が治る病気です。乳がんに気付くきっかけは、32%が乳がん検診ですが、68%はブレストチェックで自ら見つけた、というデータもあります。

LiLu 私の主治医は、胸に対する自分の意識を高めましょうと、「ブレスト・アウェアネス」を提唱しています。健康なときの自分の胸の状態を、生理前、生理中、生理後どのように張っているかとか、しこりがない状態を知っておくことが大切、と。定期的に自分の胸をチェックすることによって異常を見つけやすくする。そして何か異常を感じたらすぐに医療機関を受診すること。内臓は上から触ってもなかなか自分では異変に気付きませんが、乳房は触って自分で変化に気付くので、日ごろから意識を高めて、自分の身を守ることが大事です。若い方ほど進行も早いので、より気を付けていただきたいと思います。

―― 先日行われたバーブラのライブでは、ステージの最後に歌ったバラード版の「アンパンマンのマーチ」が印象的でした。これはテレビアニメ「それいけ!アンパンマン」のオープニング主題歌ですね。

LiLu 「そうだ うれしいんだ 生きるよろこび たとえ『胸の傷』がいたんでも」という歌詞が自らの乳がん体験と重なり、「アンパンマンのマーチ」をバラードアレンジで歌わせていただいています。

―― 24年7月には、初めて作詞作曲した曲をリリースしました。

LiLu 7月にリリースした「ソラの約束」は、オーケストラ風の伴奏が付いていますが、9月下旬にはこの曲のピアノ伴奏バージョンなどもリリースしました。オーケストラバージョンは、歌い方を力強い感じにしており、いろいろな楽器が入ることで皆さんを元気づけるようなイメージにしています。ピアノバージョンの方は、ちょっと疲れている方に寄り添うような癒しになるようにと、歌い方にも変化を付けています。

 多くの方に歌を届けるとともに、定期検診の大切さを広め、がんで悲しむ人を減らしたいです。また、ライバーという仕事に対する認知を広め、ライバーの社会的な地位の向上にも努めていきたいと思っています。