北海道に訪れる産業転換の好機を前に、北洋銀行は自らの変革に踏み出した。ガバナンス改革や新人事制度「ポラリス」を軸に、意思決定の迅速化と挑戦する企業風土の醸成を進める津山博恒頭取。地域の未来を見据え、金融の枠を超えた価値創出に挑む。その覚悟と長期ビジョンに迫る。(雑誌『経済界』2026年4月号より)

津山博恒 北洋銀行のプロフィール

北洋銀行 津山博恒 頭取
北洋銀行 頭取兼CEO兼CHRO 津山博恒
つやま・ひろのぶ──1968年北海道生まれ。91年横浜市立大学卒業後、北海道拓殖銀行入行。98年北洋銀行に入行し、経営企画部長、本店営業部副本店長、常務執行役員帯広中央支店長兼帯広西支店長兼帯広南支店長、常務取締役等を経て、2024年4月より現職。

スピードで挑む改革 挑戦する風土づくり

── 頭取に就任2年目になりましたが、どのような想いで改革に取り組んできましたか。

津山 北海道に訪れている大きなチャンスに、スピード感をもって挑戦できる土台作りに取り組む必要があると考え、ガバナンス体制を見直しました。経営の監督の強化と意思決定のスピード向上を目的に、2024年6月に監査等委員会設置会社に移行し、25年6月からは委任型執行役員制度を導入しています。

 北海道がこれからチャンスを生かして発展していく中で、当行グループがともに成長し、企業価値を高めていく。それを実現するためには、これまで以上の行動力や実行力、スピードが求められており、私たちも変革していく必要があります。そういう想いで、変えなければならないものは抜本的に変えてきました。

 従来から北海道を支えてきた産業、とりわけ食や観光に加え、次世代半導体やGX、宇宙産業などの新たな産業が北海道に芽吹いています。取り巻く環境が大きく変わる中、頭取就任以来一貫して、企業風土を変えるべきだと言い続けてきました。

 企業風土を急激に変えることは簡単ではありませんが、正しいと思ったことは言い続けること、やり続けることで、全体が動き始めると思っています。職員全員に対してメッセージを出し続け、意見をぶつけながら、正しい方を選択していくというやり方が浸透していくと、改革は自ずと進んでいくと信念をもって進めています。

 25年2月にはビジネスアイデアコンテストを開催しました。行員自ら考案した新事業のアイデアを発掘・創出することを目的に昨年度初めて開催し、200件超ものアイデアが集まりました。今年も開催しますが現在100件ものアイデアが集まっています。この中から新たに事業化につなげることができるアイデアが出ることに期待しています。

── 25年7月からは実力本位の新人事制度(愛称:ポラリス)もスタートしています。役職員に対し、どのような期待をしていますか。

津山 職員自らが「挑戦したい、変えたい」と行動し、チャレンジできる制度へと大きく変更しました。

 この新人事制度の大きな狙いは、経営理念やビジョンを実現するために、「職員一人一人のポテンシャルを最大限発揮できる環境を整えること」と「失敗を恐れず挑戦する企業風土を醸成すること」です。そこで重要になるのが「実力本位」「処遇の納得性向上」「自律性」であり、そのベースとして「評価制度の改善」を掲げ、職員が今よりさらにやる気になってもらう制度設計を目指しました。

 当行では昨年12月に、約19年ぶりの新店舗を開設しましたが、新店舗の所長は新人事制度「ポラリス」で導入された「公募チャレンジ制度」により、指導職層からキャリア、性別、年齢を不問で公募を実施し、10数名の中から30代の女性新所長を登用しました。公募制度による営業店所長の登用はこれが初めてです。

 ポラリス(北極星)は、どの位置から見ても同じ方角を示します。この特性を新人事制度に見立て、どの方向から見ても常に進むべき場所を示すことをイメージし、名称を決定しました。行員には「ポラリス」が北極星のように職員のキャリアの指針となり、自律的、自発的に物事を考え、自らキャリアを切り開いてほしいと思っています。

北海道の未来像を見据えた挑む長期ビジョン

── 25年8月には35年に向けた長期ビジョンを公表されましたが、どのような背景・想いで策定されたかを教えてください。

津山 当行グループが営業基盤とする北海道は、人口減少が進む一方で、強みとされる食や農業、観光産業の発展に加え、次世代半導体プロジェクトやグリーントランスフォーメーションの具体的進展、宇宙産業の投資増加など、産業構造の変革への節目にあります。また、当行グループを取り巻く環境も、デジタル化や脱炭素化など、刻一刻と変化しており、対応すべき課題は複雑化かつ高度化しています。

 今後の金融機関は、従来の狭義の金融サービスを超え、「地域の課題を丸ごと解決する力」が求められる時代になっています。25年8月には今後10年で目指す新しい長期ビジョンを公表しました。新たな長期ビジョンは、『北海道の魅力度・幸福度をともに日本一へ』とし、次の5点の想いを込めています。

 1点目は、『北海道が日本をリードするような地域にしたい』ということです。特に食やエネルギーは重要であり、次世代半導体やGXも非常に大きな可能性を秘めています。

 2点目は、『当行が全力で、先陣を切って実現していくことが必要』ということです。北海道の最大の問題は人口減少、特に生産年齢人口の減少です。私たちが先陣を切って取り組む覚悟を持ち、人材確保やお客さまのDX支援など、幅広く対応する必要があると考えています。

 3点目は、『ビジョンを実現するために、当行グループが全力で向かっていくというイメージを、職員と共有する』ということです。ビジョンそのものは少なくともグループ職員全員が言えて、共感できるものにしなければ意味がありません。

 4点目は、『決めたビジョンは環境が大幅に変化しなければ変えずにやり抜く』ということです。ビジョンはいわば、どこの山を登るかを決めるものであり、簡単に変えるべきものではないと考えています。 

 5点目は、26年4月からスタートする新中期経営計画については、『ビジョンからバックキャストして、次の3年間でやるべきことの戦略・計画とする』ということです。当たり前の話ですが、登るべき山を決めたら、3年でどこまで、どのように登るかを決めるということになります。

 当行グループは、単なる資金仲介機能を超えて、北海道の成長エンジンとして、道民の皆さまの豊かな未来の実現に貢献したいと考えています。