2025年4月から半年にわたって開催された大阪・関西万博。当初は批判的なニュースが多く盛り上がりに欠けたが、蓋を開けてみれば連日大盛況。同年10月盛会のうちに閉幕を迎えた。この機運を、関西経済ひいては日本経済の成長・発展にどうつなげられるか。(雑誌『経済界』2026年3月号より)

永井靖二 関西経済同友会のプロフィール

関西経済同友会 永井靖ニ 代表幹事
関西経済同友会 代表幹事 永井靖二
ながい・せいじ──1958年生まれ。山口県下関市出身。大阪大学工学部を卒業後、大林組に入社。東京・大阪と建設現場を含めた生産部門を経て、41歳からは自身の強みを活かすべく営業に転じた。2003年より14年間広島支店に単身赴任し、24年に副社長に就任。同年5月、関西経済同友会代表幹事となり、現在は日本国際博覧会協会の副会長も務めている。

次世代に希望の灯を点した大阪・関西万博

 158の国・地域と7つの国際機関が参加する一大イベントとして注目を浴びた大阪・関西万博。当初はテレビや新聞で、連日ネガティブなニュースが流れ、成功を危ぶむ意見も多かった。しかし、万博が閉幕した今、「失敗だった」と口にする者は少ないだろう。

 代表幹事就任当初から機運情勢に取り組んできた関西経済同友会の永井靖二氏は、万博を次のように振り返る。

 「大きな事故が無かったこと、また、アンケート結果でも表れているように、来場者の満足度が概ね高かったこと、そして、開幕前に不安の声が上がっていた運営費の収支についても、最大で280億円の剰余金を見込める状況であることから、今回の万博は、成功したといえるのではと思います」

 オペレーションについても「足を運ぶたびにスタッフのサービス向上が見られた」と評価し、その精神やノウハウが2027年に横浜で開催される国際園芸博覧会や30年リヤド万博へ引き継がれることに期待を寄せた。

 また、会期中の印象に残ったシーンとして、子どもたちの様子を挙げる。

 「万博では、子どもたちの楽しむ様子が随所で見られました。各パビリオンでは子どもたちが楽しめる工夫がなされ、普段出会うことのない外国の方や海外の文化に触れられる機会が多くありました。子どもたちの目が煌めく様子を見て、予期しない素敵な出会い、セレンティビティがたくさん生まれたと感じました。万博が子どもたちの未来に与えた影響は計り知れないでしょう」

 実際に孫と一緒に万博会場を巡ったという同氏は、うれしそうに目を細めながら語った。

万博のソフトレガシーを調査・研究し、後世に残す

 大阪・関西万博の盛り上がりを一過性のもので終わらせることなく、関西経済ひいては日本経済の成長につなげていくために、関西経済同友会ではレガシーの創出に取り組んでいる。同会は、万博開催に先んじて24年5月に「万博レガシー委員会」を立ち上げ、取り組んできた。永井氏は、「ソフトレガシー」についての議論を早急に進めるべきと言及する。

 「会場施設跡地や建物等の『ハード』についてはすでに利活用の議論が進んでいる一方で、無形の『ソフト』は、万博閉幕とともに消えてしまう恐れがある。当会では、『ソフト』に着目してレガシーとして後世に残すべく調査・研究を行っています」

 同会では、「ソフト」を「技術」「取り組み」「つながり」「アイディア」「仕組み」等と定義。特に社会課題の解決や経済成長につながるものに限定して調査・研究を行い、25年11月に提言を発表した。永井氏は、これらのコンテンツの中で「健康・医療」「モビリティ」「環境・エネルギー」「地域活性化と観光」「ビジネス交流・起業家支援」「木材の活用」の6つに注目。寄せる期待を次のように語った。

 「まず『モビリティ』については、すでに国内外で自動運転の事例が数多く出てきており、社会実装の段階にあります。『健康・医療』については、日本が得意とする領域で、iPS細胞を使った再生医療の研究で高いポテンシャルを持っています。しかし、近年は諸外国の躍進が目覚ましい。国には追い抜かれないようにしっかりと研究の後押しをしていただきたいですね。また、今一番注目しているのが『環境・エネルギー』です。現在、従来のシリコン系太陽電池に匹敵する変換効率・耐久性となるよう開発段階ですが、軽量で柔軟性のあるペロブスカイト太陽電池が、日本人によって発明されました。日本が世界でリードできる先端技術だと考えています」

 同氏は、地球環境における社会課題、特にエネルギー問題についての産官学連携や、地球規模で技術の平和利用を進める重要性を繰り返し訴えた。

 最後に永井氏は、万博後を担う次世代に向け、強い期待と激励のメッセージを述べた。

 「次代を担う皆さんには、運をつかむ力と熱意、ご縁を大事にすることの3つが大切だと伝えたい。経営には数字や事実、ロジックはもちろん大切ですが、さまざまな交流や対話により、知見を深め、感性を磨き、人間力を高めることが必要です。古典から学び、気付きを得られたり腹落ちすることもあるでしょう。合理性だけでなく、デジタルとアナログのバランスの取れた経営感覚を持つことが、肝要だと考えています。日々新たな気持ちで取り組み、大きく飛躍して将来の関西経済、いや日本経済を引っ張って行ってほしいですね」