規模が小さいほど難度が増すという現実の中で、栗山茂也氏は現場主義で顧客に寄り添う。収益指標に偏らず潜在課題を明示した上で最適なマッチングを図り、株主や従業員といった関わるすべての人にとっても価値ある再生を目指す栗山氏の経営の達観した姿勢に迫る。(雑誌『経済界』2026年3月号より)
栗山茂也 グロウイングのプロフィール
くりやま・しげや
「人」を中心に据えたスモールM&A
M&Aコンサルティングや不動産、レンタカー、中古車販売に飲食業と、多角的なビジネスを展開するグロウイング。中でもM&A、特に年商1億円未満のスモールM&Aを得意としており、同社の多角的なビジネス展開を可能にしてきた。
代表を務める栗山氏は、音楽やモデルといった夢を追う中で、1996年に21歳で自動車販売業で独立。その後、2005年の起業を経て、現在に至るまでスモールM&Aを駆使した事業展開を推進してきた。同氏には、人生において大事にしている哲学がある。
「人生の最後に後悔をしたくないとの思いがとても強いです。どれだけ収益につながったとしても、自分の人生において後悔になること、例えば大事な誰かが傷ついたり、損を被ったりするようなことは、できるだけ避けたいんです」
栗山氏にとって人は何より大事なファクターだ。それはビジネスにおいても変わらない。
「M&Aに限らず、どの事業でも何より『人』を大事にしています。これまでは、収益を追う中で我慢しながらお付き合いする方もいましたが、今は素直で信頼ができる人と一緒に働く選択をしています。私の経験上、そうした選択の方が良い結果につながるんですよ」
人を重視する栗山氏にとって、現場でのコミュニケーションは重要な判断指標のひとつ。現場で触れる感覚から、そこにいる人の背景を汲み取り、事業を見極める。
「事業を見る上で、気になった領域にはまず飛び込んでみることを徹底しています。実際に中に入って、そこで働いている人と話してみないと、大事な部分は見えません。事前にああだこうだと考えて、自分なりの方法をいろいろ試行錯誤してきましたが、結果的にがむしゃらにやることが最適解でした」
誠実な姿勢が仕事の信頼につながる
スモールM&A支援において、同社はこれまでに株式譲渡5件、事業譲渡10件超を含む多様な案件に携わってきた。幅広い事業のM&Aを可能にするのは、先述の栗山氏の行動力に加え、卓越した情報収集力だ。
「好奇心が強く、飽きやすい性分なので、その時に興味を持ったことに全力を注ぐようにしています。気になった領域はとことん調べる。本を読んだり、人に話を聞いたり、あらゆる手段で情報を集めています。そんな中、M&Aでは自分が理解でき、心から『やりたい』と思えるビジネスを選んできました。うまくいかないこともありましたが、それも経験の一つだと捉え、ビジネスの審美眼へと生かしています」
事業規模が小さいからといってM&Aが容易かと問われれば、話はそう簡単ではない。栗山氏によると、事業規模が小さくなるほど交渉や事務手続きの難度が高くなるそうだ。地域ならではのローカルルールや企業風土、文化など、小規模事業には数字だけでは語れない「目に見えない要素」が多く、一つとして同じケースは存在しない。
そんなスモールM&A市場において同社が信頼を得ている背景には、顧客にとって不都合にならないよう「専任契約」を結ばない取引形態を採ったり、事業間の契約で終わらず、M&Aを行った後、統合効果を最大化するための統合プログラム(PMI)の設計まで担ったりするなど、現場主義に基づいた最も現実的な道筋を共に描いてきたことにある。
さらに、取り引きに際しては売り手・買い手の双方に事業の「不都合な真実」を隠さず、誠実に向き合うことを信条としてきた。
「良し悪しを問わずさまざまな事業の売買を手掛ければ、当然稼ぎは良くなるでしょう。しかし、そんな仲介のやり方では私の中に〝後悔〟が生まれるんです。成長性や収益性といった、客観的な指標や短期的な利益だけに固執するのではなく、潜在的な課題をオープンにした上で最適な『人』を見極め、双方を結び付ける。売り手よし、買い手よし、働く人よしの関係をどう築くか。そこを考えながら、日々事業と人に向き合っています」
M&Aと聞くと、資本力のある大企業だけに限った話だと考える経営者は少なくない。しかし、栗山氏はそんな中小企業経営者に対し、「M&Aの可能性は決してゼロではない」と一貫して訴える。実際に、同氏は規模の小ささをハンデと捉えるのではなく、現場の強みを活かしたマッチングと伴走支援により、さまざまなスモールM&Aを成功に導いてきた。たとえ数百万円の小さな事業で、一般的なM&Aでは資金が残らない譲渡ケースであっても、顧客が満足する適正な譲渡方法を提案してきた。これらの実績を生かし、今後は売り手と買い手をつなげるだけでなく、「M&Aアドバイザー」として価値提供していくことも視野に入れている。
「事業譲渡や売買は難しい経営判断が求められます。プロが関わったとしても、失敗に終わるM&Aも少なくありません。そのため、経験と知識が豊富で、的確な助言を提供できる専門家に頼ることが不可欠です。信頼できるビジネスパートナーとともに、会社や事業の新しい可能性に挑んでいく。そんな道筋をご一緒できるとうれしいですね」
数多くの実績と、そこで磨かれた知恵に基づくM&Aは、先行き不透明な時代に挑む中小企業経営者にとっての道標となるに違いない。
| 設立 | 2005年12月 |
|---|---|
| 資本金 | 3,000万円 |
| 売上高 | 7億円 |
| 本社 | 大阪市中央区 |
| 従業員数 | 10人 |
| 事業内容 | 不動産売買・仲介・再生・投資・開発事業、リノベーション・壁紙再生・風呂再生事業、地盤調査・保障事業、自動車輸出・販売・修理事業、レンタカー事業、飲食事業 https://grow-ing.info/ |