2023年10月、京都銀行グループは「京都フィナンシャルグループ」として新たな一歩を踏み出した。地域金融機関が生き残るためには、どのような企業であるべきなのか。FG化の背景と、この2年間の取り組みを土井伸宏社長が語った。(雑誌『経済界』2026年3月号より)

土井伸宏 京都フィナンシャルグループのプロフィール

京都フィナンシャルGP 土井伸宏 社長
京都フィナンシャルグループ 社長 土井伸宏
どい・のぶひろ

営業エリアと事業領域を拡大し、持株会社体制へ移行

 同社が「地方銀行として生き残るための取り組み」は2000年頃からすでに始まっていた。まずは積極的に営業エリアを拡大。京都、大阪、東京だけでなく、滋賀、奈良、兵庫、愛知へと進出し、現在は174店舗まで店舗数を増やした。業界の流れはエリアや店舗を縮小する傾向にあったが、同社は「拡大なくして成長なし」と広域化という逆張りの戦略を推進。地域金融機関としての将来を見据え、営業エリア拡大という布石を打った。

 さらにもう一つの布石が事業領域の拡大だ。「預貸ビジネスだけに頼っていては、将来的に経営が成り立たなくなる」と考えた同社は、01年にM&A業務を開始し、全国の地方銀行でトップクラスの体制と実績を有するまでに成長させた。09年には新たに事業承継支援業務にも取り組む。土井氏が銀行頭取に就任した翌年の16年に日本銀行がマイナス金利付き量的・質的金融緩和を導入すると、同社はより一層、事業領域の拡大に注力すべきと考え、17年に京銀証券の営業を開始。18年には銀行本体による信託業務へも参入した。

 土井氏がフィナンシャルグループ(FG)化の構想を練っていた20年、広島銀行が銀行本体を完全子会社化し、単独持株会社のひろぎんホールディングスを設立。これに倣い、京都銀行も23年10月に単独で持株会社体制に移行し、京都フィナンシャルグループを設立した。

 「今はまだ、グループ内で京都銀行の収益が9割を占めますが、他の事業でも収益を上げていかないと地域金融機関として生き残れないだろう」

 将来的には、京都銀行だけではなく、グループ会社の「京都総研コンサルティング」が窓口となり、そこから各社へ業務を振り分けるような「総合ソリューション企業」にすることが土井氏の理想だ。

新規事業領域の拡大と既存事業の深掘りを進める

 設立から2年間、総合ソリューション企業として体制を強化してきた。

 「事業領域拡大の方法は3つ。M&Aなど他社を買収すること。自社の中で新しい事業をつくること。従来からやってきた業務を切り出して強化すること。最も早く収益化につながるのは、3つ目のやり方だ」

 まずはグループ会社によるコンサルティング事業や投資事業に力を入れた。24年6月には京都銀行創立以来、初めてのM&Aにより「積水リース」を連結子会社化。同年10月には「きょうと事業再生債権回収株式会社(きょうとサービサー)」を設立した。また、25年7月にはすでに実績のあったM&A業務を銀行から切り出し、新会社「京都M&Aアドバイザリー」を設立。現在、京都銀行を中核に、さまざまな事業を行う12社の企業によってグループ全体が成長を続けている。

 また、新たな取り組みとして、グループ全社の職員を対象とし、新規事業の創出を目指す社内ベンチャープロジェクト「WILL」をスタート、多くのアイデアが集まった。新ビジネスの実現には時間がかかるが、「ITやDX、人材紹介やまちづくりといった非金融分野の事業にも積極的に挑戦したい」と土井氏。

 体制強化を進めた結果、25年度中間決算では最終利益が中間期として5年連続の最高益更新、業績予想の上方修正を公表した。FG化により業績は順調だ。

「金融」×「コンサルティング」で地域社会の繁栄に奉仕

 中長期的なビジョンとしては、「ROE8%以上」に向けた通過点として、次期中計最終年度までに「ROE5%」と「親会社株主帰属利益600億円」を掲げている。その実現に向けて、現在注力している具体的な取り組みが3つある。

 1つ目は「地域みらい共創事業」と名付けた地域企業の支援事業だ。京都をはじめとする営業エリアには古き良き歴史や伝統と革新的な技術が共存しているが、人口減少や高齢化、後継者不足を背景に休廃業を選ばねばならない地域企業が多々ある。本事業では従来の支援の枠組みを超えた1千億円以上の投融資を掲げ、グループの総力を挙げた伴走支援でこの課題解決に取り組んでいる。

 2つ目は「ベンチャー支援」。京都では戦後、数多くのベンチャー企業が誕生し、グローバル企業に成長している。そこで、子会社の「京都キャピタルパートナーズ」は100億円規模のベンチャーファンドと事業承継ファンドをそれぞれ立ち上げた。さらにスタートアップ企業の大型資金調達にもグループ連携で対応できる体制を整えている。

 「京都が今後も活力ある都市であるために、われわれは将来に向けて種をまいていかなければならない」

 未来の日本経済を牽引しグローバルトップを狙えるようなスタートアップ企業の創出に取り組んでいる。

 3つ目は「人的資本投資」である。「人は財産であり、企業価値向上の源泉」との考えを根底に人材戦略を行う同社。グループ各社でキャリア人材の採用に尽力し、事業領域の拡大により専門性の高い人材も確保できている。「FG化は、従業員のやりがいや社内全体の活性化につながっているように思う」と土井氏。

 設立3年目も、京都銀行創立から引き継ぐ理念「地域社会の繁栄に奉仕する」と向き合い、「地域の成長を牽引し、ともに未来を創造する総合ソリューション企業」を目指す。

設立2023年10月
資本金400億円
経常収益1,672億5,820万円(連結)(2025年3月期)
本社京都市下京区
従業員数3,580人(連結)(2025年3月31日時点)
事業内容1.銀行および銀行法により子会社とすることができる会社の経営管理、2.前号に掲げる業務に付帯関連する一切の業務、3.前2号に掲げる業務のほか、銀行法により銀行持株会社が営むことができる業務
https://www.kyoto-fg.co.jp/