「大阪・関西万博は〝共創〟の舞台だった」。大阪商工会議所会頭、鳥井氏は万博をそう振り返り、今後の関西経済における共創の重要性を訴えた。分断を乗り越え、多様な関係者をつなぎ、新たな価値創造につなげられるか。同氏の描く未来情景に迫った。(雑誌『経済界』2026年3月号より)

鳥井信吾 大阪商工会議所のプロフィール

大阪商工会議所 鳥井信吾 会頭
大阪商工会議所 会頭 鳥井信吾
とりい・しんご──1953年大阪府生まれ。甲南大学理学部卒業、南カリフォルニア大大学院修了(生命科学)。83年にサントリー入社。2014年よりサントリーホールディングス副会長。大阪青年会議所理事長、関西経済同友会代表幹事を歴任し22年3月より大阪商工会議所会頭。

世界が共通のテーマに向かい〝共創〟した令和の万博

 世界中から158の国・地域と7つの国際機関が集まり、6カ月にわたって開催された大阪・関西万博。会期中の来場者数は関係者を含め2900万人超、運営収支も最大280億円の黒字とされ、政財界からは大成功との見方が強い。万博前の本誌インタビューでは、「分断が進む昨今、万博はグローバル化とダイバーシティの真髄を感じられる貴重な機会だ」と語った大阪商工会議所会頭の鳥井氏は、令和の万博が閉幕した今、次のように振り返る。

 「半年という限られた期間の中で、世界中の人々が集まり、『いのち輝く未来社会のデザイン』という共通のテーマに向かい、自国の文化や技術の粋を結集させました。この過程において、デザイナーや建築家、演出家、イベンターといったさまざまな方々が国の枠を超えて関わり合い、〝共創〟が生まれました。これこそが万博の何より大きな財産です」

 今回の万博に来場した公式スタッフや関係者は、公式発表で343万8938人に上る。国内外問わず、世界中の多くの人々が一丸となり共通のテーマに向けて共創する機会は、世界で見ても決して多くはない。それだけにとても貴重な体験となった。

 さらに同氏は、次世代に与えた影響の大きさと期待感を語った。

 「大人とは異なり、子どもたちは彼らなりの感性で万博を経験したと思います。これまでに見たことも聞いたこともない国の人々や、文化、芸術に触れて受けた衝撃は、人生において忘れられない大きな経験となるでしょう。万博を通して、人間の可能性や社会の明るい未来を感じてくれた子どもたちが、今後の日本をつくってくれると信じています」

 朗らかな表情で次世代に向けた期待を語った鳥井氏。万博の総括に引き続き、大阪商工会議所として携わった大阪ヘルスケアパビリオン「リボーンチャレンジ」についても次のように言及した。

 「リボーンチャレンジには432の企業が参加。中小企業や町工場、スタートアップが企業の壁を越え、チームを組んで協力しながら進めました。万博を終えて参加していた企業に話を聞くと、『他社と共同して取り組めたのが良かった』との声が多かったです。他社との交流を通じ、自社にはない技術や制度、仕組みなどを知って、積極的に取り入れようとする姿勢の企業がたくさんありました。良いシナジーが生まれたと感じています」

 リボーンチャレンジの各所で見られたこうした動きについて、同氏は広い視野をもって同時複数的にたくさんのものに触れ、知を磨くことの重要性を訴える。

 「社会や経済、技術の発展には共創が欠かせません。分断を乗り越えて、異なる他者や領域の異なる企業と連携する。そこからイノベーションが生まれるのではないでしょうか」

分断を乗り越え、異なる領域をつなぐ人材が成長の鍵に

 混迷の時代にありながら、文化と経済の力で世界をつないだ令和の万博。その成果を「共創」という言葉で表した鳥井氏は、万博後の関西経済において、大阪商工会議所の担う役割を次のように語った。

 「万博はまさに共創の舞台でした。大阪商工会議所としては、今後もそうした動きを生んでいくために、さまざまなアセットを発掘し、関係者をつなぎ、ネットワークを形成できる人材が必要だと考えています」

 同氏が挙げた人材は、ファシリテーターやコーディネーター、ドア型人材など、多種多様な呼び方があるものの、共通するのは分断を乗り越えて、異質なもの同士を組み合わせ、新たな価値を生み出せる人材だ。

 「トッププレイヤーはとても多忙です。共創につながる可能性があっても、成果につながるか分からないコミュニティや交流会にはなかなか足を運べません。そのため、適切にシーズとニーズをマッチングさせる専門人材、または組織が必要とされます。われわれとしては、こうした共創を支援することが、今後は一つの役割になると考えています」

 さらに鳥井氏は、ここに「大阪らしさ」を付け加えようとしている。

 「大阪の強みは高度なホスピタリティです。これまでも世界から訪れるさまざまな賓客から、『大阪は楽しかった、温かかった』との声をいただいていたのですが、万博を経て確信へと至りました。ただアセットを集めてつなげて、という話ではなく、そこに血を通わせ、あたたかみのあるつながりを生み出す。これこそが、大阪、ひいては関西ならではの魅力につながると信じています」

 日本国内だけでなく、世界に向けて共創の価値が示された2025年。今後、大阪・関西の地から、血の通った共創が広がり、お互いに手を取り合う未来社会が育まれていくことだろう。