半導体産業の集積を起点に、GXの推進や、強みである食・観光のさらなる高付加価値化など、重要な局面を迎える北海道経済。道全体の産業基盤を強化し、その成果を全ての地域に波及させ、持続的な発展につなげることが重要だ。北海道経済連合会の藤井裕会長にこれまでの取り組みと今後の展望を伺った。(雑誌『経済界』2026年4月号より)

藤井 裕 北海道経済連合会のプロフィール

北海道経済連合会 藤井裕 会長 徽章消
北海道経済連合会 会長 藤井 裕
ふじい・ゆたか──1956年北海道生まれ。81年宇都宮大学工学部電気工学科卒業後、北海道電力に入社し、2019年代表取締役社長執行役員、23年6月代表取締役会長。同年6月に北海道経済連合会会長に就任。

半導体産業の集積と「北海道バレービジョン」の実現

 北海道経済の持続的な発展には、北海道の産業競争力を強化し、足腰の強い産業基盤を作り上げていくことが重要となります。具体的には、北海道の強みである食、観光などの産業と新たな産業を組み合わせ、産業構造の厚みを増していく取り組みが必要です。

 こうした動きの1つがラピダス社が建設を進める次世代半導体工場と捉えています。ラピダス社では、昨年7月に試作ウエハの製造に成功し、2027年度の量産開始を目指すなど、半導体製造を本格軌道に乗せていくための正念場を迎えています。私どもも23年6月に設立した北海道新産業創造機構(ANIC)などを通じ、さまざまな観点から支援に取り組んでいるところです。

 同時に半導体産業の形成・集積により、新たに生み出される経済効果を北海道全域に波及させていくことも欠かせません。

 昨年5月に発足した北海道バレービジョン協議会の活動は、最先端半導体の開発・製造や人材育成の拠点化などを通じ、北海道の産業基盤をもう一段強くし、北海道全体が発展していくための取り組みと考えています。

 同協議会では、会員の皆さまや関係機関の方々などとともに、5つの部会を立ち上げ、まさに北海道バレーの実現に向けたビジョンを描くべく、精力的に検討を進めています。当会も事務局として参画しており、引き続き汗をかいてまいります。

北海道の経済成長と脱炭素化に寄与するGXの推進

 北海道は、全国一の太陽光や風力の導入ポテンシャルを有する再生可能エネルギー資源に恵まれたGX(グリーントランスフォーメーション)の適地であり、脱炭素電源である泊原子力発電所と合わせて、日本の脱炭素化やGXの実現に広く貢献できる地域と考えています。

 24年6月には、北海道、札幌市が「GX金融・資産運用特区」の指定を受け、GX産業・金融機能の集積に向けた取り組みを進めるとともに、昨年7月には、道内2区域が再エネ海域利用法に基づく促進区域に指定されるなど、北海道のGXを後押しする動きが進展しています。

 当会においても「GXの推進」を重点目標に掲げ、北海道の経済成長と脱炭素化の同時達成を目指しており、洋上風力については、産業人材の育成や道内企業のサプライチェーン参入などの支援に積極的に取り組んでいます。

 経済社会の高度化に必要なDX・AIの実装が進む中、北海道でのGX投資の拡大やGX産業の立地・集積などの重要性が増しています。幅広い分野での道内企業の参画や新たな産業の創出などを含め、北海道がGXの先進地となるよう、産学官が連携した取り組みを進めていく考えです。

北海道の強みを生かした食・観光の付加価値向上

 北海道は、カロリーベース、生産額ベースともに200%を超える極めて高い食料自給率となっており、日本最大の食料供給地域として、食料安全保障に大きく寄与していますが、他の地域と同様、農業従事者の減少や高齢化、労働力不足などの課題に直面しています。

 今後も北海道が農業生産を維持し、食料を安定的に供給していくためには、農作業の省力化・効率化に寄与する「スマート農業の導入促進」やスマート農業に適した「農地の大区画化」など、農業農村整備事業の推進を通じた生産性の高い農業の実現が不可欠です。

 また、道産農林水産品や食品の付加価値を一層高めていくには、域内生産・加工や移輸出の拡大、地域ブランドの創出に向けた取り組みなども重要となります。

 国の総合経済対策においても、農林水産業の構造転換や輸出拡大など、農業生産や食料安全保障に関する施策が位置付けられており、北海道が果たすべき役割は、引き続き大きいものと受け止めています。

 また、北海道には、豊かな食だけでなく、広大な自然や多様な文化など豊富な観光資源が数多く存在しています。旅行先としての選択肢が多様化する中、北海道が真に選ばれる地域となるためには、単に来訪者数を追うのではなく、質の高い体験や周遊型観光の提供など、北海道観光の高付加価値化を図り、地域全体の持続的発展につなげていく必要があります。

 北海道の雄大な自然や生態系などを生かしたアドベンチャートラベルの推進や北海道らしいIRの実現など、新たな価値の提供や需要創出に寄与する取り組みとともに、道内に点在する観光資源を周遊する北海道MaaSの実現など、北海道観光の基盤整備にも引き続き取り組んでいく考えです。

積み重ねてきた取り組みを現実の成果へ

 23年6月、道経連会長に就任した時、「次世代半導体産業の集積に向けた支援」「ゼロカーボン北海道の推進」「人材の育成と確保」を重点取り組みに掲げました。それ以来、当会および関係者が一丸となった努力を積み重ねてきています。

 26年は、これまでの取り組みをさらに進展させることで、具体的な成果へとつなげていく年にしたいと考えています。

 また、当会が21年6月に公表した中長期計画「2050北海道ビジョン」では、北海道が「課題解決先進地域」として飛躍する将来像を描いています。

 この実現に向け、昨今の社会・経済情勢の急激な変化や地域課題の多様化・複雑化などを踏まえ、重点的に取り組むべき事項の洗い直しなどに着手しており、事業活動の充実・強化を図っていく考えです。

 将来を変革するさまざまな動きが生じている中、北海道の真価が試される時期を迎えています。関係する全ての皆さまと新たな価値を共創しながら、北海道全域の持続的な発展に向け、全力で挑戦を続けてまいります。