2025年に創業50年を迎えたパソナ。創業以来同社を率いてきた南部靖之氏の取締役辞任に加え、長期ビジョン「NATUREVERSEの実現」を掲げるなど、まさに過渡期を迎えている。これまでの歩みと今後の展望を新たに同グループ会長となった若本博隆氏に話をうかがった。(雑誌『経済界』2026年3月号より)
若本博隆 パソナグループのプロフィール
わかもと・ひろたか
ウェルビーイングな未来を目指して
日本中が大阪・関西万博に沸いた2025年。パソナグループは創業50年を迎えた。同社は万博にて、「PASONA NATUREVERSE」と題したパビリオンを出展。創業以来「社会の問題点を解決する」という企業理念のもと、さまざまな挑戦をしてきた同社だが、今一番注目しているのは一人一人の「健康」だ。新たに会長に就任した若本氏は、これまでの歩みと新たな長期ビジョンについて次のように語った。
「これまで弊社は人材ビジネス企業にとどまらない、多岐にわたる領域で成長拡大を続けてきました。クライアントの皆さまをはじめ、スタッフ、社員といった数多くの方々に支えられ、50年目を迎えられたことを、感慨深く思っております。節目を迎えるにあたり、弊社では新たに『NATUREVERSEの実現』という長期ビジョンを設定しました。われわれが目指す、人と自然とテクノロジーが共生して、人々が思いやりの心でつながる真に豊かな世界の実現に向け、ウェルビーイング産業に注力したいと考えております」
「NATUREVERSE」とは、「NATURE(自然)」と「UNIVERSE(宇宙・万物)」を組み合わせた造語で、万博の同社のパビリオンでも使用されている。その背景について創業者の南部氏は自身の発信で「『自然を尊重し大切にする世界』を創るという想いを込めた」と綴った。
万博の同社パビリオンには215万人以上が来場。若本氏は「一定の評価を得られた」と振り返り、その成果として、幾つかのレガシーが生まれたと話す。
「まず、ネットワークのレガシーです。エステーをはじめ、エイチ・ツー・オーリテイリング、ヤンマーホールディング等とご縁をいただき、共創プロジェクトを立ち上げるに至りました。次に人材のレガシーとして、万博キャリアNEXTというイベントを行い、万博で活躍した方々の次のキャリア形成をサポートしました。また、『万博オンライン遠足』を通じて、小児病棟や児童養護施設の子どもたち約3400人に万博体験を提供。万博を次世代につなぎました。アイデアのレガシーとしては、ウェルビーイングをテーマにしたスタートアップのビジネスコンテストを開催。からだ部門、こころ部門、きずな部門のそれぞれで企業の方々に発表していただきました。今後、ここで出会ったスタートアップをファンドで支援していく予定です」
人がいきいきと働ける環境を
世界におけるウェルビーイング産業は、1・8兆ドルに迫る勢いで伸びる成長市場とされており、国内でも25年には約12・5兆円にのぼる市場規模となっている。こうした時勢の中、同社が特に力を入れようとしているのが「食」の領域だ。
「ウェルビーイングは、大きく捉えると『いかに幸せに生きるか』ということ。そのためには身体の健康が欠かせません。身体をつくるのは食です。その食の基盤は豊かな自然です。弊社は20年前から東京・大手町に地下農場や牧場を作り『食の大切さ』を発信してきました。最近では、『ワールドシェフ王サミット2025』を開催し、若手料理人のコンテストと世界で活躍するシェフの料理コンテストを行いました。テーマは『健康美食』で、美味しさだけでなく健康に良い食事を競っていただきました。淡路島は『御食国』と言われるほど食材の宝庫で、美味しい肉や魚、野菜も豊富にあります。この素晴らしい食文化を、ここ淡路島の地から、世界に発信していきます」
また、一人一人がいきいきと働き続けられる社会への期待が高まっていることを鑑み、人材ビジネスの業界をリードするパソナグループでは、さまざまなワークスタイルの実現にも取り組む。
「私どもはウェルビーイングの一環として、職場環境を整えることを非常に重視してきました。弊社は産休復帰率が100%に近く、働く女性を応援できる体制を完備。また、ビジネスチャンスの平等は老若男女関係なく徹底しており、最高齢は知財の分野で88歳の方が活躍されています。制度の他にも環境面においては、オフィス内の緑化やエステーとの協力による香りも含めた快適なオフィス環境づくりなど、心地よく働ける環境を目指して取り組んでいます。また、少子高齢化に対応して企業内保育のサポートや、パソナマスターズというシニアの方々がいきいきと活躍できる環境創りを行う会社もあります」
注力するのは、働き方だけにとどまらない。人々の暮らしについても眼差しを向けている。
「先ほど申しました食文化もそうですが、淡路島の自然、そして文化・芸術の魅力を感じられる観光にも力を入れていきたいと考えています。来年にはウェルビーイングをコンセプトとしたホテルの完成も予定しており、心身共に、より豊かな体験を提供できるようになります」
25年、創業者である南部氏よりバトンを引き継いだ若本氏。節目を任された重責について、「プレッシャーが無いと言えば嘘になる」としつつも、展望を語る表情は明るい。
「南部は礼節を重んじる人で、お客さまをはじめ、関わる人たちとの関係を大切にしていました。そういった彼の人柄や考え方を、私なりに次の世代へつなぎ、弊社の新しいビジョンの達成を目指していきたいですね」
| 設立 | 1976年2月16日 |
|---|---|
| 資本金 | 50億円 |
| 売上高 | 3,092億円(2025年5月期 連結業績)(通期・実績) |
| 本社 | 東京都港区 |
| 従業員数 | 2万2,982人(連結・契約社員含む) |
| 事業内容 | BPOソリューション(委託・請負)、エキスパートソリューション(人材派遣)、キャリアソリューション(人材紹介、再就職支援)、グローバルソリューション(海外人材サービス)、ライフソリューション(子育て支援事業・教育事業、介護事業、ライフサポート事業)、地方創生・観光ソリューション https://www.pasona.co.jp/ |