大学在学中にABABAを創業、経済界が主催するビジネスコンテスト金の卵発掘プロジェクトで審査員特別賞を受賞した久保駿貴さん。2023年には史上最年少で経団連に入会した彼に、今の雇用環境の課題、そして世代を超えたリアルなコミュニケーションと未来への熱い思いを伺います。構成=佐藤元樹 photo=横溝 敦(雑誌『経済界』2026年2月号より)
久保駿貴 ABABAのプロフィール
くぼ・しゅんき 1997年、兵庫県出身。岡山大学理学部在学中に、ABABAを創業。ABABAは現在、約3千社の企業と累計約13万人の就活生が利用するサービスに成長。2024年3月、史上最年少で経団連に入会。
挫折を救うビジネスと長期化する就活戦線
佐藤 久保さんと初めてお会いしたのは大阪のコワーキングスペースにいる時でしたね。あれからもう何年になりますか。
久保 創業が、今月(2025年10月取材時)で5年目になるので、その頃ですね。その時、僕はまだ学生でした。
大阪で経済界さんが主催している『金の卵発掘プロジェクト(現経済界Golden Pitch)』のご案内をいただいて、出させていただいたのが始まりです。
佐藤 創業のきっかけについて、改めてお聞きしてもよろしいですか。
久保 ABABAは、就職活動の最終面接まで進んだ学生に対し、お見送りになった場合でも、その頑張りを評価した企業からスカウトが届くサービスを提供しています。
事業の着想は僕の親友が就職活動の時にうつ病になってしまいまして。これだけ頑張って就活していたのに、また一からやり直しだよ、というところでドーンと落ち込んでしまった。当時、彼が「アババババ」って言ったのが社名になりました。
佐藤 今の就活って、人口が減少していて、若い人たちが圧倒的に減っていますよね。私には、むしろ若ければどこでも入りやすいイメージがあるのですが、いかがでしょうか。
久保 若手採用は売り手市場なので、「受かって当たり前」みたいな空気もあるので、普通に落ちた時のメンタルへの反動が大きい。そして、就活の課題は、大学3年生から始めるのが当たり前という長期化と早期化です。学生がチャレンジや楽しい思い出を作るべき大学生活が、入った瞬間から就活のことが頭をよぎってしまう状態は問題だと感じています。
佐藤 一方で、4月に入社して、すぐに退職代行サービスのニュースが流れる現実もあります。なぜせっかく入った会社を軽々しく辞めてしまうのでしょう。
久保 辞める自由も当然の権利という風潮もありますが、これって本当に双方にとって良いことなのかな、と問いかけたい。最近、弊社の採用でも、さまざまなキャリアを歩んできたような方も増えました。このような経歴が、その人にとって今後マイナスに働いていく可能性も懸念していますし、仕事の面白さを知る前に去ってしまうのはもったいないと思います。
佐藤 そうですよね。もうちょっと根性入れて頑張れよ、なんていう話をすれば、「それは古い考え方」と批判されそうですが、それでも、私は頑張れって思いますね。
久保 退職代行を使えばお金はかかっても、電話一本で簡単に会社を辞められてしまう。これは正直あかんと感じています。辞めることぐらい自分で言えよ、と思うのが僕の感覚です。
一方で企業側からは、退職代行を使って辞めた人のリストを作って欲しいという要望もあります。職業選択の自由という観点からリスト化するのは難しい問題ですが。
佐藤 みんな都合のいい方に持っていきますからね。退職代行が悪いとは言いませんが、すぐに退職しちゃうと組織として、人間関係やキャリアを構築する前に終わってしまう。少子化が進む中で、若い人は、可能性をたくさん持っていて、それこそ、「金の卵」なわけです。社会全体で応援していくような仕組みが必要ですね。
久保 その仕組みを整えるために、弊社は24年3月に経団連に史上最年少で入会させていただきました。経団連という場でわれわれの事業を通じて感じる課題や雇用に関する提言をしっかり行っていきたいと思います。
佐藤 それは素晴らしい。しかし、その「人間関係の構築」自体が、難しい世の中になってきました。
久保 おっしゃる通りです。組織内で、人間関係の摩擦やハラスメントといった問題が起こるように、世代間でも人間関係をつくっていくのが難しくなったと思います。物事の常識もこの30年ですごく変わりました。人と対面で話すことが減り、デジタル化が進む中で、結局人と人とのコミュニケーションが大事になってくる。ここを怠らなかった人が20年後とか生き残れているんじゃないかと個人的には思っています。
若手リーダーの連帯が開く地方と日本の未来
佐藤 久保さんが考えるこれからの未来像を教えてください。
久保 僕ら世代の特徴って、ずっと「失われた30年」と言われながら育ってきたので、「日本をなんとかしたい」という強い気概を持っています。そこで、まだ会社が小さい状態のときに、「みんなで日本のことを考えようぜ」とか、「将来の日本のために仲良くなっておこうぜ」、的な活動をしています。親しい経営者仲間とは企業の枠を超えて合宿をしたり、時には官僚や市長、先輩経営者をお呼びして、勉強会なども行っています。
佐藤 その活動の中核となる人たちは、やはり久保さんと同世代の経営者なのですか?
久保 そうですね。他にも政党に関わらず優秀な若手議員の方ともコミュニケーションとっています。こういうコミュニティづくりは将来本当に大事になってくると思います。しっかりと、今未来を考えられる人たちで作っていって、10年後ぐらいに、その仲間たちがそれぞれのフィールドで活躍して、大きくなった時に力が合わされば、社会に対してインパクトを発揮できると信じています。
佐藤 久保さんはこの国の未来を背負って立つ経営者ですので、頑張ってくださいね。