生成AIビジネスに欠かせないGPU(画像処理半導体)クラウドサービスで先行するさくらインターネット。日本企業として唯一「ガバメントクラウド」の事業者に条件付きで認定され期待が高まっている。今後の戦略を田中邦裕社長に聞いた。(雑誌『経済界』2026年3月号より)

⽥中邦裕 さくらインターネットのプロフィール

⽥中邦裕 さくらインターネット 社長
さくらインターネット 社長 ⽥中邦裕
たなか・くにひろ

AIは利用だけでなく、自社で開発する時代へ

── 現在の事業内容を教えてください。

田中 サーバーをはじめとしたクラウドインフラをお客さまに提供するビジネスを長年続けてきました。創業当初は個人顧客が中心でしたが、今では法人顧客が増え、大企業やガバメント(国や地方公共団体)領域まで拡大しています。顧客層が変化してもクラウドインフラを継続して安全に提供する中心のビジネスに変わりはありません。今後はサービスに磨きをかけて新規市場、新規顧客の開拓に取り組んでいきます。

── 生成AI向けのGPUクラウドサービス「高火力」の用途別メニューが次々とリリースされていますが、現状はどうですか。

田中 短期的にはGPUで稼ぐということですが、中長期にはクラウドを生かしながら伸ばしていくということです。足元の注力領域でございます。現状、やや弱含みなところもあり、もう少し頑張らないといけないなというところですね。

── GPUクラウドサービスを利活用する上でデータセンターの拡充が重要ですね。

田中 生成AIを活用する上でこれからは大量のGPUが必要で、同時にデータセンターの拡充も重要になってきます。これらの事業は継続して取り組んでいきますが、大事なことは単にAIを利用するのではなく、自分たちに必要な最適なAIを自分たちで作っていくということです。最近、ソブリンAI(国家や企業などが自国や自社のデータ、技術を基に独立して運用・管理するAIシステムのこと)という話題も出てきましたが、やはりデータ主権と技術主権を持った上で自分たちに最適なもの作ればいいのです。海外のモデルを利用するだけではなくて、自分たちのAIを作る努力が重要です。その方が絶対に生産性が高いものが生まれます。

GPUの供給やデータセンターの拡充で貢献する

── 外資系のソフトに頼り切っている中で、日本は相当な「デジタル貿易⾚字」を抱えているといわれますね。

田中 輸⼊しているソフトウェアは付加価値が高く便利なので排除せず、上手く利活用すればいいのです。実際にそれで日本も発展してきたと思います。でもこれからは海外の便利なソフトを利用しつつ、自分たちで改良を重ねてさらにいいものを作るというサイクルを回すことが重要になってくると思います。そしてその製品を海外展開してグローバルに戦っていく姿勢が大事になります。ソフトウェア協会でも、東南アジアを中心に展示会に積極的に参加するなど、海外市場の開拓に努力しております。

── 世界には巨大なプレーヤーも多い中、日本企業にもまだ可能性はあるのでしょうか。

田中 自動車の世界では、かつて日本企業は米国企業に対して苦戦していましたが、今は違います。そうした例もあり、私自身、特別に高いハードルがあるとはあまり思っていません。今でも皆さんそれぞれ頑張って取り組んでいますので、しっかりと継続していくだけだと思います。

── AIの利活用が増える中で、その計算基盤としてデータセンターやGPUクラウドサービスが必要です。御社はそのデジタルインフラ事業に注力するということですね。

田中 デジタルインフラは、いわば産業の米のようなものです。なので、計算機基盤の拡充、整備は絶対に必要です。当社の主力事業のGPUクラウドサービス「高火力」シリーズは機械学習やディープラーニングなどの大量の計算が求められるケースや、言語モデルの推論、画像生成など高い処理性能を求められる場合など、さまざまな用途に対応しています。

日本勢唯一の「ガバメントクラウド」の正式認定へ

── 2023年11月、ガバメントクラウドの事業者として「さくらのクラウド」が条件付きで認定されました。アマゾンやグーグル、マイクロソフト、オラクルに次いで5件目で、日本勢としては唯一です。26年3月末の正式認定まで準備の進み具合はどうですか。

田中 クラウド事業は11年から始めており、多くの経験があります。デジタル庁が求める技術要件はたくさんありますが、既存の機能をブラッシュアップさせるほか、ソフトウェア開発も進めています。来年3月の正式認定に向けて開発は遅れることなく、順調に進んでいます。

── 御社の将来像についてどのように考えておりますか。

田中 デジタルで再び日本が立ち上がるような姿になればうれしいですね。これまで日本はずっとデジタルが弱い、ソフトが弱いと言われてきましたが、日本には優秀なエンジニアが大勢います。1990年代まで日本製の通信機器は世界中に溢れていました。携帯電話は世界シェアの半分以上が日本製で、80年代はパソコン、半導体も圧倒的に強い時代がありました。だからIT、デジタルをはじめとしていわゆる情報分野に弱いわけではないのですが、ものづくりにこだわりすぎて、ソフトウェア分野で負けたような構造があります。でも今は優秀なソフトウェアのエンジニアも増えました。そこでこれからは原点に返って、日本企業もソフトウェアで世界と戦っていくという姿勢が必要だと思います。

設立1999年8月
資本金112億8,316万円
売上高314億1,200万円(2025年3月期)
本社大阪市北区
従業員数1,116人(連結)(2025年9月末現在)
事業内容クラウドコンピューティングサービスなどの提供、データセンター運営
https://www.sakura.ad.jp/corporate/