工場跡地などの汚染対策に取り組むエコサイクルのバイオ浄化は、環境大臣賞を受賞するなど注目を集めている。汚染を土ごと掘り出す掘削に対し、掘らずに分解するバイオ浄化はコスト・環境負荷が低く、CO2排出量も僅少だ。インド出身のシュリハリ社長は、脱炭素社会への貢献に熱意を込める。(雑誌『経済界』2026年3月号より)

シュリハリ・チャンドラガトギ エコサイクルのプロフィール

エコサイクル シュリハリ・チャンドラガトギ 社長
エコサイクル 社長 シュリハリ・チャンドラガトギ

最先端のバイオ浄化で資源循環型社会を実現

 シュリハリ氏が来日したのは1998年。農業微生物博士として千葉大学で研究を重ね、2006年、縁あって土壌汚染対策に取り組む富山発祥の企業、エコサイクルの代表に就いた。国内では02年に土壌汚染対策法が制定されたものの、それ以前に排出された化学物質などによる土壌汚染が広がっていた。

 「就任当時、会社の経営は赤字続きでピンチでした。当時の土壌汚染対策は汚染土を掘削して、汚染されていない土で埋め戻す『掘削除去』が一般的で、われわれが得意とする『バイオレメディエーション』(バイオ浄化)はほとんど知られていなかったためです」

 自動車、化学、鉄鋼など工場を持つ企業には土壌・地下水の汚染問題を抱えている先が少なくない。バイオ浄化は汚染された土壌や地下水を掘り上げたりはせず、その場(原位置)で浄化することから「原位置浄化」とも呼ばれている。井戸を掘り、バイオ浄化剤によって活性化した微生物の力を借りて汚染物質を分解する。掘削除去に比べてコストは半分以下だ。汚染土を場外へ搬出しないため、資源循環型社会の実現に直結する技術として注目度を高めている。

 「近年では掘削工事による従来工法よりも環境負荷の小さい原位置浄化工法を選択する企業が増えています。かつては土壌汚染をはじめ、環境問題には蓋をしてしまうような傾向がみられましたが、コンプライアンス経営が重視される現代においては、きちんと問題に向き合おうとする企業が増えてきました。われわれには、重篤な汚染にも最先端の技術で対応してきた実績と実力がありますので、抱え込まずにぜひ相談してほしい。土壌汚染は経営判断として正しく評価すべきリスクの一つで、過剰に恐れるものではありません。掘削だけが解決策ではなく、コストや環境負荷を抑えるバイオ浄化のような選択肢もあります。汚染について正しい知識を持ち、適切に向き合うことが、投資・M&A・不動産戦略の確かな意思決定につながると、広く知られてほしいと思っています」

 同社は、土地の歴史を数十年前までさかのぼる地歴調査から工場の種類や規模によるリスク評価を手掛けている。調査・対策も含めると年間200件超を取り扱う。対象地の広さは数十平方メートルから数万平方メートルまでと幅広く、浄化に要する期間は約半年から数年程度かかることもある。対策工事が長引くことによるコストの上振れを防ぐため、「コストキャップ保証」もあり、取り決めた予算内で条件を達成する。近年は脱炭素経営への動きから業態転換を迫られる企業も多く、工場の再編が加速している。これにより工場跡地の土壌汚染調査・対策ニーズも高まっている。

 「現在の国内製造業は自動車のEV化や鉄鋼高炉の電炉化、印刷のデジタル化などさまざまな形で大きな転換期を迎えています。トランプショックも加わり、工場の海外移転も加速するかもしれません。さらに地価も高騰し、工場跡地の再開発需要は一層増えるでしょう。土壌汚染対策のビジネスも広大な『メガ案件』が増えていると感じます」

土壌汚染対策技術を駆使し不動産事業をスタート

 シュリハリ氏は試行錯誤を経て土壌汚染の浄化速度を高めた「高速バイオレメディエーション」を開発した。通常は数年かかっていた土壌浄化を最短で数カ月まで短縮させる技術だ。これで大規模な不動産案件にもバイオ浄化が適用できるようになった。この技術のための自社製造浄化剤群も、2025年超モノづくり部品大賞で「健康福祉・バイオ・医療機器部品賞」を受賞するなど、高く評価されている。

 同社はこの技術を生かし、汚染された土地を同社がそのまま買い取り、浄化した後に売却する「ブラウンフィールドソリューション」に今後注力していくという。ブラウンフィールドとは土壌汚染により手つかずのままになっている不動産の総称で、再開発における障壁となっている。同社は工場を手放したい企業に対して、土地・建物を丸ごと売却することを提案。土壌汚染対策・建物解体工事・行政協議まで一貫して行い、完了した後にデベロッパーなどへ売り渡す。工場の所有企業は素早い売却が可能となり、デベロッパーも土壌汚染対策の完了後に土地を入手できるので、順調に開発計画を進められる。

 「PBR(株価純資産倍率)1倍割れの企業が多く目立つなかで今後、収益率の低い遊休不動産を保有し続けることはリスクとなります。アクティビスト(物言う株主)から資産効率の改善を指摘されやすく、今後遊休不動産を手放す企業は増えていく傾向にあります。そうしたときにブラウンフィールド事業が貢献できることは大きい」

人材紹介会社を設立 日印の架け橋へ

 シュリハリ氏の出身国であるインドは世界最大の人口を有し、若く優秀な技術者も多く存在するが、彼らの技術が生かせる職は少ない。対して日本は人口減少による高齢化・技術者不足が社会的な問題だ。この2つの課題をつなぎ解決するため、人材不足で悩んでいる国内企業向けにインド人の優秀な若手エンジニア人材を紹介する会社を設立した。将来的には人材紹介に留まらず、研究開発や投資案件をつなげ日印企業の架け橋となることを目指し「ブリッジ・インディア」と名付けた。

 「インド人にも優秀なエンジニアはたくさんいますが、その多くは渡米してしまい、日本で働いているのはごくわずかです。私は人生の半分を日本で過ごし、第2のふるさとと感じています。もっと日本に向かうインド人を増やしたいです。人材・技術・投資などあらゆる面で日印ビジネスをつなぎ、加速させていきます」

設立1999年5月
資本金7,915万円
本社東京都中央区
従業員数100人
事業内容土壌・地下水汚染の調査・対策/浄化剤の開発製造販売
https://www.ecocycle.co.jp/

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