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地盤沈下の連合は 復活できるのか

ニュースレポート

 連合は10月の定期大会で古賀伸明会長(61歳)の3期目の続投を承認した。しかし、政府主導で頭越しに進む企業との賃金引き上げ交渉や組織率の低下などで、その存在感は徐々に薄れてきている。

首相から異例の賃上げ要求

3選を決めた古賀伸明会長

3選を決めた古賀伸明会長

 民主党最大の支持母体の連合の古賀会長は、7月の参院選で腰を痛めて指揮を執れず、結果として民主党は惨敗。責任を取って退任も予想されたが、「人材不足。誰がやっても同じ」(連合幹部)との理由もあり続投が決まった。しかし、連合の錦の御旗である「賃上げ」要求の役割を安倍晋三首相に奪われ、早くも試練に立たされている。

 「賃金の話はしなかった」。9月20日に首相官邸で開かれた「政労使協議」に出席した古賀会長は記者団にこう述べ、安倍首相が賃上げに言及したことに不快感を示した。この政労使協議は、消費増税で消費が冷え込むことを懸念した安倍首相が音頭を取ったもの。しかし、賃上げ要求は労組がやるもの、政治がやることではない、というのが本音だ。

 それでも政労使協議に応じたのは、民主党の凋落ぶりがはなはだしいからだ。民主党は参院選、都議選で惨敗、党内のゴタゴタも続く。「労組が望む政策や制度を実現させるためには自公政権に接近せざるを得ない」(連合幹部)という事情がある。

 連合の定期大会で、電力総連出身の南雲弘行事務局長が金属労協(JCM)傘下の神津里季生基幹労連委員長(57歳)に交代した。東電労組出身の南雲氏は福島第一原発事故の影響で活動が困難になった。

 神津里氏は新日鉄労組出身で政策通として評価されている。日本商工会議所会頭に就任した三村明夫・新日鉄住金相談役とのパイプも太い。

 今年の春闘も、安倍首相が経団連など経済3団体のトップ会談で異例の賃金アップを求めた。デフレ脱却を掲げ、金融緩和や財政出動など大胆な経済政策「アベノミクス」を打ち出した安倍政権にとって、賃金が増えないまま物価だけが上昇すれば、この夏の参院選が戦えないと判断したのだろう。

 これに呼応する形でコンビニエンスストア大手のローソンが2月に早々と中堅社員を対象に2013年度から年収を約3%引き上げると発表。セブン&アイ・ホールディングスもベアを実施すると表明。3月13日の大手企業の集中回答日ではトヨタ自動車やホンダなど一時金の満額回答が相次いだ。

 ただ、今年の場合、交渉半ばでの要請だったが、今回は労組の要求が出る前の要請である。連合とすれば立つ瀬がない。

 自民党の高村正彦副総裁は9月26日に開いた経団連との会合で、復興特別法人税を1年前倒しで廃止することを念頭に「その分が賃上げに回るという道筋が見えないと国民の理解を得ることが難しい」と米倉弘昌会長に要請した。これに対し米倉氏は前向きに検討するとし、政府主導による「官製春闘」がスタートした。

 「ベースアップ(ベア)も有力な選択肢の1つ」。10月17日に官邸で開かれた2回目の政労使協議に出席した企業トップから、「ベア」容認とも取れる発言が飛び出した。これまでトヨタ自動車やホンダ、日立製作所などの大企業は「業績の上向きは一時金で報いる」と一貫して主張してきた。来春闘では久々の「ベア確保」という文字が躍るかもしれない。

 消費税が上がると、肝心の内需が増えないという懸念が生じる。日本全体の賃金コストは約250兆円。1%の賃上げで約2兆5千億円の所得増加が期待できる。労働人口が減少している現在、賃金が上がらなければ消費が減るのは当たり前の話である。

 日本の失業率もリーマンショック以前の水準に戻りつつある。円安に転じた現在、内部留保がある企業は従業員の士気を高めるためにも下がり続けてきた賃金を反転させるべきだという空気が生まれている。

 しかし、円安・株高の恩恵を受ける大企業と中・小との年収格差はさらに拡大しているのが実態だ。大企業は国際競争力維持のため国内の下請け企業への発注価格引き下げ圧力を強め、これがひいては中小企業で働く労働者の人件費抑制圧力となって跳ね返っている。

存在そのものが否定される危機

 09年の10月8日、連合の第11回定期大会で会長に就任した古賀氏。民主党政権の平野博文官房長官と同じ松下電器産業労組出身で、平野氏以外にも川端達夫文部科学相、直嶋正行経済産業相、赤松広隆農林水産相、仙谷由人行政刷新会議担当相ら7人の連合組織内議員を輩出しており、当時は得意の絶頂だった。

 連合は一時期、800万人組合員を擁し当時の総労働組合員1200万人の3分の2を占めたことがあるが、今では680万人にとどまっている。古賀氏は3選後の会見で「反転攻勢する道筋をつけることが私の役割だ」と抱負を語ったが、流通・サービス産業を中心にパート・アルバイト、派遣、契約社員など非正規社員が増加。連合の役割は低下している。

 組織率低下に悩む連合はパート社員を労組に取り込むために非正規労働者の組織化を進めてきたが、わが国には「同一労働価値労働・同一賃金」の原則はなく、同じ仕事をしても所属する企業、そして正社員と非正規社員とでは待遇に大きな格差があるのが現実だ。

 「賃金交渉は労使の専権事項」と古賀氏は言うが、経営側は「首相の要請に応えないわけにはいかなくなった」と連合の頭越しに賃上げに動いている。連合としても「賃上げするな」ということは口が裂けても言えず、まさに存在そのものが否定される危機にあるのだ。

 今や非正規労働者は全労働者の4割弱を占めるようになった。非正規労働者や労働者の約7割を占める中小企業労働者の待遇改善をないがしろにしてきた「正社員クラブ」のツケは大きいと言わざるを得ない。

(ジャーナリスト/中島恵介)

 
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