アスベスト(石綿)による健康被害は深刻で、今でも年間約2万人が命を落としているという推計がある。国も規制強化や法改正で対策しているが被害者は今後も増加する見通しだ。この古くて新しい社会課題に挑戦しているのが都分析代表取締役の福田賢司氏である。(雑誌『経済界』2026年3月号より)

福田賢司 都分析のプロフィール

福田賢司 都分析
都分析 代表取締役 福田賢司
ふくだ・けんじ

規制強化や法改正が進んでも深刻なアスベスト問題

 建築資材の原料として利用されてきたアスベストは断熱効果に優れ、安価なこともあり、古くから住宅や工場など多くの建造物に使用されてきた。しかし、その有害性は深刻で、建物の解体、リフォームなどの現場作業員や周辺住民がこれまで多数、被害を受けてきた。

 政府は2006年9月1日に日本国内での使用や製造、輸入を全面的に禁止したが、それ以前に使用された石綿は多くの建築物や製品に残存しており、それが解体や改修時に問題となっていた。このため、法規制は年々強化されており、20年7月の石綿障害予防規則(石綿則)の改正では、アスベスト調査や対策に関する規定が大幅に見直され、調査対象の範囲が拡大、小規模な工事作業においても徹底した管理が求められるようになった。

 さらに21年4月、大気汚染防止法が改正され、建築物の解体や改修、リフォームなどの工事において、アスベスト含有の有無を調査し、結果を記録することが義務付けられ23年10月1日からは解体・改修工事において「有資格者による事前調査」が義務化された。これら法改正を見越して福田賢司氏が20年に起ち上げた会社が、アスベストの事前調査と分析を専門に行う都分析だ。

 「今から20年前に専門学校を卒業し、父親が経営する環境分析、調査を行う会社に入社しました。ちょうどその頃に起こった〝クボタショック〟(05年に発覚したクボタ旧神崎工場のアスベスト公害事件)は衝撃でした。測定分析業務依頼先のアスベスト除去業者の親方がアスベスト被害で亡くなったこともあり、他人事ではありません。会社を起ち上げたのは需要の増加を見越しただけでなく、啓発や啓蒙活動を通じて、広く社会にアスベスト問題を認知してもらうことが目的でした」

 調査は最初に設計図面などをもとに、建材の種類や施工時期を確認し、アスベスト使用の有無を検証するところから始まる。そして現場に出向き、建物内のさまざまな部位を目視で確認。判別が難しい場合には、建材の一部を採取し、社内で成分分析を実施してアスベスト含有の有無を確定させて依頼主に報告書を提出するという流れだ。

 「一連の業務で大切にしているのは、正確性はもちろんですが、現場で即座に判断、説明できる力量を持つことです。『調べて折り返します』が多いと、お客さまからの信頼は得られません。だからこそ私たちは、現場で即座に判断、説明できる『対応力』を重視しています」

 また福田氏には仕事で大事にしている想いがある。

 「正しい情報を提供して安心してもらうことが一番ですが、お客さまから『あなたたちに会えてよかった』と思われる企業であり続けたいです」

日本そして世界に向けて命を守るための情報を発信

 仕事ぶりが評価され、顧客は関西を中心に全国に及んでいる。

 「私の仕事はアスベスト被害を現在進行形の健康リスクと捉え、その現状を多くの人に伝えることです。それが社会貢献ひいては地方創生になります。単に法律に則った業務ではなく見えないリスクに真正面から向き合い、人々の命を守る仕事だと自負しています」

 これまで培ってきた技術やノウハウを生かして、今後は海外展開も視野に入れている。

 「世界ではアスベストの規制が不十分な国も少なくありません。各地で啓発や教育を行って、世界中で命を守る仕事をしたいと思います」

 一方、日本でもアスベストの被害を〝過去の問題〟と思っている人が多い。

 「正しい情報を知らないので、現実との間にギャップが生まれています。だからこそ私は、啓発活動に力を入れているのです」

 同社では、自社メディアでの情報発信はもちろん、福田氏が積極的にラジオに出演や講演会に登壇している。さらに書籍も出版した。

 「最近ではKindleで漫画の出版や、『フォートナイト』でアスベスト問題を学べるオンラインゲームのリリースなど、新しい手法にも挑戦しています。大切にしているのは『分かりやすく伝わる形にすること』です。どれだけ知識があっても、それが伝わらなければ意味がありません。難しい内容を分かりやすく、想像しやすく直感的に理解できるように伝えることが私たちの役割です」

 事業の拡大に伴って社員も増えているが、人材育成についてはトップダウンではなく「任せて見守る」という姿勢を貫いている。

 「自分で考えて動けるように主体性を鍛えないと現場力が身に付きません。何か迷ったら私に聞けばいいし、責任を取るのは私です。採用や教育は特に大事です。会社を動かすのは結局そこで働いている〝人財〟ですから、頑張った社員はどんどん褒めるようにしています。仕事にやりがいを感じてまっすぐに育ってほしいと思っています」

福田賢司氏の最近の著書
福田賢司氏の最近の著書
『「アスベスト」は、暮らしの必修科目です。』(2025年10月、POD書籍および電子書籍)
『アスベスト調査の新常識』(2024年12月、ザ・メディアジョン社)
設立2020年11月
資本金600万円
本社大阪市都島区
従業員数25人(外部委託含む)
事業内容アスベスト調査・建材採取・分析
https://miyako-bunseki.co.jp/