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榊原経団連 新副会長人事の舞台裏

ニュースレポート

経団連の新体制が決まった。榊原定征次期会長を支える新任の副会長は、毎度おなじみの〝経団連銘柄〟が揃ったが、最終的な人選が決定するまでには紆余曲折があった。 (ジャーナリスト/梨元勇俊)

出来レースだった日立のトップ人事

榊原定征・経団連会長

榊原定征・経団連会長

 経団連の副会長の任期は2期4年。任期を満了した者から毎年3〜4人が退任し、新たな副会長を起用するしくみだ。化学、自動車、電機などの製造業や金融、通信、運輸、流通など各業界を代表する企業が選ばれている。副会長は分担して税や社会保障などの重要政策委員会をはじめ欧州やアジアなど海外の地域別委員会などの長を務める。国内外の首脳や経済界のトップとパイプが築けるため、自社のビジネス上で受ける恩恵も少なくない。

 今年6月3日の経団連定時総会では日立製作所の川村隆会長、コマツの坂根正弘相談役、NTTの三浦惺会長と、経団連事務局の中村芳夫事務総長の4人が副会長を退く。

 このうち中村氏は奥田碩氏、御手洗冨士夫氏など歴代の経団連会長の信頼が厚く、政治委員長として永田町との折衝の陣頭に立ち、2020年東京五輪の招致費用集めにも奔走してきた。だが06年から事務総長を務め、副会長兼務も4年を迎えるため、事務局人事が停滞することの弊害も指摘されていた。事務局出身の中村氏が退くことで、新任副会長の企業枠は現在の3からひとつ増える。

 1月8日、東京都内の日立製作所本社で、指名委員会が招集された。同社は取締役会の中に社外取締役が過半数を占める委員会を設置して経営を監視する「委員会設置会社」制をとっている。海外在住の社外役員はオンライン画面で参加し、国内の会議室には川村会長のほか、元労働省女性局長の太田芳枝氏、元日本弁護士連合会会長の本林徹氏、元経済産業省事務次官の望月晴文氏、東レ会長の榊原定征氏らが集まった。

 この席で川村氏は4月1日付けで東原敏昭専務が社長兼COOに昇格、中西宏明社長を会長兼CEOとし、自身は3月末で相談役へ退く人事案を提案した。

 メンバーのひとりは驚いた。川村氏は昨年6月、「あと1年は会長を続ける。後任には東原氏を含む3人の候補を考えている。指名委員会各位は社長候補の3人をよく見ていてほしい」と要請していたからだ。

 川村氏の提案に榊原氏が間髪入れずに「それは良い考えだ。日立がグローバル競争に勝ち抜くには経営陣の若返りを図らなくてはならない」と賛意を表明。ほかの社外取締役も同調せざるを得なかったという。

038_20140318_03 指名委員会の同意を得た日立は同日午後、東京・お茶の水の同社ビルでトップ交代を発表。会見で川村氏は「私の経団連の活動は副会長職の任期が終わる今度の総会をもって終わりとしたい」と晴れ晴れと語り、翌9日に経団連は次期会長に榊原氏が内定したと発表した。前述の社外役員は「今から思い起こすと、指名委員会での川村氏と榊原氏の発言はあうんの呼吸だった。出来レースでしたね」と振り返る。

 関係者によれば、昨年末に米倉弘昌会長から次期会長就任を打診された榊原氏は態度を保留し、年明け後の1月3日に受諾した。榊原氏の意向を確認した川村氏は日立のトップ交代発表を急いだ。川村氏は経団連会長の最有力候補で、昨年夏から米倉氏が再三就任を要請していた。高齢を理由に就任を何度も拒絶した川村氏だが、難航する会長人事を見かねてか昨年末には庄山悦彦相談役など同社関係者が「ほかに会長候補者がいなければ日立が引き受けざるを得ないだろう」と漏らしていた矢先だ。川村氏は一刻も早く次期会長候補のくびきを外したかったに違いない。

 同じ会見で川村氏は「日立にとって財界活動は非常に大事。その大部分は(中西)新会長にやってもらう」と発言した。これで新任4人の副会長のうち、1枠はすんなり日立の中西社長に決まった。

複数の候補が挙がり 最後の1枠は難航

 NTTからの起用も規定路線。榊原次期会長は現在、日立の社外役員を務め、同様にNTTの社外役員も務めている。1月上旬、榊原氏の会長内定報道に接した三浦は「素晴らしい方だ」と榊原氏を持ち上げており、自社の業務内容に精通した同氏を支えるため、引き続きNTTから副会長を出すことに依存はなかったようだ。2枠目は鵜浦博夫・NTT社長に決まった。

 残りは2枠だが、米倉会長は「会長、副会長会社は経団連の活動に熱心な企業」と公言しており、日立やNTTと同様、退任する副会長会社3社から後任を出すのが自然だ。ただコマツの坂根氏の後任として副会長就任が有力視された野路國夫会長は昨年4月に経済同友会の副代表幹事に就任したばかりで「さすがに引き抜くわけにはいくまい」というのが大方の見方だった。

 そこへ「エネルギー業界は入れておかないと」という声が上がった。1枠は副会長と同様に、6月に審議員会議長の任期が満了して退任する渡文明・JXホールディングス相談役の後任として、木村康・同社会長を起用することで落ち着いた。

 難航したのは最後の1枠だ。事務局が作成した素案と、副会長の人事権を持つ米倉会長の意向が対立した。複数の候補が俎上に上がり検討されたが、最後に「銀行や保険業界代表の副会長はいるが、証券業界出身者がいない」という理由で野村証券の古賀信行会長が抜擢された。

 新任副会長の人選は榊原次期会長のほか、2月上旬には豊田章一郎・トヨタ自動車名誉会長、今井敬・新日鉄住金名誉会長、奥田碩・トヨタ自動車相談役、御手洗冨士夫・キヤノン会長兼社長に報告され、それぞれ内諾を得た。榊原新体制を支える副会長は新旧合わせて18人。彼らが日本経済再生を担うことになる。

 
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