Bリーグのアルバルク東京は、新ホームアリーナ「TOYOTA ARENA TOKYO」に練習場やトレーニングジム、オフィスなどチームに関わるすべての機能を集約。林邦彦社長率いるクラブは世界レベルのバスケットボールクラブを目指してアリーナ運営の事業も担い、新たなスタートを切った。(雑誌『経済界』2026年4月号より)
林 邦彦 トヨタアルバルク東京のプロフィール
はやし・くにひこ 1964年10月30日生まれ。88年三井物産入社。2010年ベトナム三井物産有限会社理事副社長兼コンシューマー事業室GM、12年三井物産ファシリティーズ(現三井物産フォーサイト)取締役就任、16年よりトヨタアルバルク東京社長に就任。
独自の「オーバル型」を採用し複数のビジョンを設置
── 今シーズン、オープンしたホームアリーナ「TOYOTA ARENA TOKYO」について、改めて建設した背景を教えてください。
林 2016年のBリーグ開幕当初、われわれは代々木第二体育館(国立代々木競技場 第二体育館)をホームアリーナとしていましたが、東京2020オリンピック開催に伴う改修工事の影響で、2シーズン目からはアリーナ立川立飛をメインアリーナとして活動してきました。その後、複数の会場でホームゲームを行った中で、改めてホームアリーナが重要だと痛感しました。特定の場所で継続的に試合を行うことがクラブの発展において大事だと。
そうした中、Bリーグのライセンス上の規定などもあり親会社のトヨタ、グループ会社のトヨタ不動産とともに、江東区青海にアリーナを建設することになりました。この施設は音楽のイベントや他のスポーツでも使用します。ただ、アルバルク東京として一番大切にしているのは、ここは「アルバルク東京のホームアリーナ」という点です。
── そこを踏まえ、他のアリーナと比較してレイアウトなどで特徴的な違いなどもあるのでしょうか。
林 バスケットボールの試合を行う上で何が必要か、ファンやお客さまにどうすれば楽しんでいただけるか、世界基準のアリーナにするには、といった視点から考え抜いて、独自の「オーバル型」が採用されています。多くのアリーナが、コンサートの舞台設営を考慮に入れた「U字型」であるのに対し、あえて楕円形にこだわったのはバスケを中心に考えたからです。また、NBAでは必須の大型センターハングビジョンに加え、2本のリボンビジョンを設置し、他のアリーナとは異なる臨場感も演出します。
── スタンド席は傾斜がゆるく、室内ながら開放感もあります。
林 座席はコート面からサイドラインまでの距離を考慮し、お客さまが最も見やすい角度で、目の前の人が邪魔にならずにコート全体をしっかり見られるように配置しています。この「目の前の人」は「一般的な日本人」を基準としています。
傾斜については、例えば、限られた敷地に1万席を作らなければいけない場合、傾斜をつけないと収まりません。しかし、このアリーナは観戦環境を優先し、傾斜をおさえ最も見やすい設計を追求しました。
東京の観光名所の1つにしていきたい
── アルバルク東京は試合の集客、運営だけでなく、施設自体の経営、運営も担っているそうですね。
林 アリーナの稼動状況は非常に好調だと感じています。アリーナの稼働率は法定点検の期間を除くとほぼ100%と言えます。人気のアリーナはそれぐらい稼働するそうですが、ただ、イベント間の転換で夜通しの作業が続いていて、これが健全かどうかは検証が必要だと思っています。もちろん、今はオープンしたばかりなので、〝お祭り〟が終わった後に稼働率をキープしていくことも考えないといけません。
── どのようなイベントで活用されることが多いのでしょうか。
林 音楽関連で5割、スポーツの試合で2割から3割、その他に企業のイベントなどが入ってきています。スポーツではバレーボールやハンドボールの試合を開催していまして、また来シーズンからは同じBリーグのサンロッカーズ渋谷さんにもホームとして使用していただきます。
── アルバルク東京の集客について、どのようにマーケティングを推進しているのでしょうか。
林 開幕戦は完売し、その後も多くの方にお越しいただいていますが、まだまだチャレンジが続きます。昨シーズンは代々木第一体育館をホームアリーナとして平均集客約6700人でしたが、その方々がここにも来てくれるかというと、そう簡単ではありません。
この臨海副都心エリアは家族連れが多いかと思います。スポーツ観戦では、お子さんが小さい頃に観戦してその記憶が長く残るという傾向がありますが、世代をまたいで応援していただく上でもご家族で来場していただくことが大切だと考えています。そのため、「家族向け」をとても大事にしており、ファミリールームや子どもたちが遊べるエリア、屋外パークがある他、マスコットの「ルーク」の世界観を取り入れたカフェも併設しています。
── 今後、アリーナをどのような場所にしていきたいですか。
林 アリーナについては、東京ドームや東京タワー、スカイツリーのような観光名所の1つにしていきたいですね。そのためには、コンサートなどの多目的利用も必要ですし、国際試合も積極的に誘致していきたいと考えています。
クラブについては、Bリーグでは2018-19シーズン以降、優勝していません。今後、アジア、さらに世界へという目標を掲げる中で、まずは日本で勝たないといけません。そして、どの国の選手でもアルバルク東京からオファーが来たら「行ってみたい」と思ってもらえるクラブでありたい。そのためには、世界水準のクラブにならないといけないですし、最先端の施設、試合運営もそう、練習場やトレーニングジム、それにオフィスをここに集約したのもその一環です。
こうしてすべての機能を一元化して、海外からも評価されるクラブになる。そして「トヨタのクラブ」ではなく、「アルバルク東京」という単独のブランドで認められるようになる。それが今の目標です。
ⒸTOYOTA ARENA TOKYO