1990年頃に約500社あった大阪のめっき加工会社は、170社を切るまでに減少している。向かい風の中、寺内亮一社長は2012年、伯父である先代から事業承継し、社長に就任。製造業の基幹であるめっき加工技術を残すため、技術革新と人材育成に挑戦している。(雑誌『経済界』2026年3月号より)

寺内亮一 日本電鍍工業のプロフィール

寺内亮一 日本電鍍工業
日本電鍍工業 社長  寺内亮一
てらうち・りょういち

 寺内亮一社長は、松下電工の元研究員で、2005年に日本電鍍工業に入社、12年に事業承継した。「製品の価値を上げることがめっきの目的。現状維持ではなく常にワンランクアップしていく」という経営理念を掲げ、同社を成長へ導いている。例えば、防錆めっきが主軸で、一部化学研磨も行っていたことから、新機能を付与する機能性めっきを広く開発。ロボットや半導体装置に使用する設備部品分野でシェアを伸ばしている。

 同社の強みは、チタン、アルミ、ステンレスなど、めっき処理が困難な素材への加工技術を持つことだ。特にアルミへのめっき加工に精通しており、通電性の付与や、局所箇所の硬度を高める技術で、ワンランク上のものづくりを支援している。

 加えて環境にも配慮。社長就任後、古くからめっき加工に使用される、毒性のあるシアンを使用しない工場を実現した。さらに社長自身、大学博士課程で「ノーシアンめっきの優位性」を証明する研究に取り組む。

 人材戦略にも独自性がある。平均年齢を50歳から26歳まで若返らせ、職人依存から脱却。「誰でも働ける仕組み」を構築し、ハノイ工科大学から新卒採用も行う。外国人従業員が多くを占めるが、これは単なる労働力確保ではない。「将来はベトナムに工場を作り、現地の内需に応える表面処理業を立ち上げたい。日本で育った人材が母国の産業発展に貢献してくれれば」と期待を込める。また、同社は、人材不足や後継者不在に悩む同業他社から、工程の一部委託というかたちで運営支援を行っている。将来的には事業承継も一つの選択肢と視野に入れているが、「めっき加工企業が減少すると、設計図面からめっきという選択肢が消える可能性もある。それは日本の製造業にとって致命的だ」との想いからだ。

 売上高はコロナ以前の1・9億円から2・5億円に成長。外部工場も活用し、さらなる拡大を目指す。「上場を目指す考えはない。設備産業は強いオーナーシップと長期的な投資判断が必要。日本の基幹技術を守ることが使命」と断言する。他方、業界全体のイメージ刷新にも着手。洗練されたホームページなどで、若い世代に魅力を伝え、職業としてのブランド価値向上に挑んでいる。

設立2003年5月(創業1967年)
資本金1,000万円
売上高2億5,000万円
本社大阪市生野区
従業員数18人
事業内容金属表面処理加工。機能性めっき、防錆めっき、装飾めっき、難めっき素材への特殊表面処理、めっきのやり直し、金属のトラブル解決他
https://nihondento.co.jp/