顧客情報を管理し、長期的な関係構築や顧客満足度の向上を目指す「CRM(Customer Relationship Management)」。近年の技術発展で、新たな地平である「CRM4・0」へと達した。キーワードは「体験共創型CRM」。同分野の第一人者である松原晋啓氏に、その真価を語ってもらった。(雑誌『経済界』2026年3月号より)
松原晋啓 アーカス・ジャパンのプロフィール
まつばら・のぶあき
管理対象ではなく、共創パートナー
2025年8月、CRMの先鋒として、長らく同分野の第一線で活躍してきたアーカス・ジャパン社長の松原氏は、CRMの新たな地平である「CRM4・0」(第四世代CRM)を提唱した。「管理」や「設計」が主だった従来の第三世代とは異なる「体験共創型CRM」だ。同氏は、第四世代の説明の前に、これまでのCRMの歩みを次のように振り返る。
「90年代後半、成熟した消費経済において、多様化する消費者ニーズに対応すべく、第一世代のベストプラクティス型CRMが誕生しました。当時のCRMは、RM(Relationship Marketing)に端を発しており、現在のような管理を意味するManagementではありません。その後、ITテクノロジーの変化により、大量のビッグデータを扱う第二世代のプラットフォーム型CRMが誕生。さらにBI(ビジネスインテリジェンス)やAIの進化を受け、暗黙知をシステムに取り込めるようになった。結果、顧客インサイトの領域までカバーできる第三世代が誕生しました」
続けて、CRMの原点について説明を加える。
「顧客とのつながりを大事にするためには、顧客の顔や情報を憶えて、望まれたものを望まれたタイミングで提供する必要があります。顧客の数が膨大になれば、その情報を管理するシステムが必要になり、CRMが生まれたのです」
これらの流れを踏まえ、第四世代CRMへと話は進む。元来、CRMは顧客を管理するのではなく、顧客〝情報〟を管理するものだったが、管理経営側で運用され始めたため、マネジメントの側面が強くなった。松原氏はこれを「企業側の驕り」と言う。顧客は管理の対象ではなく、共創のパートナーというのが松原氏の考えだ。
「私たちが考える第四世代CRMは、全く新しいものではありません。原点である顧客との関係形成に立ち帰り、現代の顧客が企業に求める単なる理解や提案以上の『共感』や『参加』をシステムに組み込んだものです。これらは第一世代から大事にしてきた考え方であり、技術が追い付いたので実現可能になりました」
社会が「超スマート化」「感性経済」へと移行しつつある昨今、単に顧客を理解するだけでは足りない時代が到来した。企業と顧客の関係は、「管理」や「設計」から共に体験を〝創り出す〟関係、つまり共創関係へと進化している。この関係構築の実現を目指すのが、第四世代CRMだ。
ナラティブな領域も第四世代で
第一世代でSFA(営業支援システム)やマーケティングの自動化が進み、第二世代ではそれらで取得した情報の統合管理、保持が可能に。第三世代では、AI分析によって暗黙知である顧客インサイトまで深掘りできるようになった。これらに加え、ナラティブなデータを用いて顧客のために何ができるかを考えられるのが第四世代の進化だ。
しかし、現状は厳しく、国内企業でCRMを適切に理解して実践できている企業は多くない。
「これまで警鐘を鳴らし続けきましたが、日本のDXは守りであって攻めまで進んでいない。データの活用はもちろん、そこへの投資も諸外国と比較すると格段に少ないです」
リテラシーもノウハウも足りていない国内において、黎明期からCRMに取り組んできたアーカス・ジャパンは、ここに唯一無二の強みを持っている。
「弊社では、独自開発したAI搭載型CRM『EMOROCOTM』を柱に、CRMの〝健診〟と処方ができる専門家として、新たに『CRM診断士(CRMドクター)』制度を導入。仕組みと運用の両輪で、CRMに取り組む会社を支援しています」
「EMOROCOTM」は、感情ログやナラティブ履歴を統合し、顧客一人一人に合わせたストーリー・体験を、自動生成・提案できる機能を持つ。さらに、この仕組みが適切に運用されるよう、法人心理学の専門家であるCRM診断士(CRMドクター)も導入。企業のCRMの面倒を包括的に診る万全の体制を組む。
松原氏は、第四世代のCRMが実装されたその先を、次のように語る。
「CRMは、皆さんの希望を叶える力になると本気で信じています。第四世代CRMが社会に実装されれば、笑顔で溢れる世界が必ず実現できる。あまり本気で受け止められませんが、海外では当たり前の話なんです。企業が顧客に価値を提供し、たくさん稼ぐ。それらを社会へ還元し、より良い社会をつくる。こうした大義がなければ、世界のトップ企業と肩を並べて戦えません」
今後、同社は国内だけでなく国外へも打って出る予定だ。笑顔で溢れる社会に向けた情熱は絶えることなく、勢いを増して進んでいく。
そして、松原氏は今後の関西経済を担う若い世代に向け、こうメッセージを送る。
「才能という言葉がありますが、あれは続けた結果で評価されるものです。最近は〝タイパ〟が重視され、効率を求める傾向にあると聞きます。若い間は『才能が無いから』といって自らの可能性を手放さず、覚悟を持ってやり切ることが大事ですね」
才能は継続できた結果にこそある。走り続ける背中を、後進に見せてきた松原氏ならではの言葉である。今後の同社の取り組みと成長に注目していきたい。
| 設立 | 2020年7月(創業2012年7月) |
|---|---|
| 資本金 | 1,980万円 |
| 売上高 | 6億5,000万円(2025年3月時点) |
| 本社 | 大阪市淀川区 |
| 従業員数 | 50人(常勤パートナー含む) |
| 事業内容 | 自社プロダクトやサービスの提供、CRMのコンサルティング支援など https://www.arcuss-japan.com/ |