1959年に設立された米国アムウェイ。健康や美容分野の自社開発製品の直接販売で成長し、現在では世界100以上の国と地域に事業展開する世界売り上げナンバーワンのダイレクトセリング企業の地位を確立している。翻って日本では2022年に登録販売員の勧誘行為に対して行政処分を受けたが、コンプライアンス体制を整備し、消費者志向経営を強化。24年9月にCEOに就任したマイケル・ネルソン氏が、その取り組みとグローバル戦略について語る。文=大澤義幸 写真=市川文雄(雑誌『経済界』2025年9月号より)
アムウェイCEO マイケル・ネルソンのプロフィール

Michael Nelson──1989年米国アムウェイにインターンとして入社。戦略、サプライチェーン、人事、テクノロジーなどの責任者として活躍。COO兼CPOを経て2024年9月より現職。ミシガン州立大学ビジネス・サプライチェーン・マネジメント学士、アクイナス大学経営学修士。地域の経済クラブや商工会議所理事なども務める。趣味はマラソン。
日本での行政処分を機に消費者志向の体制を再徹底
1959年にジェイ・ヴァンアンデルとリッチ・デヴォスによって米国ミシガン州エイダで設立されたアムウェイ。ファイトケミカルスと呼ばれる植物の力を生かし自社開発した自然由来の「ニュートリライト」(栄養補助食品)、「アーティストリー」(化粧品)、また「イースプリング」(浄水器)などをABO(アムウェイビジネスオーナー:登録販売員)が消費者に直接販売するビジネスモデルで成長。現在では全世界で74億ドル(2024年)を売り上げる業界ナンバーワンのダイレクトセリング企業の地位を確立している。
1979年には日本アムウェイの営業を開始。「日本には良質な原材料や製品、洗練されたデザインを求める成熟した消費者がいます。日本市場のニーズは、私たちがグローバル展開する際の高品質な製品開発の基準となるもので、重要な拠点と言えます」とCEOのマイケル・ネルソン氏は認識する。
ところがその日本で2022年にABOの違法な勧誘行為が発覚。消費者庁から特定商取引法に基づく同社初の行政処分が下され、一部業務停止に追い込まれてしまう。この行政処分について次のように語る。
「あの一件は心が痛みました。アムウェイの創業時からの価値観は、『誠実であること。そして信頼される存在であること』です。これまで日本の法律を順守しながら事業を行い、100%現金返済保証制度、ABOの教育や行動モニタリングなど消費者保護に努めてきました。実際に大半のABOは誠実な活動をしてきています」
消費者庁からの指摘を受け、顧客の希望する会員種別に応じて勧誘目的を明記した「アムウェイご紹介カード」のURLをメール等で送り、顧客の同意を得る形とした。また交付が必要な概要書面は、ABOを介してではなく、会社から送付するようにした。
「これを教訓にABOの意識改革や行動変容を促す啓蒙やコンプライアンス教育を導入しました。私たちの社会的責任として、消費者志向を一層徹底する体制を整えています」
インターンからCEOへ 会社のDNAを体現する存在に
ネルソン氏は1989年に米国アムウェイにインターンとして入社。創業ファミリーと共に仕事をするうちに、その理念や価値観、ABOとのパートナーシップ、製品開発等に共感し、同社を唯一無二の存在と認識するようになる。その後、サプライチェーン、製品開発、経営戦略、テクノロジー、人事といった事業リーダーを任されて成果を上げてきた。その経験を通して特に感銘を受けたのがABOとの対話だったという。
「私たちの重要な価値観の一つがパートナーシップです。ABOがどのようにアムウェイに登録してビジネスをスタートし、成功を積み重ね、コミュニティを形成してきたのか。そしてアムウェイの製品が彼らの人生にどんな影響を及ぼし、コミュニティでどう相互に助け合う関係を築いているのか。そのストーリーを聞くことが私はうれしいし、ここで長く働く動機付けになっています」
第一世代の創業家、また第二世代の会長・社長らと共に過ごしてきたネルソン氏は、「周りの方を助け、周りの方がより向上することによってあなたの成功がある」という言葉や、「You First,Me Second」という価値観を自身の哲学としてきた。同社のDNAを体現する人物であり、2024年にCEOに抜擢された瞬間をこう振り返る。
「驚きましたが、すぐにワクワクした気持ちになりました。周りに素晴らしい従業員やABOがいて、良いインスピレーションをもらえるからです。CEOという役割を謙虚に受け止め、光栄に思っています。数多くの事業リーダーの経験から得た広い視野を経営に生かしていきます」
人々のよりよい健康に寄与するグローバル企業で在り続ける
グローバル企業にとって、昨今は原材料や原油の高騰、為替変動、関税問題など、変化が激しく先の読めない事業環境がある。
そうした状況下でも同社は長年の研究開発の蓄積に裏打ちされた、人々の健康寿命の延伸にフォーカスしたヘルス&ウェルネス戦略を打ち出し、新製品開発に取り組んでいる。
「単に寿命を延ばすのではなく、健康かつ活動的な状態でいかに長く生きられるかという、生活習慣病の予防に重きを置いた製品開発をしています。強みである植物の力に着目したサプリメントや化粧品、有機農場でのサステナブルな農法、最近ではマイクロバイオームという腸内の微生物による健康(腸活)に着目した製品の開発にも力を入れています。同時にAIを活用した生産開発プロセスの最適化も図っています」
65歳以上の人口比率が上がり続ける日本でも、病気の予防や個人の健康管理のニーズは日々高まっている。
「アムウェイの理念や価値観が不変のDNAとしてある一方、時代や市場のニーズに合わせて戦略や製品は変えていかなければなりません。新製品の開発を積極的に進めながら、その製品や情報をパーソナライズし、さまざまなソリューションとして提供していく。そして世界各地のABOを中心としたコミュニティで、人々がお互いの健康を助け合う機会を創出していきます。私たちはこれからも健康に貢献し業界を牽引する企業で在り続けます」
PR お問い合わせ先:日本アムウェイ合同会社 https://www.amway.co.jp

