媒体資料
経営者コミュニティ「経済界倶楽部」

「大手の一角」をうかがう 松田佳紀・ヤマダ・エスバイエルホーム社長の挑戦

ニュースレポート

家電量販店最大手のヤマダ電機が、ハウスメーカーの老舗エス・バイ・エルを買収し、住宅事業を拡大している。今年6月にヤマダ・エスバイエルホームとして新たなスタートを切った。松田佳紀氏は、今後、同社をどう牽引していくのか。 (本誌編集委員/榎本正義)

家電からヤマダ・エスバイエルホームのトップに転身した松田佳紀氏

松田佳紀・ヤマダ・エスバイエルホーム社長

松田佳紀・ヤマダ・エスバイエルホーム社長

 住宅市場が活況を呈している。国土交通省が発表した9月の新設住宅着工件数は、前年同期比19・4%増の8万8539戸と13カ月連続プラスだった。2012年は88万2797万戸。13年は年率換算で90万戸台のペースで進んでおり、4年連続で前年を上回るのは確実な情勢となった。住宅ローン金利や住宅価格の先高観に、14年4月の消費増税前の駆け込み需要も加わったためだ。

 そんな中でこの5月、「家電を売らせたらこの男の右に出る者はいない」と言われた業界のすご腕が、エス・バイ・エル(現ヤマダ・エスバイエルホーム)の社長に就任した。同社はヤマダ電機が11年に買収した木質プレハブ中堅の住宅メーカー。家電から一転して住宅メーカーのトップに立つことになった。

 「家電と住宅は、実は親和性があります。冷蔵庫やエアコンなど家電をたくさん販売する人は、家のこともよく知っています。私は上新電機時代に店長を2店舗経験しましたが、婚礼とか新築へのまとめ売りを得意にしていました。住宅のことも勉強していましたから、異業種ではありますが、違和感はありません」

 松田佳紀氏は和歌山北高校を卒業後、上新電機に入社するとすぐに頭角を現し、19歳で商品バイヤー、30代で地域マネジャーを務め、一気に出世階段を駆け上がり、営業部長や広告宣伝部長を務めた。その後、ヤマダ電機のグループ会社としてぷれっそホールディングス、マツヤデンキの代表取締役社長、サトームセン、星電社の代表取締役を務めていた。

 昨年、ヤマダ電機の山田昇会長(当時)に請われてヤマダ本体に入社し、6月に副社長に就任。その後、「エス・バイ・エルに行って見てきてくれ」と山田氏に託され、大阪に舞い戻ることになった。

 ヤマダ・エスバイエルホームは創業から63年目の老舗。創業者の小堀林衛は竹中工務店の出身で、三成建築工業を興した。同社は後に小堀住研へと社名変更をし、東証1部上場企業となり、エス・バイ・エルへと変遷の後、ヤマダ電機傘下となった。

 ピークの1997年3月期に1806億円だった売上高は、13年2月期には398億円まで減少。デザイン性や耐久性に優れた商品力に定評があった同社だが、低価格帯の戸建て住宅に参入後、安価なイメージが先行したため、業績低迷期が続いていた。

培っていた財産が引き出しに眠ると語る松田佳紀氏

 「まずは今期560億円を目指していましたが、着工が半期くらい後ろにずれ535億円になります。とはいえ、現在の契約残からすると、順調な推移を示しています。ヤマダ電機の知名度・信頼力などを最大限生かして挽回を目指していきます。具体的には、創業以来得意とする中高級価格帯と低価格帯の2つで展開していきます。オンリーワンの本格注文住宅『小堀の住まい』、和のデザインカテゴリーを提唱する『MINCA.』などの路線と、都市型3階建住宅『ヴィレンツ』、中高級商品の『E-シェリエ』、コストパフォーマンスに優れた1次取得者向けの『eスマイル・プラス』、さらにスマート収納を取り入れた『eスマイル・プラス αスタイル』、完全企画型の期間限定商品『eスマイル ファースト』など、カテゴリーを広げています」

 さらにその先に松田氏は、

 「17年2月期に、1千億円の売り上げを目指しています。これを達成するために、団塊ジュニア世代など戸建てに固執しない層を取り込もうと、マンションなども含めた住まい方の変化を見据えた展開も視野に入れています」

 新生ヤマダ・エスバイエルホームとなって松田氏が重点的に取り組んでいるのが、人材育成と社内の活性化だ。業績低迷で沈滞した士気を再び盛り上げることが、何より大きな課題と考えているからである。

 ローン計算や間取り提案ができるタブレット端末を開発し、今年の新卒社員を対象に研修を行った。評価制度を見直し奨励制度を改定し、優秀な社員の流失を防ぐ。月3回のノー残業デーや、出社後12時間以内に帰宅することを義務付ける制度も設けた。グループ間のコラボレーションも強力に推し進める。

 ヤマダ電機の全国の主要な164店舗に住まいの専用ブース「トータルスマニティライフコーナー」を設置した。ヤマダ電機が全国3千万世帯に配布しているチラシも活用し、各地域の分譲地を掲載することで販売につなげるという。

 「ファンド傘下のときに優良な遊休不動産物件を売却してしまいましたが、幸い茨城県つくば市と山口県山口市に工場が残っています。このインフラで1千億円まで対応できる。『小堀の住まい設計工房』に代表される設計力もあります。これまでに培った財産が眠っている引き出しから掘り起こしてくれば、まだチャンスはあると思っています」

 18歳で始めた家電販売。今度は「家を売らせたらこの男の右に出る者はいない」との決意を胸に秘める松田氏だ。

 
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan
 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界ウェブトップへ戻る